【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】“すぐ死ぬ=クソ”と思わずに遊んでみてほしい「スペランカー」(2/3 ページ)
「スペランカー」(The-U.JINEさん/@The_U_JINE)
ファミコン版「スペランカー」は、今年2020年で発売35周年。近年、見直されるようになってきましたが、いまだにクソゲーというイメージが根強く残っているタイトルです。
本作の魅力は、さまざまなメディアで散々語りつくされてきたとは思いますが、まだ! まだ足りません。
このゲームの魅力
個人的には「コンパクトなゲーム性」「洞窟、地底探検というテーマ」という大きな要素が2つあります。
まず「コンパクトなゲーム性」について。
アクションゲームの魅力の1つに「キャラクターを自分の手足のように動かせたときの快感」があると思います。「スペランカー」はジャンプも低いし、ちょっとしたことでミスになるし、アクションゲームの主人公としてはいささか繊細であることは否めません。でも、その繊細さが良いんです。
移動キーを離せば滑ることなくその場で止まるし、ジャンプはボタンを押す長さに関係なく飛ぶ距離が決まっています。プレイヤーの操作がダイレクトに反映されるから、己の手足となる快感が味わいやすいのです。
しかも、致死性オブジェクトの動きは一定。アドリブを求められる要素はゴーストくらい。遊べば遊んだ分うまくなるし、プレイヤーが動揺しない限りミスることはありません。アクションゲームの基本や楽しさがコンパクトに詰まった、己と向き合わされるようなストイックさのある作品だと思います。
私は、スペランカーの操作性は、自転車みたいなものだと思っています。初めのうちは「こんなの乗れるわけないだろ!」とキレたりしていたはずですが、一度乗れるようになってしまうと、かつて乗れなかったことが不思議なほど安定するじゃないですか。
「スペランカー」も同じで、慣れると基本的にミスしなくなります。そしてダンジョンを軽快に進む爽快感や、不意に招いたピンチを曲乗りで越えるような楽しさにつながっていくんです。
次は、このゲームのもう1つの魅力「洞窟、地底探検というテーマ」について。
洞窟や地底は基本的に狭い空間なので、キャラクターに派手なアクションをさせることは難しいですし、景色も代わり映えしません。何ならゲームの舞台には、不向きな気さえします。実際、ゲームに出てくる洞窟や地底というと、魔物の巣窟、敵のアジトなど“うっくつした印象を持たせるための場所”であることが多くないですか? 抑圧の隠喩だったり、解放感を演出するための存在だったり。
「スペランカー」はそんな場所をあえて主題に置いている珍しいゲームなんです。それも暗く冷たいネガティブな空間ではなく、冒険と財宝が待つポジティブな空間として。
アーケード版、ATARI版「スペランカー」は、前述の「コンパクトなゲーム性」とは異なる操作性になっているのですが、しかし、この主題は崩れていません。それぞれ違ったアプローチで洞窟探検の魅力を描いています。
ジャンルとして定義している人がどれだけいるか分かりませんが、このゲームが“洞窟探検ゲーム”の金字塔であることは間違いないと思っています。
世間ではクソゲーと言われている理由
そりゃあもう「虚弱体質」「難しい」でしょうね! 難易度に難があるゲームが多かった当時でも賛否両論、中には「難しすぎる」の声もあったようで……。
※4Gamerの開発者インタビュー記事によると「(発売後の評価は)やはり賛否両論でしたね。『自分はここまで進められた!』という満足感が得られたという人がいる一方で,『こんなに難しいのはゲームじゃない,馬鹿にするな』という声もありましたから」(スコット津村氏)
賛否両論から、今日のクソゲー扱いを決定的にしたのはインターネットの存在でしょう。インターネット黎明期から、ゲーム系のサイトへ行くと必ず「クソゲー」「すぐ死ぬ」といじられていましたから。
かつてアイレムソフトウェアエンジニアリングのWebサイト上では『スペランカー先生』という、ちょっとしたことですぐ死ぬ教師の4コマ漫画が連載されてましたし、「スペランカー」情報の総本山的なファンサイトの名前は「クソゲー処理概論」です。
こういった、もはや歴史とも呼べる積み重ねが「クソゲー」のレッテルを根強いものにしたのだと思います。
発売から30年以上もたっていて認識を改める機会がなかなかないのかもしれませんし、「遊んだところで“自転車を乗りこなす”まで根気よく続けてもらえるのか」という問題もあると思いますし……。
最新作を遊んでくれー! すぐ死ぬのはファミコンとだいたい同じですけど、めっちゃ正当な進化をしてるから!!!
※「スペランカー」シリーズは2011年以降、「みんなでスペランカー」をはじめとした新作が登場。最新作は「みんなでワイワイ!スペランカー」(Switch/2017)
クソゲーという“いじり”がなければ、このゲームがここまで語り継がれ、愛されるタイトルになることはなかったと思います。
でも、本当にただのクソゲーだったら、30年以上たった今、新作が出るわけないんです。繰り返しになりますが、ぜひ一度遊んでみてほしいですね。絶対に初見ではクリアできません。でも絶対にそのうちクリアできるから。楽しいから……。
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