映画「MOTHER マザー」レビュー 長澤まさみが共感度ゼロな毒親になる、もはや実写版『連ちゃんパパ』な暗黒映画(1/2 ページ)

「MOTHER マザー」は長澤まさみが共感度ゼロの毒親になってしまう、もはや実写版連ちゃんパパと呼んでも差し支えない“暗黒映画”だった。

» 2020年07月04日 12時30分 公開
[ヒナタカねとらぼ]

 7月3日より、映画「MOTHER マザー」が公開されている。実際の殺人事件をベースとし、長澤まさみが主演をつとめた本作は、“毒親”※によるクズエピソードがオンパレードな内容だった。そして、令和の時代に発掘され話題を集めたマンガ『連ちゃんパパ』を強く連想させる作品でもあった。

※虐待や過干渉などにより子どもにとって「毒」となる親の俗称

「MOTHER マザー」長澤まさみが共感度ゼロな毒親になる、実写版連ちゃんパパなこの暗黒映画を見逃すな 『MOTHER マザー』 7月3日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開 (C)2020「MOTHER」製作委員会 配給:スターサンズ/KADOKAWA

7.3公開『MOTHER マザー』本予告

 どのようにこの世に遍在する最悪が噴出しているのか、たっぷりと記しておこう。


1:クズエピソードのオンパレード

 本作の主人公である毒親は、完全に母親として、いや人間としてもアウトだ。仕事をサボって(すぐに辞めて)パチンコにのめり込んでいて、すでに借金をしている両親にカネを借りに行って追い出される。映画が始まって5分程度でこれである。

 続いて、この毒親はゲームセンターで出会ったホストの男と意気投合し、幼い子どもをアパートに放置したまま何週間も2人で遊びまくって、生活保護も使い切る。もちろん、子どもを小学校に通わせることすらしていないし、電気もガスも止められてしまう。

「MOTHER マザー」長澤まさみが共感度ゼロな毒親になる、実写版連ちゃんパパなこの暗黒映画を見逃すな (C)2020「MOTHER」製作委員会

 しかも、この後に2人はある出来事をきっかけとして、子どもと共に逃亡生活を送ることになる。その過程のクズっぷりは、もはや「笑うしかねえ」と乾いた笑いが出るほどだ。ここまででも、映画の序章に過ぎないのだから恐ろしい。

 そして、本作と多くの符合があるのが、前述の『連ちゃんパパ』である。同作では平凡な高校教師だった男が、失踪した妻を探す道中でパチンコに手を出し、その後に様々な悪事に手を染める。かわいい絵柄とのギャップのある悪魔のような所業の数々を見れば、SNSで「クズの見本市」「ゴミが人のようだ」「マンガでわかる真の邪悪」などの凄まじい形容がされたことも当然だとわかるだろう。

 この映画「MOTHER マザー」と、マンガ『連ちゃんパパ』との共通点を箇条書きであげると以下になる。


  • 基本的にクズエピソードのみで構成
  • 共感度ゼロの毒親×2
  • その毒親がパチンコ依存症
  • 子どもと一緒に旅に出る
  • 良識のある人物もいる(相対的に毒親のクズぶりが際立つ)
  • 物語は基本的に悪い方向にしか向かわない
  • 「ひょっとすると良いこともするのでは」という希望は、だいたい次のシーンでぶち壊され絶望へと変わる
  • 毒親に振り回される子どもがひたすらにかわいそう
  • “妹が生まれる”事実も最悪な気分にさせてくれる

 両者のさらなる共通点は、(こうした題材の作品に使う表現としては適切ではないかもしれないが)作品としてしっかり“面白い”ということ。地獄の底を覗き込むような感覚、最悪だと思ってもさらなる最悪が待ち受けている様は、そのエスカレートぶりも含めてエンターテインメントとして楽しめてしまうのだ。


2:長澤まさみでなければ成立しないキャラクター

 本作で主演を務めるのが長澤まさみであるということも重要だ。長澤まさみの優雅・かわいい・カッコいい・美しいといったパブリックイメージを完全相殺するほどに、前述した毒親のクズエピソードはキッツイのだから。

 逆に言えば、長澤まさみでなかったら、本作は作品として成立しなかったのではないか。彼女が本来持っているキュートさ、親しみやすさは、「ひょっとすると良い母親にもなれるのでは」という“希望”をかすかに感じさせる。それは観客を良い意味で翻弄させてくれるし、ある程度はクズエピソードの不快さも和らげてくれる上、何よりも彼女を母親として慕ってしまう息子の気持ちに共感させる効果すらある。


「MOTHER マザー」長澤まさみが共感度ゼロな毒親になる、実写版連ちゃんパパなこの暗黒映画を見逃すな (C)2020「MOTHER」製作委員会

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/28/news195.jpg 岡田紗佳、一連の騒動を生中継で謝罪 頭を深く下げ「申し訳ございませんでした」
  2. /nl/articles/2501/28/news155.jpg がん闘病の森永卓郎、容態急変後にモルヒネ投与で“結構厳しい状況” スタジオ出られず弱々しい声で「そう長く持たないかもしれない」「本格的に転移が始まったよう」
  3. /nl/articles/2501/29/news045.jpg 新潟のお葬式で香典返しにもらった“謎の白い物体” パッケージにも情報なし「これなんだかわかりますか?」
  4. /nl/articles/2501/26/news053.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  5. /nl/articles/2501/29/news086.jpg 鮮魚店で売れ残ったタコを水槽に入れたら、数週間後まさかの展開が…… 胸を打つ光景に「目が腫れるくらい泣いてます」
  6. /nl/articles/2501/28/news034.jpg 大人なら5秒で解きたい!「9+0÷2−3」の答えは?【算数クイズ】
  7. /nl/articles/2501/29/news058.jpg 「うちの祖父(81)わけてほしいわこのセンス……」 衝撃的な私服コーデに驚きの声「本物のイケジイ」「目標にします!!」
  8. /nl/articles/2501/29/news023.jpg 買ったばかりの家の風呂場に”ありえない欠陥” 信じられない状況に「そんなことある?」「取り付けた業者……」
  9. /nl/articles/2501/27/news073.jpg 「昔はモテた」と自慢げな父→娘は“絶対ウソやん”と思っていたけど…… 当時の姿に「ハハハ冗談だろ?」【海外】
  10. /nl/articles/2501/29/news122.jpg 正方形のスカーフ1枚→切ってゴムを縫い付けるだけで…… 魅力的な完成品に「デザインがきれい」「簡単に作れました」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」