「はんこってなんで押さなきゃいけないの?」 小学生の自由研究がガチすぎて「その辺の卒論超えてる」「将来有望」(1/2 ページ)
「図書館を使った調べる学習コンクール」入賞作品。
「はんこってなんで押さなきゃいけないの?」という身近な疑問を調べてみた、ある小学4年生の自由研究がどう見ても自由研究のレベルを超えていると注目を集めています。
話題になっているのは「第23回 図書館を使った調べる学習コンクール」の文部科学大臣賞 入賞作。50ページ超に及ぶ大作で、Web上で全ページ閲覧できることから、一躍SNSで脚光を浴びました。
はんこといえば大人の利用シーンを思い浮かべそうですが、「親のはんこをもらい忘れるとプールに入れない」など、案外小学校生活においても重要な役割があったりします。その絶大な効力の背景に興味を持ったというこの小学生は、日本のはんこ文化について調べてみることに。
普通ならインターネットで少々検索して満足してしまいそうですが、この自由研究はなかなか大掛かり。まずは「はんこ」という言葉に着目し、例えば「印鑑」との違いについて「予想を立てる」→「調べる」→「結論」といった流れで調査を進めていきます。こうして導き出される情報は、大人が読んでもなるほどとうなるものばかり。
調査前は「『はんこ』をていねいにした言葉が『印鑑』だと思う」という予想でしたが、調べてみると、「はんこ(=印章)」とは物体としてのはんこそのものを指し、「印鑑」とは正式には役所に登録したはんこの印影(はんこを押した跡)のことを指すことが分かりました。
この「予想」→「調査」→「結論」の過程の積み重ねにより、研究範囲は“はんこができる道のり”“はんこの書体”“はんこはいつからあったのか?”“他の国には、はんこはあるのかな?”といった具合に、どんどん多岐にわたっていきます。
調査の手法もネットでの検索に頼りすぎず、複数の図書館での資料収集や、周囲へのアンケート調査、印章業界での最高資格「一等印刻師」が勤めるはんこ屋さんでのインタビューなど、手間暇をかけたガチ研究が続きます。
圧巻なのが、現代にはんこ文化が残っているのが「日本と台湾のみ」ということを突き止めてから。台湾やその他の国ではんこ文化が根付いた/根付かなかった理由を調べつつも、「日本と台湾は取り残されていないのかな?」と問題提起をします。
日本でのはんこ撤廃には大規模な法改正が必要であることや、「はんこ文化をなくすとこまる人たち」がいることが分かると、そこでなんと、「実際のはんこ職人の意見が聞きたい」と、前述した一等印刻師に再び取材を申し込みます。取材相手の職業存続に関わる問題のため、質問を真っすぐにぶつけるのはそれなりに勇気が必要だったと思われますが、ここでも当事者の貴重な意見を引き出しています。
はんこの文化的側面やメリットをこれでもかと調べた上で、あらためてその存在意義を問い直す柔軟な視点には驚かされます。調査の手法や、参考文献、協力者の情報もきっちりと明記しており、Twitter上では「この自由研究すごすぎない?」「その辺の卒論を超えている」「将来有望すぎる」「親の顔が見たい(いい意味で)」と、読みやすく奥深い内容に絶賛が相次ぎました。
いろいろな受賞作/次回コンクールの募集も
図書館振興財団の公式サイトでは、この他にも多数の入選作を公開中。「捕鯨は是か?非か?〜商業捕鯨を再開した今、鯨との共生を考える〜」「鳥の目の骨は何の為にあるのか? 〜ほ乳類にはない目の不思議〜」「虫ごはん〜2019なつわたしはセミをたべた〜」などなど、多彩な自由研究に触れることができます。
同財団では「第24回」コンクールの自由研究募集も控えています。募集期間は9月14日から10月5日まで(※17時30分 図書館振興財団必着)。小・中・高校生の部のほか、「大人の部」や「子どもと大人の部」といった部門もあり、幅広い年代の自由研究を受け付けます。自信ありという人は、ぜひ応募してみましょう。
【追記】図書館振興財団からの画像提供期間が終了したため、記事上の画像を削除しました(2021年3月31日)
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