「マスク着用下なら連続着席でも感染リスクの差異なし」 クラシックコンサートの感染リスクを検証した報告書が公開
「合理的な対策を組み合わせることで感染リスクを下げること、そして仮に感染が発生してもできるだけ狭い範囲に留めることはできる」
日本クラシック音楽事業協会が、クラシック音楽演奏・鑑賞にともなう飛沫感染リスクを検証した実験の報告書をサイト上に掲載しました。これによると、マスク着用下であれば従来どおり連続して席に着席しても感染リスクには大きな差はないそうです。
クラシック音楽のコンサートは少しづつ再開する動きができていますが、ソーシャルディスタンスを守る関係上聴衆の数が制限され、また演奏者間の意思疎通が難しくなることで、興行を成立させることが困難になっているといいます。今回の報告書はそうした部分を背景に、クラシック音楽の鑑賞・演奏時のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)への感染リスクを検証したもの。
この実験は、ホコリなどの微粒子を測定しないようクリーンルーム環境で飛沫などの微粒子がどの程度発生したかを計測。実験対象となった楽器は、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、アルトサクソフォン、ホルン、トランペット、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバ、バイオリン、チェロ。また、その他にも、ソプラノ・テノールの「歌唱」、聴衆の会話・咳・発声を再現した「客席」も対象とされています。
報告書によると、マスク着用下であれば「1席空けて着席」した場合も「連続する着席」の場合も、感染リスクに大きな差はないとのこと。また、いずれの楽器演奏についても、飛沫感染のリスクが上昇する可能性を示すデータが得られない、もしくはその可能性は低いと報告。歌唱については、口元での微粒子数が発声(客席実験)の10〜20倍に達しているため、体を動かしたり、移動したりしながら歌う場合は飛沫が拡散する場合があるようですが、今回の実験ではそういった部分の評価はできていないとしています。
一方、この報告書では「現実には全ての聴衆が常に適切にマスクを着用し続けられるとは限らない」「マスクのズレや性能差を考慮し、大きな声を出すことを控えるよう求めることは妥当」とも記しており、マスクの適切な着用を呼びかける重要性も説いています。
「本実験の限界」として、無風のクリーンルーム内という条件で実験を行ったことについて「空調や換気、複数の演奏者の影響などの要因が加わるため、総合的に感染対策を検討することが望ましい」とも。また、「さまざまな感染対策を行っても(中略)感染のリスクをゼロにすることはできない。しかし、合理的な対策を組み合わせることで感染リスクを下げること、そして仮に感染が発生してもできるだけ狭い範囲に留めることはできる。今回の結果がその一助になれば幸いである」と、この報告書の意義が語られています。
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