クレしん映画の新たな傑作「激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」レビュー 「オトナ帝国」「戦国大合戦」と単純比較するべきではない理由(4/4 ページ)

» 2020年09月21日 18時40分 公開
[ヒナタカねとらぼ]
前のページへ 1|2|3|4       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 例えば、16作目「ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者」では初期作で監督を務めていた本郷みつるを再登板させた。17作目「オタケベ!カスカベ野生王国」ではみさえとひろしが豹変するなど「オトナ帝国」と似た要素があり、正直に言って“焼き直し”の印象も否めないこともあった。このあたりは“低迷期”ともいえるほど、作品としてのクオリティーも厳しいものがあったというのが本音だ。

 ところが、近年のクレしん映画は興行収入と作品評価の両面で、確実に盛り返している。その理由の1つが「クレしん映画でジャンル映画を本気でやってみる」という試みが成功しているからだろう。例えば、23作目「オラの引越し物語 サボテン大襲撃」では“モンスターパニック映画”を、25作目「襲来!!宇宙人シリリ」では“ロードムービー”を、26作目「爆盛!カンフーボーイズ〜拉麺大乱〜」では“カンフー映画”をモチーフにしており、そのジャンルの面白さが確かに詰め込まれていたのだ。

 また、21作目「バカうまっ!B級グルメサバイバル!!」や24作目「爆睡!ユメミーワールド大突撃」では脚本に2人がクレジットされている。脚本家同士で意見交換をし合い、物語をブラッシュアップして、面白いものを作ろうとする意図も、ここから伝わってくる。 そして、今回の「激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」でも、「そこのみにて光輝く」などの実写映画作品で知られる高田亮を呼び、京極尚彦監督と共同で脚本を執筆している。さらに、前述したジャンル映画という枠からも飛び出し、“クレしん映画らしさ”を突き詰めた内容になっている。

 平和な世界が何者かに脅かされ、それに対してしんのすけが立ち向かっていくという面白さ、しんのすけの破天荒で物怖じしない性格がもたらす痛快さ。劇中では子どもを退屈させまいと、さまざまな見せ場が用意され、描いた絵が動くというアニメでしかできない表現や、躍動感のあるアクションも盛り込まれている。そこには、まさに「ああ、クレしん映画を見ている!」という感動があったのだ。


まとめ

 クレしん映画は、あまりに完成度の高い「オトナ帝国」と「戦国大合戦」との比較で(20年近くが経過しても)語られがちだった。しかし、今回はその要素だけで評価を決めるのはあまりにももったいない、という理由を分かっていただけただろうか。

 何しろ、根底には“原点回帰”があり、ぶりぶりざえもんの復活やしんのすけが単独で主役を務めるなど、初期作にあった魅力を打ち出している。それでいて新しいことにも挑戦し、実力派の監督と脚本家にオファーして作品としてのクオリティーを高め、これまでの過去作を意識しすぎた“焼き直し”感からも脱却し、まさに「クレしん映画らしい」魅力と楽しさのある作品に仕上がっているのだから。


動画が取得できませんでした
本編特別映像

 また近藤プロデューサーは、「『クレヨンしんちゃん』は安パイに作れない作品」であるとも語っている。それは「安直に置きに行ったら最後、それが如実に現れる」「時代に合わせて新しいものを常に作っていかないと、この先も作り続けられる作品じゃなくなってしまう」との考えからだ。それでいて、「妥協せず作り続けることが、作り手としてはやりがいがある」とも語っていた。

 こうした作り手の意識こそ、「激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」が新たな傑作となった最大の理由だろう。ぜひ、クレしん映画から離れてしまったというオトナにも、本作を映画館で見てほしい。「あのころのクレしん映画」でありながら、新鮮な感動がそこにはあるはずだ。

ヒナタカ

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた