クレしん映画の新たな傑作「激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」レビュー 「オトナ帝国」「戦国大合戦」と単純比較するべきではない理由(1/4 ページ)

「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」の素晴らしさをネタバレなしで語る。

» 2020年09月21日 18時40分 公開
[ヒナタカねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 現在公開中の「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」がとてつもなく面白かった。


動画が取得できませんでした
「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」予告編

 本作は「映画クレヨンしんちゃん」(以下、クレしん映画)の28作目。このシリーズにおいて、9作目「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」と10作目「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」が「オトナも泣ける感動作」としての高い評価を得ていることは、周知の事実であるだろう。

 そのことを踏まえて、訴えておきたいことがある。それは、本作を「オトナ帝国」「戦国大合戦」と単純な比較をするべきではない、それだけで評価を決めて欲しくないということだ。

 これまで優れたクレしん映画があった場合、その評価軸として「戦国大合戦」「オトナ帝国」との比較で語られがちであった。特に顕著だったのが22作目「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」の時で、やはり大人こそが感動できる内容であり、クレしん映画の久々の傑作などと高い評価を得ていたのだが、「戦国大合戦とオトナ帝国ほどじゃないが」「その2本には一歩及ばないが」などといった枕ことば付きで語られていることが多かったのだ。

 同様の「あの2本が偉大すぎる」という思いは作り手側にもあったようで、「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」の脚本を手掛けた中島かずきは、15作目「嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!」からチーフプロデューサーとして参加してきた時の頃を振り返り、「あの2本が突出し過ぎて原さん(原恵一監督)がいなくなった後“どうする?”って大変だったんですよ」とぶっちゃけていたこともあった。

 そのように、クレしん映画には「戦国大合戦」「オトナ帝国」の2本との比較を免れないという、“呪縛”にとらわれていたところがあった。しかし、今回の「激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」は、その呪縛から解放された、この映画そのものの素晴らしさをたたえるべき、新たな傑作であったのだ。

 本編のネタバレになるべく触れない範囲で、その理由を記していこう。


1:故・臼井儀人のマンガを原案としている

 「激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」は、“原点回帰”をしながらも、クレしん映画として“新しいことにも挑戦している”ことが何よりも重要だ。

 まず、本作には、「クレヨンしんちゃん」の単行本23巻に収録されている短編「ミラクル・マーカーしんのすけ」という原案がある。映画に登場する“ニセななこ”や“宮廷画家”の見た目は、この原案ほぼそのままだったりもするのだ。


「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」が「戦国大合戦」「オトナ帝国」と単純比較するべきではない傑作の理由 画像は予告編より


 クレしん映画は、基本的にはマンガとは関係なく、設定や物語がとても自由に作られてきた。事実、故・臼井儀人が映画の原作となるマンガを描いていたのは、3作目「雲黒斎の野望」までである。しかし、今回は「25年ぶりのマンガの内容の映画化」なのだ。この時点で、原点回帰の意思を感じられるだろう。

 また、監督・脚本を務めた京極尚彦は、「『クレヨンしんちゃん』なのにクレヨンをモチーフにした映画が今までなかった」とも考え、それが絵に描いたものが出てくるという物語を昔からやってみたかったという思いにも結びついたのだそうだ。

 このように、本作ではシリーズになかった新機軸を打ち出しながら、タイトルにあるクレヨンをフィーチャーするという、クレしん映画としてまっとうかつ新鮮なアプローチがされているのだ。


2:ぶりぶりざえもんの復活

 前述した短編マンガ「ミラクル・マーカーしんのすけ」には、人気キャラクターの“ぶりぶりざえもん”が登場していた。アニメで同役を務めていた塩沢兼人は2000年に亡くなり、「この声以外は考えられない」という理由で16年に渡ってセリフがなかったのだが、2016年から神谷浩史が後任を務めることになった。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2408/31/news036.jpg 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほどの変貌が379万表示「そこだけボッ!ってw」 半年後の現在について聞いた
  2. /nl/articles/2408/30/news121.jpg 「地獄絵図」「えぐすぎやろ……」 静岡・焼津市の地下歩道が冠水 “信じられない光景”にネットあぜん
  3. /nl/articles/2408/31/news073.jpg 「よくこんなものが……」 米不足でメルカリに米出品→疑問の声も 運営は“禁止出品物”に「然るべき対応」
  4. /nl/articles/2408/31/news025.jpg 次男に塩対応の柴犬、いよいよ次男の帰省最終日を迎え…… 本音が出た瞬間に「不意に泣かせるのやめて欲しい」と感動の声
  5. /nl/articles/2408/30/news017.jpg 最上位グレードのハイエースを“50万円の底値”で購入したら…… 驚きの実物に「ある意味最強」「正直、羨ましい」
  6. /nl/articles/2408/30/news188.jpg 実写「着せ恋」、キャストに物議 海夢の再現度が高すぎるタレントを推す声あがる 「逆になんであかせあかりさん以外の人……」
  7. /nl/articles/2408/29/news193.jpg 「なんで欲しいと思ったんですか?」 酔った勢いで購入 → 後日届いた“まさかの商品”に反響 「理性あったら買わないw」
  8. /nl/articles/2408/28/news142.jpg 明石家さんま、69歳バースデー迎え長男から幸せ呼ぶ“輝かしいプレゼント” 同席した元妻・大竹しのぶは「最高の笑顔でした」
  9. /nl/articles/2408/31/news084.jpg 仕事早いな! 大谷翔平の愛犬“デコピン”、大反響の始球式がさっそくTシャツ化 「こ、これは……」「欲しい!」と爆売れの予感
  10. /nl/articles/2408/30/news113.jpg 「これ600円なの?」 大谷翔平が長く愛用しているデコピンの“おやつ入れ”、始球式で注目「おそろだった」「真美子さんが選んだのかな」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  2. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  3. 「苦手な芸能人は誰?」 あのちゃん、女性芸能人を“実名で即答” 「ここ最近で一番笑った」「強すぎる」
  4. ホテルでチェックアウト、忘れ物で多いのは? ホテル従業員が教える「圧倒的に多い忘れ物」
  5. 乳がん闘病中の梅宮アンナ、抗がん剤治療で「髪の毛ほとんどなくなっています」 帽子かぶり「ああ、来たか」
  6. 「キティちゃんのお面だと思ったら……」 ひっくり返すと“まさかの正体”に11万いいね
  7. 「凄すぎる…」「ガチで滝」 “市ケ谷駅の冠水”が衝撃与える 階段に大量の水が流れる様子も…… 東京メトロに経緯を取材
  8. 「早すぎます」「一体なにが」 52歳ボディービルダー、訃報1週間前に最期の投稿で“人生初の試み” 恋人は「亡くなる数時間前まで普通にお出かけも」
  9. お盆で帰省した次男に、柴犬も猫もまさかの反応→どちらも豹変して爆笑 「涙出てきました」「おもろ可愛過ぎ(笑)」
  10. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」