意味がわかると怖い話:「笑うテディベア」(1/2 ページ)

深夜の笑い声。

» 2020年10月11日 21時00分 公開
[白樺香澄ねとらぼ]

 ひとたび気づくと、なにやら違う光景が見えてくる……「意味がわかると怖い話」を紹介する連載です。

意味怖

「笑うテディベア」

 新婚のY美さんの夫には、大事にしているクマのぬいぐるみがあった。

 一見、普通のテディベアだが、センサーとスピーカーが内蔵されていて、おなかを触ると笑い声をあげる、なかなか愛嬌のあるおもちゃだった。小学生のときの誕生日プレゼントで、何度か修理してもらっているそうで今でもちゃんと動く。新居ではリビングの棚に飾っていた。

 ふたりが新婚旅行から帰って1週間ほど経ったある日、夫のT哉さんが出張で2日間、家を空けた夜のことだ。真夜中、Y美さんはけたたましい笑い声に目を覚ました。

 キャハハハハハハハハハ

 ぬいぐるみの声だ。何かの拍子にセンサーが誤作動したらしい。びっくりした……Y美さんは、その晩は特に気にも留めずに再び眠りについた。

 だが次の夜も、Y美さんはぬいぐるみの笑い声に起こされた。2晩続くと、さすがに少し気味が悪い。声を止めるために、起き出して「それ」をしてからY美さんは床についた。

 昼間になると怖い気持ちも薄れ、「出張に連れて行ってもらえなくて拗ねてるのかな」なんて思えるようになった。帰って来たT哉さんにぬいぐるみのことを話し、一度見てもらおうということになった。

 そして夜。またY美さんは笑い声に目を覚ました。彼女はハッとしてリビングに向かった。

 キャハハハハハハハハハハハハハ

「Y美が言ってた通りだね。ちゃんと直してもらわなきゃ」

 起き出してきたT哉さんが言う。Y美さんは振り返り、震える声で「それ」を夫に告げた。

「この子……電池入ってないのに笑ってる」

 前の晩、もう笑い声に起こされないようにとぬいぐるみの電池を抜いたのだ。

 パニックを起こすY美さんをT哉さんが何とかなだめた翌朝のこと、近所に住むT哉さんの姉のM子さんから電話があった。

 何事か話し込んでいるうちに、T哉さんが怒り出した。

「馬鹿なこと言ってんじゃねえよ。もう切るからな」

 M子さんは、T哉さん曰く「少々過保護なほど」弟を可愛がっていて、T哉さんもお姉ちゃん子だったので、彼女にそんなに語気を荒げるのを見たのは初めてだった。

 T哉さんは電話を切って「何でもない」と言うと、メーカーに持って行くからとぬいぐるみを抱えて出ていってしまった。

 夫の異様なさまにY美さんが唖然としていると、スマートフォンが鳴った。M子さんが、今度はY美さんの方にかけてきていた。

『家で何か変なことが起こってるでしょう?』

 電話に出た途端、そう言われてY美さんは絶句した。

『知り合いの霊能者の先生から電話があってね、「弟さんの身に危険が迫ってる」って言われたの。家の中の動物のカタチをしたモノに、悪い霊が入り込んでるって……ほら、T哉が大事にしてるぬいぐるみがあったでしょ? あれのことじゃないかしら』

 M子さんの声には、鬼気迫るものが感じられた。

『霊能者の先生が言うにはね、霊がモノの中にいるうちにお焚き上げした方が良いって。だからすぐ、ぬいぐるみをうちに送ってほしいの。さっきT哉にそう言ったら、「馬鹿なこと言うな」って怒られちゃったけど……私、ふたりが心配で』

 M子さんに、ぬいぐるみはT哉さんが持って行ってしまったと伝えると、彼女は狼狽した様子で、何とか送ってくれるよう説得してほしいと念を押された。

 言われるままに、Y美さんは何度かT哉さんに電話したが、電源を切っていてつながらなかった。「危険が迫っている」というM子さんの言葉を思い出し、事故にでも遭ってないかと気が気でなかった。

 夕方、知らない番号から電話があった。電話口の相手は、玩具会社の修理センターの者だと名乗った。T哉さんが今日、ぬいぐるみを持ち込んできた件で話があるという。

『改造されたのはご本人様ではないのですね?』

 男性は、ぬいぐるみの電源回路が一部延長され、予備電池につながっていて、メインの電池を抜いても稼働するようになっていたと説明した。

「でも一体誰が、なんでそんなことを?」

 戸惑うY美さんに電話口の男性は、

『それなんですが、実は電池と一緒に……』

 

 ――ピンポーン。呼び鈴が鳴った。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/18/news145.jpg “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
  3. /nl/articles/2412/16/news079.jpg “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/17/news060.jpg 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  5. /nl/articles/2412/17/news197.jpg 「巨大なマジンガーZがお出迎え」 “5階建て15億円”のニコラスケイジの新居 “31歳年下の日本人妻”が世界初公開
  6. /nl/articles/2412/17/news078.jpg 鮮魚コーナーで半額だった「ウチワエビ」を水槽に入れてみた結果 → 想像を超える光景に反響「見たことない!」「すげえ」
  7. /nl/articles/2412/18/news059.jpg 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開【大谷翔平激動の2024年 「妻の登場」話題呼ぶ】
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2411/25/news189.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  10. /nl/articles/2412/18/news056.jpg 日本人ならなぜか読めちゃう“四角形”に脳がバグりそう…… 「なんで読めるん?」と1000万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」