意味がわかると怖い話:「オカダくんへの手紙」(2/2 ページ)
「オカダくんへの手紙」解説
なぜ「私」は、「オカダくん」から聞けるはずのない、彼の失踪時の状況を詳細に語ることができるのでしょうか? 簡単な話で、「私」が彼を拉致した側の人間だからです。
不気味な手紙にも「私」は関わっているのでしょう。作中で「私」自身が言っているように、手紙とその周辺には「オカダくん」へのヒントらしきものがいくつも仕込まれていたようです。
25日という日付、赤い折り紙、そして「別れた彼女じゃないの?」「死んだ人に恨まれる覚えでもあるの?」という質問。それらから導かれるべき誰かのことを、彼はとうとう思い出せなかった。そのことが「私」たちに、彼を無理やりにでも「あの子」の元に連れていくことを決意させたのでしょう。それがどこかは、このお話には描かれていませんが。
白樺香澄
ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。クラブのことを恋人から「殺人集団」と呼ばれているが特に否定はしていない。怖がりだけど怖い話は好き。Twitter:@kasumishirakaba
「友達の話」がもつ効果
あらゆる怪談・都市伝説が「友達の話」「友達の友達の話」という体裁をとる理由の一つは、「体験者を殺せるから」です。
いわゆる「実話怪談」、体験談形式の「本当にあった怖い話」には、実在の人物が実際に体験した出来事=自分の身にも降りかかるかもしれない出来事だという「リアリティの担保」が容易だというメリットの半面、「その体験を語ってるってことは、少なくともこの人はこの話では死なないんだな」と分かってしまうデメリットがあります。
恐怖とは「安全圏が脅かされることへの嫌悪」であるがゆえに、「何が起こるか分からない」という未知こそが恐怖をそそり、かつ「安全圏への脅威」の最たるものは「死ぬかもしれないこと」ですから、「死なないと知られてしまう」ことが、いかにホラーの怖さを半減させるかは言うまでもありません。
その意味で今回のような、「語り手が犯人」パターンの意味怖は、「体験者を殺せる」話型に、「しっかりとその死の状況を描ける」意味づけを与えた、洗練された「実話怪談」の形と言えるかもしれませんね。
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