“読者への嫌がらせ”のためにわざと乱丁・落丁・無裁断 印刷会社にお断りされまくった東方projectの同人誌『この作者、天邪鬼につき』

狂ってる(ほめ言葉)。

» 2020年10月08日 20時00分 公開
[ねとらぼ]

 同人誌制作者さんに作品へのこだわり、思い入れなどを伺う読者応募企画「装丁にこだわりまくった同人誌、教えてください」。今回は「“わざと乱丁・落丁・無裁断”というハチャメチャなコンセプトにした結果、印刷会社に断られまくった」という作品のお話を伺いました。……というか、最終的によく刷ってくれるところ見つかりましたね、それ。

無裁断なので普通はカットされる部分が残っています
ミスではなく、こういうコンセプトの本です

『この作者、天の邪鬼につき』

「さまざまな『嫌がらせ』が次々と読者に襲いかかる仕組みになっております」

 主に「東方Project」というジャンルで二次創作活動をしております、同人小説系サークル「すずだんご」代表の土露団子と申します。

 コミックマーケット96(2019年夏)にて頒布した『この作者、天邪鬼につき』は、「鬼人正邪」という天邪鬼(あまのじゃく)なキャラクターが、実際に本の中で縦横無尽に暴れ回るといったストーリーになっております。したがいまして、通常の本ではあり得ない乱丁・落丁・無裁断をはじめとした、さまざまな「嫌がらせ」が次々と読者に襲いかかる仕組みになっております(読者の皆さまは刃物をご用意し、本を切り進めながら読んでいただく必要がございます)。

本の装丁と内容がリンクした作品
本文が傾いていたり……
切らないと読めないページがあったり……
あ、ここも切るのか
右→左に読み進めていったら、突然、本を読む方向が左→右に反転したり……
本文がジグソーパズルになっていて読めなかったり……
いざ紙面を切って解いてみたら、ピースが1つ足りなかったり

―― なぜそのようなコンセプトに?

 この同人誌は制作当初、「鬼人正邪という天邪鬼なキャラクターが主人公で、物語が二転三転する」という、ストーリー面での天邪鬼さだけを考えていました。

 ですが、「果たして天邪鬼がそのようなストーリーの枠だけに収まりきれるのか」「天邪鬼ならもっと天邪鬼なことを仕掛けてくるのではないだろうか」と思考を巡らせた結果、ふと「読者に嫌がらせをする本」という発想に至り、このような特殊な形(乱丁落丁無裁断本)で制作することにいたしました……というのが1つのきっかけです。

 他にも「装丁に関する自分の知識を総動員させた作品を作りたかった」「そもそも東方Projectというジャンルが、このような突拍子もない創作物に比較的寛容」といった理由もあります。

―― かなり変わった本だと思うのですが、依頼した印刷会社さんの反応は?

 至極当然ですが、本の概要を丁寧に説明すればするほど、印刷会社の担当者さんの目や声が曇っていき、説明し終えるころに「……あの、大変申し上げにくいのですが……」と丁重にお断りされるケースが続きました。正直、「あっ、面倒な客が来たな」という反応でしたね(笑)。

 最終的に、この依頼を引き受けてくださった印刷会社さんの担当さんも「こんな本を作ろうとする作者が一番天邪鬼だ」と半ばあきれたように笑っていらっしゃいました。

 ただ、あまりにも複雑怪奇な本ゆえ、こちらのミスもあって何度か本当に乱丁落丁させてしまった苦い経験もあります。印刷会社さんとしても、正しく意図する通りに乱丁落丁させるのは、とても大変だったようです。

―― 普通だったらワケが分からない状況ですからね、“正しく意図する通りに乱丁落丁”って。

 完成版が刷り上がった後も、本文中にパケ(麻薬)を模した真っ白な粉末を仕込む作業があり、具体的に言うと、業務用コンスターチ(※)をスプーンひとさじ分すくい上げ、透明なチャック袋に入れては、指定のページにセロハンテープで貼り付ける作業を1冊1冊やっていきました。

 8月初旬にこの作業をしていた(本書は2019年の夏コミに合わせて出したため)、クーラーや扇風機を回してしまうとコンスターチの粉が風で舞ってしまうので、締め切った部屋の中、サークルメンバー皆で汗だくになりながら作業をしておりました。

※コーンスターチ:トウモロコシを原料に製造されたデンプン。お菓子作りのほか、印刷分野などでも用いられる。ちなみに『この作者、天邪鬼につき』の読者からは「イベント帰りに、警察から職質を受けてヒドい目にあった」という報告もあったとか。

ここに合法的な白い粉があるじゃろ
これをこうして
こうじゃ

本企画では取材させていただける方を常時募集しています

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた