父親の保険金を受け取った娘が墓も仏壇も買わずに音信不通に 相談者の「悔しい」が切ない「テレフォン人生相談」先週のハイライト(2/2 ページ)
500万円を取り返そうとする相談者が悪いのか?
この日の回答者は弁護士の大迫恵美子。予想外に、お説教の矛先が相談者に向く。
「アナタはこの500万円が欲しいんだなあと思いましたけど」
「そりゃあ、娘のとこに全部やるよりも、『息子のとこに全部振り込んで』って言ったんだけども……」
「それはね、息子さんに振り込めばね、息子さんがアナタに戻してくれるものがいくらかある……まあ全部なのかもしれないですけど。そういうこと期待してませんか?」
大迫といえば、相談者に有無を言わせない切れ味のいいアドバイスでお馴染みだが、この日は、その切れ味のよさが変な方向に向かってしまった。
ここまでの話を聞いても、相談者自身が500万円欲しがっているなんて思わなかったが……。
「アナタね、ちゃんと正直におっしゃってないと思うんだけど、アナタはこの500万円がね、欲しいんでしょ? ご自分が欲しいんでしょ?」
「自分……? 私どっちみちそんなもう、あと何年もいないもんだから、あってもしょうがないわけでしょ?」
「いや、あってもしょうがないんなら、そんなに泣かなくてもねぇ」
あくまで「相談者が500万円欲しがっている」という方向で話を進める大迫。
「自分が亡くなったあと、兄弟が口も聞かないとか、親戚づきあいがなくなったとかね、『あれもみーんな、亡くなったばあさんが500万のことで騒いだことだからね』なんて、そんなこと世間に言われたくないでしょう?」
受取人の名義を変更したのは相談者自身なのだから、500万円をひとり占めしようとしている娘を責めるのではなく、「心配してくれたのにごめんね。あんたの意見も聞かないで。これからは何でもあんんたに相談するわ」と謝罪するべきだと勧めた。
「お父さんが息引き取った時、娘が『ばあば、今までごめんね、これから仲良くやろうね』ってね。手を握って抱いてくれたんです。その時の姿を思い出すとね、あの時の気持ちはウソだったのか……」
「絶対やっちゃいけないのはね、ふたりいる子どもに、ちょっと都合が悪くなるとこっちに悪口。ちょっと悪口を言うとあっちに悪口……」「むしろ仲のよくない兄妹をまとめあげる。『亡くなったお袋は最後までオレたちのことを心配してたから仲良くやろうよ』って言えるような、それは親の最低限のマナーでしょ?」
「うん……悔しい……」
そのまま相談者は泣き出してしまった。柴田理恵が引き取る。
「お母さん、でもこれからですよ。『あー、あのおばあちゃん、いっぺんああいうこと言ったけど、いいお母さんだったねぇ』って言われるようになってください」
柴田もフォローしたものの、結局最後まで「娘が受け取った500万円を取り返そうとする相談者が悪い」という方向のまま終わってしまった。
確かに、保険金の受取人を娘に変更してしまった相談者はうかつだったが、病気で弱っている時に「息子夫婦にこれ以上負担をかけず、夫の面倒をみてくれるのなら……」と考えたのだとしたら、気持ちはすごく分かる。
夫が亡くなった際、娘は「今までごめんね」と言っている。以前から両親とは折り合いの悪かった娘が「保険金を渡すから」という話が出てきたことで、急に態度を変えたのではないだろうか。で、結局、保険金持ち逃げ状態になっているという……。
この状態で大迫恵美子が「アナタが500万円欲しいんでしょ!」断じるのはさすがにひどいと感じた。ただ、大迫が一番言いたかったのは後半部分だったのではないかとも思う。
法律的に、娘が受け取った保険金を取り戻すことが難しいのであれば、むやみに騒ぎ立てるよりも、親子関係を良好に保つ方向で考えた方がいいのではないか(そうすれば墓くらい建ててくれるかもしれないし)。
最後、相談者が絞り出すようにつぶやいた「悔しい」が切なかった。
ちなみに、生命保険の受取人が契約者よりも先に死んでしまった場合、契約者の死後、受取人の相続人全員に保険金が分配される。もしくは、受取人の死亡後に契約者自身が改めて受取人を指定することも可能。今回の相談者も、ヘタに受取人を変更しなければよかったのだが……。
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