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» 2020年09月27日 21時00分 公開

意味がわかると怖い話:「親切な老人」(2/2 ページ)

[白樺香澄,ねとらぼ]
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「親切な老人」解説

 キノコに少し詳しい人であれば、「オイオイ、待てよ」と言いたくなるかもしれませんね。老人が教えてくれた「ユキヨダケ」なんてキノコは存在していません。語り手が持ち帰ったのは、白く卵のような傘(かさ)を持つ特徴から、ドクツルタケやシロタマゴテングタケの類だと思われます。似通った外見を持ち、いずれも致死性の猛毒を持つ株で、「素人は白いキノコには手を出すな」という言葉まであるそうです。彼は信じるべき相手を間違えたようです。

 老人が途中まで語っていた「スギヒラタケは近年毒性が見つかった」「ベニテングダケは毒キノコだが、味はうまいらしい」といった知識は確かなものでした。そんな人が「白いキノコには気をつけろ」という基本的なことを間違え、ありもしないキノコの名前を教えるでしょうか。彼が何者で、何のためにこんなことをしているのかは分かりませんが、語り手をだまそうとしていると考えるのが普通でしょう。「最初は本当のことを話して信頼させる」というのは、詐欺師の初歩のテクニックなのだそうです。

 さて、語り手の写真も加わることになった老人のアルバム。語り手以外の人たちは、いまごろどうなっているのでしょうか……?

 最後にキノコの雑学をば。「スーパーマリオ」シリーズに登場する「パワーアップキノコ」のモチーフのひとつは、『不思議の国のアリス』のかじると体が伸び縮みするキノコだと言われています。ルイス・キャロルは、ベニテングダケ中毒のひとつとして報告されていた幻覚症状に着想を得たのだそうで、ベニテングダケの「赤色に白い斑点を持つ傘」というビジュアルは、パワーアップキノコにもよく似ています。もしかすると、「キノコを取って大きくなったマリオがダメージを受けると小さくなる」のは、「キノコを食べて自分が大きくなった幻覚を見ていたのが、痛みで目を覚ました」のかも知れません。

白樺香澄

ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。怖がりだけど怖い話は好き。Twitter:@kasumishirakaba


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