500枚描いても月収10万円 アニメ業界の縁の下の力持ち「動仕会社」が月18万円の“異例”求人票を出したワケ(3/5 ページ)
――回収した原画素材はどのように海外に送るんですか?
浅沼 海外動仕には「便送動仕」と「電送動仕」があります。まず便送の方から説明しましょうか。
電送はスキャンデータを元に作画作業を行いますが、便送は紙の微妙な修正指示を拾ってほしいからやるものなんです。ですのでこの場合まず物理的に飛行機で送る必要があります。その素材が、例えば中1日で行って戻ってくる。当然日数が増えるほど作業枚数は増えます。
でも飛行機代を毎日出すのはコスト的に無理なので、動仕会社十数社が集まって「協会便」という形でハンドキャリー便を飛ばしています。月に2回くらいの持ち回りで、皆で当番を決めて飛行機を飛ばすわけです。
例えば「10カット100枚、中1日で」と連絡を受けたとします。朝2時ごろに作画素材が持ち込まれると、朝5時には成田空港に向かいます。飛行機がだいたい9時半に出発して、時差が1時間なので向こうに12時半ごろに着きます。荷物を現地のスタッフに受け渡して、今度は帰りの荷物を受け取ります。それがだいたい300キロくらいになります。
――ひぇ……。
浅沼 そうやって大きなバッグ5〜6個をカートに乗せて、今度は日本に持ち帰るわけです(笑)。帰りの便は夕方ごろで、夜の9時とかに各制作会社さんに届きます。ちなみに、うちの教会便は動仕会社が持ち回りで運びますが、集荷と運搬だけに特化した協会便専門の会社もあります。こちらはまさに“運び屋”のような感じですね。
でも、今は新型コロナのせいでそもそもこの協会便が飛んでないんですよね……。
――そんなところにもコロナの影響が……。今は便送は全く動いてないんですか?
浅沼 国際郵便で送ることができるにはできますが、協会便は飛んでいません。国際郵便だと費用がかさむ上に、時間が読めないのも不便ですね。
めちゃくちゃ速い「電送動仕」
――ここまでは海外動仕の「便送」についてでしたが、今度はスキャンデータを送る「電送」についても教えてください。rebootの公式サイトを見ると、便送は中1日で約3000枚、電送は24時間で約2500枚作業可能との説明があります。
浅沼 それくらい可能ですね。動仕会社としては全然珍しくない量です。
――国内だと何枚くらいこなせるものですか?
浅沼 国内のスタジオだと、1週間で1000枚行けば良いほうじゃないでしょうか。
――国内スタジオだと1週間かかる作業が、動仕会社の電送だと24時間で2倍以上もできてしまう。テレビアニメの1話が5000枚前後と考えると、その半分を1社で、しかも1日でこなせるのはすごいですね。
浅沼 しかし、やっていることは国内でも海外でも一緒です。物量が出せるのはやはり作業者の人数のおかげで、それができるのが中国など海外の強みでしょうね。
――電送だとスキャン時に絵のニュアンスが抜け落ちてしまったり、品質が下がったりはしないのでしょうか?
浅沼 そこでどこまでクオリティーを上げられるかが勝負なんです。よく制作さんが崩れた作画を「動画が溶ける」と表現しますけど、そうならないための工夫を各工程でしていかないといけない。
――具体的な工夫についてもぜひ聞かせてください。
過去に見た動仕の“闇”
浅沼 であればrebootができる前の話からしたほうが良いかもしれませんね。実は僕は、電送システムが誕生した創成期を見てきているんです。もともと某大手電機メーカーのベンチャーとして誕生した「D社」という会社に務めておりまして。その会社ができたのは18年前で、僕が入社したのは13年前です。
――そんなに前から!
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