息子が殺人犯でも被害者でも“最悪” 映画「望み」で描かれる家族の生き地獄(1/4 ページ)

逃げ場のない家族の生き地獄映画「望み」の魅力を解説する。

» 2020年10月10日 11時30分 公開
[ヒナタカねとらぼ]

 10月9日より映画「望み」が公開されている。結論から申し上げれば、「逃げ場のない家族の生き地獄映画」を見たい方には、大プッシュでおすすめできる作品であった。

息子が殺人犯でも被害者でも、最悪。映画「望み」で描かれる家族の生き地獄。 (C)2020「望み」製作委員会
「望み」本予告

 原作小説を手掛けたのは「犯人に告ぐ」や「検察側の罪人」も映画化されたベストセラー作家の雫井脩介で、脚本をアニメ映画版「時をかける少女」や「サマーウォーズ」の奥寺佐渡子が担当している。

 その盤石の布陣に見合うだけの、極めて完成度の高いサスペンスエンターテインメントになっていたのだ。さらに具体的な魅力を、以下に記していこう。

「どっちに転んでも最悪」の理由

 スタイリッシュな高級邸宅に住む家族の生活は、その日から一変した。以前から遊び仲間が増え無断外泊が多かった高校生の息子が、家を出たきり帰ってこなくなり、連絡すら途絶えてしまったのだ。そして、息子の同級生が殺害されたニュースが流れる。警察によると、息子が事件に関与している可能性が高いと言うのだが……。

 この物語が恐ろしいのは、「行方不明の息子が事件に巻き込まれた」ことそのものではない。「息子が殺人を犯した加害者なのか」「息子が殺された被害者なのか」ということがはっきりしないまま、家族が生き地獄そのものの時間を過ごすことだ。

 殺人事件の最中で行方不明となった少年は計3人で、そのうち犯人とみられる逃走中の少年は2人。分かっているのはそこまでで、息子が「殺した側なのか」「殺された側なのか」という最も重要なことが判然としない。そして、息子からの連絡が途絶えたまま時間が経過し、その2つの可能性しかあり得ない状態になっていく。

息子が殺人犯でも被害者でも、最悪。映画「望み」で描かれる家族の生き地獄。 (C)2020「望み」製作委員会

 それでも不確定な要素は多いのだが、ネットの掲示板やSNSでは勝手に息子を殺人犯だと断定する誹謗中傷が書かれ、家にはマスコミが容赦無く押し寄せる。これだけでも過酷だが、さらにつらいのは母親が「息子が殺人犯であろうが生きていてほしい」と願うのに対し、父親と中学生の娘は「息子は殺人犯ではない」と願う、というよりも「被害者で死んでいたとしてもしょうがない」とも思ってしまうことだ。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」