意味がわかると怖い話:「蛇神様の贄」(2/2 ページ)

» 2020年07月28日 21時00分 公開
[白樺香澄ねとらぼ]
前のページへ 1|2       

「蛇神様の贄」解説

 山の神様は「生贄に選ばれたことを喜ぶ者」を食べたがっていました。だから幸に、「彼女以外の全ての村人を殺してみせ」、生贄に選ばれたおかげで命拾いした、良かっただろうと訊ねたのです。彼女は「良かった」と答えてしまいましたから、神様にとっては、食材の下ごしらえが整ったわけです。

白樺香澄

ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。クラブのことを恋人から「殺人集団」と呼ばれているが特に否定はしていない。怖がりだけど怖い話は好き。Twitter:@kasumishirakaba


「ベタ」の裏が「ベタ」になる

 今回みたいな話、「生贄にされた先で蛇神様と会った話」のようなタイトルの4ページ漫画だったらたぶんハッピーエンドだったんですけどね。残念です。

あらゆる文化の流れは大抵、前の世代へのカウンターカルチャーだったりしますから、「ベタ」の裏をかいたつもりが次の「ベタ」になっていく……というのはよくある話です。

 今回のテーマで言えば、「怪物への生贄に捧げられる少女」という「ベタ」(生贄にされそうになっている女性を救い出し、怪物を倒す英雄譚はギリシア神話の時代からの「あるある」です)をひっくり返した、「怪物が思ったよりいいやつで仲良くなれる」という、ハートフルな異類婚姻譚的ストーリーはここ何年か、定期的にツイッターなんかでバズッている印象です。

 これはいわゆる悪役転生ものなんかと同じく、若い世代を中心とした「何かを一面的に『敵』としてしまう価値観」への忌避が根底にあるのかな、なんて分析はできると思うのですが、難しいのは「誰でも分かり合えるはず」という素敵な考え方は、容易に「誰でも自分の価値観に染められるはず」という同調圧力に転じてしまうことで、「他者」をあくまで「他者」として尊重する原則を忘れてはいけないでしょう。……なんて説教臭いことを考えながら書いたわけではなく、「そろそろ、『生贄を求める化け物サイドが良いやつ』って方がベタになりつつあるはず! さらにひっくり返しちゃえ!」と、素朴にサプライズを狙っただけなのですが。

 今、ツイッターで、化け物が素直に生贄をむしゃむしゃ食べて、ヤンキーのギャルがストレートにオタクくんをキモがって、奴隷商人がガチでエルフを虐待する話を書いたら逆に新鮮だと言われてバズるかもしれませんね(誰がそんな悲しい話読みたいんだ)。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/13/news021.jpg 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  2. /nl/articles/2501/12/news018.jpg 【ハードオフ】たった“1650円”のジャンク品を持ち帰ったら…… “まさかの結末”に仰天 「中古店は宝の山」
  3. /nl/articles/2501/11/news038.jpg セリアのイス脚カバーの“じゃない”使い方に「天才ですか!?」 斬新な活用法に「めっちゃ可愛い」「探してくる!」
  4. /nl/articles/2501/10/news070.jpg 中2長女“書店で好きなだけ本を買う権”を行使した結果…… “驚愕のレシート”が1300万表示「大物になるぞ!!」「これやってみよう」
  5. /nl/articles/2501/12/news031.jpg “スカイラインの墓場”に潜入したら、目を疑う光景が…… ヤバすぎる実態に衝撃走る「ここまでやる人はいない」「凄いな」
  6. /nl/articles/2501/12/news004.jpg 「やばいやばい」 ブックオフに990円で売っていた“まさかの掘り出し物”に大興奮 「ラッキーすぎる」
  7. /nl/articles/2501/12/news022.jpg 「腹がいたいwww」 一家で体調不良→78歳おじいちゃんの“お年玉”に爆笑 「これは本当に気持ちがこもってる」
  8. /nl/articles/2501/13/news017.jpg 100均の毛糸5色を“シェブロン編み”していくと…… うっとり美しい防寒グッズ完成に「分かりやすくてスイスイ編めた」「色のセンスも素敵!」
  9. /nl/articles/2501/13/news025.jpg 道に落ちていそうな黒い石ころ→磨いたら…… まさかの“正体”が158万再生「超すごい」「砂利に似ているのに」【海外】
  10. /nl/articles/2501/13/news013.jpg 夫婦でプラダンの二重窓をDIYしたら…… 予想以上の断熱効果に驚き「す、す、すっごい! 一番分かり易くて、可愛いくて、何より簡単そう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ryuchellさん姉、母が亡くなったと報告 2024年春に病気発覚 「ママの向かった場所には世界一会いたかった人がいる」
  2. ハードオフに1650円で売られていた“まさかの掘り出し物”→修理すると…… 見事な復活劇に「相場が上がってしまうw」
  3. 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに……衝撃の経過報告に大反響 2024年に読まれた生き物記事トップ5
  4. 北海道の用水路で“巨大な外来魚”を捕獲→さばいてみると…… 中から出てきた“ヤバすぎる物体”に大興奮「ずっと釘付け」
  5. 【ハードオフ】2750円のジャンク品を持ち帰ったら…… まさかの展開に驚がく「これがジャンクの醍醐味のひとつ」
  6. 「脳がバグる」 ←昼間の夫婦の姿 夜の夫婦の姿→ あまりの激変ぶりと騙される姿に「三度見くらいした……」「まさか」
  7. 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は……斜め上のキュートな活用術に大反響 2024年に読まれた面白記事トップ5
  8. 米津玄師、紅白で“205万円衣装”着用? 星野源“1270万円ネックレス”も話題…… 「凄いお値段」「びっくりした」
  9. 【今日の難読漢字】「手水」←何と読む?
  10. サバの腹に「アニサキス発見ライト」を当てたら……? 衝撃の結果に「ゾワっとした」「泣きそう」と悲鳴 その後の展開を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」