500枚描いても月収10万円 アニメ業界の縁の下の力持ち「動仕会社」が月18万円の“異例”求人票を出したワケ(4/5 ページ)
浅沼 当時は紙をハンドキャリーで持っていくしかなかった時代です。そこにようやく中国でもインターネットが普及してきて、じゃあデータで送ってみようとなりました。72時間かかるものが、48時間でデータになって上がってくる。そうやって作業を丸1日短縮させてしまうのが電送システムでした。
――でも2000年代前半のインターネットの回線って……。
浅沼 当時は1カットダウンロードするのに30分かかりましたね(笑)。
※テレビアニメの1話がおよそ300カット前後
――1カット送るのにも一苦労ですね。
浅沼 それでも便送よりは断然早かったんです。連続スキャンのソーターでどれだけズレない出力ができるか、中国まで行って地道にプリンタを調節したりしました。当時は貧しい国だったので、向こうのスタジオのプリンタがレーザーではなくドット式だったりして。それでは当然ずれるので、まずレーザーに変えてもらったり。
プリントの質もものすごいピンキリで。原画は毎回カラープリントを起こさないといけないため、皆さん安いインクを買おうとするんです。そうするとインクがつぶれて、線もつぶれる。それだと日本からの小さな修正指示なんて何も写らないですからね。
こうした部分について毎回技術者を派遣して、線がちゃんと写るように地道に伝えていきました。
――最初は特にトライアンドエラーがあったんですね。
浅沼 今みたいに簡単にチャットでやりとりできる状況ではなかったので、こちらも横着して30カットまとめて送ってみたり。すると向こうで3時間以上データが落ちてこないわけですよ。しかもデータが途中で壊れちゃったり。5カットずつ6回に分けたほうが早いとか。そういうことを把握して、周知しておくのがすごい大事でした(遠い目)。
――そのD社はまだ存在しているんですか?
浅沼 いえ。その会社は大失敗に終わりました。システムは大金をかけて構築していたはずですけど。
――うまく行かなかった要因は?
浅沼 面白いもので、動仕作業は全てがうまくマッチングしないと良い上がりにはならないんです。システムが良くても、実際描くアニメーターが海の向こう側でうまくないとダメなんです。あと、会社の上層部がアニメに興味がなかった。要は利権がめちゃくちゃ絡んで、悪い大人たちがいっぱい入ってきたんです。1人1社ずつ中国に会社を作って……みたいな闇があったんですよねぇ。
――闇……。
浅沼 アニメをやろうとしてなかったんですよ。良い映像を作ろうとしてなかった。
――しかしシステムだけはあったと。
浅沼 そのシステムで良いアニメが作りたくて、2006年に「キューブエーモーション」という動仕会社を作りました。当時は1枚1枚スキャンしてる会社が主流で、技術では5年先を行っている自負がありました。
その後2008年のリーマンショックでアニメの制作本数が一気に減り、キューブエーモーションは別会社に吸収合併。苦しい状況で競争するよりも、大きい組織で競争に挑んだほうが良いだろうという判断をしたんです。
――2008年からrebootの設立までは少し間がありますね。
浅沼 僕は2010年から4年ほどアニメから離れていて、アパレル業界とかで仕事をしていました。既に中国や韓国に横のつながりができていたので、海外商材を輸入販売したりしてたんですが、そこでかなりの失敗をしたりして(笑)。rebootを立ち上げてからはアニメ一本。アニメ業界での再起の意味も込めて、社名を「reboot」にしたんです。
rebootで目指すもの
――動仕の仕組みについて一通り聞いてきたので、ここからはrebootの取り組みについて聞かせてください。社内にクリエイターを置くようになったのはいつからですか?
浅沼 もともと社内ではなく、自宅作業の方と組むところからスタートしました。それでいうと2年くらい前ですかね。現在は外注も含めると9人いて、2人は社員として社内に入っています。
――クリエイターも午前中からお仕事を?
坂本 2人の内1人は10時〜19時。もう1人は11時〜20時で動いています。
――失礼ですが、アニメ会社なのにホワイトですね!
浅沼 そこは「社員」ですので。労働時間がずるずる遅くなる悪循環を払拭したかったのが社員化を進めている理由でもあります。決まった時間に仕事を入れて、決まった時間に開始して、決まった時間に上がろうと。
坂本 クリエイターだけでなく、われわれも決まった時間に入って決まった時間で上がっています。弊社の海外動仕は24時間動いていますが、そのスタッフもシフト制で週休2日です。
――クリエイターだと、フリーで活躍する場合と社員化した場合で給与差は生まれないのでしょうか?
浅沼 それは当然ありますが、現在の2人に関しては一概にいえないです。もともと他社のお仕事もされていて、弊社からは満額ではないものの、仕事があってもなくても拘束料として毎月約10万円をお支払いしていました。
――現在在籍している社員クリエイターも、求人にあったように月給18万円なのでしょうか?
坂本 「18万円〜」というのは新規の方向けの採用募集なので、経験がある方はまた別途相談という形です。
浅沼 業界的にはともかく、月額18万円というのは一般的な感覚でいえばやはり高くないですよね。向上心があって「もっと原画が描きたい」「作画監督がやりたい」「キャラクターデザインがやりたい」という人は、きっと固定給ではなく、フリーのアニメーターになって、どんどんステップアップしていきたくなるはず。そこでフリーに転向したり、他社に移籍するというのは全然アリだと思っています。
reboot Chinaでの育成
――先程お話が出たreboot Chinaについても聞かせてください。
浅沼 reboot Chinaは中国のスタッフも育てていこうということで、2016年に設立しました。動画が25人ほど、2原※が5人ほどで、合計30人ほどのアニメーターが所属しています。
※2原:第2原画のこと。通常レイアウトやラフ原画(=1原)を描いたアニメーターがそのまま原画の清書作業を行うが、スケジュールの都合などで本人が担当不可能なときなどに、国内外の他のアニメーターが清書作業の代行(=2原)をする場合がある。
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