30年前に「あのJR灰皿」を設計したレジェンドが突如降臨 「神か」「これは見たことなかった」ファン歓喜(2/3 ページ)

» 2020年10月07日 19時00分 公開
[大泉勝彦ねとらぼ]

強度とデザインを両立するようにこだわって設計「あの灰皿に思い入れがある人がいて……感動」

 永井さんに話を聞いてみると、この灰皿を設計した当時の思い出話をタップリ教えてくれました。

JR 灰皿 古めの鉄道車両内でたまに見られる「かつて灰皿が設置されていた」名残(注:永井さん設計の灰皿が設置されていた車両と同一ではありません)

── 懐かしがる人が続出しています! あらためて、この「JR東日本灰皿」はどんな経緯で設計することになったのでしょうか。

 当時、埼玉県にある建築金物会社の設計部に勤めていて、鉄道車両に使用する灰皿の製作依頼が会社に入りました。このとき設計部には上司と私しかおらず、上司がほかの仕事で手いっぱいだったため、「お前がやっておけ」と言われて設計を任されたのでした。

── 当時の設計・開発時のご苦労、こだわりポイントがありましたら教えてください……!

 JR東日本灰皿は、従来の国鉄仕様灰皿を参考に改良版が欲しいとのことで、「ふた全体が開き、灰を掃除機で吸えること」「本体が回転し、灰や吸い殻を捨てられること」の仕様が求められました。

 可動部が多くなれば強度が弱くなりますし、構造も複雑になってコストもかかってしまいます。いかに部品点数を少なく作るかを考えました。

 自分はデザイナーではなく設計者ですが、やっぱりカッコいいものが好きなので、強度とデザインを両立できるようにこだわりました。自分なりには、フレーム枠と本体横の曲面がくっつくようにデザインしたこと、ぶつかってもなるべくケガがないように考えたことがこだわりです。

 でもこの灰皿は完成して納品したら満足してしまい、タバコも吸っていなかったので、実はこれまであまり思い入れがなかったのですが……(笑)。



 永井さんは最初に就職した会社で、営業先の町工場で働いている同じ歳くらいの若者を見て「これが働くってことだよ。今の俺は何してるんだ」と思ったことがモノづくりに携わるきっかけだったそうです。

JR 灰皿 (参考)昭和時代に製造された客車内の様子。このようなボックス席では両端、窓の下あたりに灰皿が備わっていた(写真:杉山淳一)

 Twitterを本格的に活用しはじめたのは、これまで通りの活動が思うようにできなくなった2020年3月ごろから。そこで製造業の若手やエンジニアの方たちとつながりができ、「誰でもいろいろな思いがある中、みんながんばっている。そして思うようにいかないこともたくさんあって悩んでいるんだ」と気が付いたといいます。

 ネットでも「国鉄(JNR)仕様は知っているが、“JR東日本仕様”なのは見たことなかった」「色で角ばったJNR版から色付きのJR東日本へと民営化で灰皿もずいぶんと変わったのですね」と共感した鉄道ファンをはじめ、「偉大な人がおった」「すごい職人さん見つけた」「あなたが神か」などと当時を思い出したり、モノづくりの姿勢に感動する人が多く見られました。

 「自分が昔に設計したものが今でもファンの方たちで流通してるのをたまたま見かけて、衝動的に投稿してしまいました。あのころは自分も将来についていろいろ悩んでいた時期でした。仮にいま誰にも評価されていなくても、これは俺がやったんだという思いが大切だと思うんです」

 「やっぱり約30年が経過しても、いまだにあの灰皿に思い入れがある人がいて、大切に持っていらっしゃる方もいるのを知って感動しました。“スターウォーズに出てくるミレニアムファルコン号をいつか作れるモノづくりの会社にする”という当時の夢も思い出しました……。メガワークスは困ったときの街の加工屋さんです。(クルマ・バイク好きのプライベーター、DIYをする人なども、)加工や部材で困ったら気軽に問い合わせてくださいね」(永井さん)

 鉄道の灰皿もかつては「あたり前」のモノでした。形あるモノには歴史や人それぞれの思い出が宿ったりもします。……そんなあの頃も思い出させてくれたレジェンドに感謝です。

大泉勝彦



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/14/news189.jpg 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  4. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  5. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  7. /nl/articles/2411/15/news009.jpg 高2のとき、留学先のクラスで出会った2人が結婚し…… 米国人夫から日本人妻への「最高すぎる」サプライズが70万再生 「いいね100回くらい押したい」
  8. /nl/articles/2411/15/news058.jpg 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」
  9. /nl/articles/2411/14/news023.jpg “膝まで伸びた草ボーボーの庭”をプロが手入れしたら…… 現れた“まさかの光景”に「誰が想像しただろう」「草刈機の魔法使いだ」と称賛の声
  10. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた