「高速道路のETC専用化」 つまりどういうこと?(1/3 ページ)
現金では通れなくなるの……? ETC付いていない人、クレカ持っていない人はどうするの──?
2020年7月2日に行われた国土交通省の第38回国土幹線道路部会において「高速道路料金所のETC専用化に向けた検討」が行われました。
報道各社が一斉に「国が高速道路の完全ETC化を検討」と報道したことから、「ETC専用」ってどういうこと? 「現金レーンはなくなってしまうの?」「だとしたら、ETC付いていないクルマの私、困る」……。ネットでも大きく話題になり、一部に不安の声も上がりました。
今回はその背景と課題、ポイントをサクッと解説します。
「ETC専用化」議論の背景と理由
国交省「第38回国土幹線道路部会」で行われた議事「新型コロナウイルス感染症対策に対応した高速道路施策の検討について」によると、ETC専用化の検討理由として「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策」を挙げています。
同資料によると、日本の高速道路会社、都市高速公社で2020年6月27日までに35人の感染者が出ました。そのうち料金所の係員が9人、休憩施設係員が2人。感染者の約3分の1に当たる11人が、不特定多数の利用者と接触せざるを得ない業務に就いていました。
この周辺接触者対策も含めた影響により、一部の料金所では人員が不足。高速道路会社各社は、名古屋高速で6料金所の閉鎖、全国でも11料金所をETC専用にすることで対応しました。
この対応が感染症対策における「新たな生活様式(身体的距離の確保や電子決済の利用等を導入する)」の観点で有効と考えられたため、今回、積極的に検討していくことになりました。
もちろん、2020年7月現在は「検討が始まったばかり」。「導入手順や概成目標時期を明示したロードマップを策定の上、料金所のETC専用化を進める」段階です。完全実施はまだしばらく先のことで、いきなりすぐ導入されるわけではありません。今後数年かけて「そうしていく方針を示した」と理解するとよいでしょう。
「ETCの付いていないクルマ」はどうなる?
国は「ETCはかなり普及した」「ETC非装着車の誤進入対策にコストが過度にかかっている(運用コスト、リスクの低減)」の理由で、ETC利用へ多方の施策で誘導していく考えです。
ETC専用化に向けて、「非ETC車のETC利用への誘導」「誤進入した非ETC車への対応」「ETC専用化の進め方」の3点を対応・課題として挙げ、特にETC専用化は「現在現金等により支払っている者にとっても分け隔てなくETCが安全に利用可能と言える環境の整備が必要」と述べています。
第38回国土幹線道路部会資料によると、ETCの利用率(普及率ではない)は約93%。ここにETC車載器設置の助成や、クレジットカードを持っていない人もETCを使える「ETCパーソナルカード」の保障金大幅引き下げを行う策などで、ETC利用へ誘導していくとしています。
ETCパーソナルカードとは
ETCパーソナルカードは、クレジットカードを持っていない人もETCを使えるよう、NEXCO(東日本、中日本、西日本)3社、首都高速道路、阪神高速道路、本州四国連絡高速道路の6社が共同で発行するETCカード。利用額に応じて設定される保障金(デポジット)を預けることで、審査なしで、金融機関の口座引き落とし式で利用できる。
必要なデポジット額は、平均利用月額(5000円単位で切り上げ)の4倍が相当(2020年7月現在)。月平均利用額が5000円までならば「2万円」をデポジットとして預けておく仕組み。利用実績が多い人はデポジットが増額される。
なお、2020年2月〜5月に行った料金所のETC専用運用において国交省が調査した結果によると、ETC非搭載車のETCゲート誤進入(未払い通過)率は6料金所平均で2.03%でした。
緊急時施策だったこともあり誤進入が発生するのは仕方ありませんが、後日料金徴収する方法はコストが過度にかかるのも課題と挙げています。判明者には料金を支払う方法についての案内を送付しましたが、料金を支払った未払い通過の利用者は一部に留まったとしています。
特に、軽自動車や二輪車は現在、高速道路会社側で直接車籍照会ができません。この料金徴収におけるコスト高を踏まえ、ETC非搭載車への料金設定を改定することも併せて検討しています。
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