2020年最後の大作から感じる「ウィッチャー3」からの進化と“苦い伝統” 「サイバーパンク2077」プレイレビュー(2/3 ページ)
アイテム回収という“業(ごう)”
そんなサイパンですが、プレイしていると「ウィッチャー3の開発社だな」と感じる部分がところどころあります。その代表格が、マップ上に無数に散らばっている大量過ぎるアイテム。
ウィッチャー3には、主人公のゲラルト目線で常人には見えないものが見える「ウィッチャーの感覚」というシステムがあります。これには拾えるアイテムがキラキラ光って表示されるという機能もあるのですが、同作は街中の棚に置かれているものや箱に入ってるものなどドラクエの勇者すらドン引きするレベルで何でもかっぱらえるようになっていたため、民家などでウィッチャーの感覚を使用するとそこら中がエレクトリカルパレードかという勢いで輝き出しました。おかげで拾えるアイテムは全部拾わないと気がすまないタイプのプレイヤーは、延々街をさまよう羽目になるほどアイテムが回収できてしまいます。ある街で複数並んだでかい棚が全面輝き出したときは、本当にどうしようかと思ったほど。
そしてこのかっぱらい精神は、サイパンの主人公Vにも引き継がれてしまいました。今作では目に入ったインプラントを使用して周囲を「スキャン」すると拾えるアイテムがマーカーで表示されるのですが、イベント中にスキャンを使用するとものすごい数のマーカーが表示され「そうかお前もゲラルトと同じ業を背負いし者か」という気分にさせてくれます。
真面目な作戦会議中に、敵基地への潜入中に、けが人のお見舞中に、仲間たちの視線をよそにそこら中の使えそうなものを全部袋に詰め込んでいくV。頼む、誰か叱ってくれ。そして俺(プレイヤー)を止めてくれ。あ、仲間の私物と思われるレアアイテム発見……。
そしてそんな大量のアイテムの中に、まれに拾えると表示されているのにどうやっても拾えないアイテムが紛れ込んでいるのも前作と同じ。なんでや。おそらくバグだと思うのですが、なぜかサイパンでも引き継がれてしまいました。位置的な関係で拾いにくいだけのアイテムもあるので紛らわしさMAXです。
ただ、サイパンはウィッチャーに比べると街中に配置されているアイテムはやや少なめ。多少の加減は覚えてくれたようです。もうちょっと加減してほしかったかな。
この世の全ては手に入らない
また、ウィッチャー3と同じ強敵がサイパンでもプレイヤーに襲い掛かります。それが、「アイテムの重量制限」。
前述の通りウィッチャー3ではアイテムが尋常じゃない量配置されているのに加え、倒した敵がほぼ例外なく持っていた武器をドロップするようになっています。これがそこそこの値段で売れるため金策用に全て拾っていきたくなるわけですが、持ち物が増えてくると乱戦が起こるたびにアイテムの所持重量制限が来てしまいゲラルトは老人の散歩のような速度でしか動けなくなってしまうのでした。
この問題はサイパンでもほぼ再現されており、倒した敵がほぼ例外なく使っていた武器を落とし、全て拾うたびにVは老人の散歩のような速度でしか動けなくなってしまいます。やはりゲラルトと同じ業を背負いしものだったか……。
ただし、ウィッチャー3に比べて拾った武器をその場で分解して即素材にできたり、所持重量の上限を上げる方法が多数用意されていたり、重量0のアイテムが多かったり、アイテムを売れる場所が非常に多かったり、車のトランクをアイテムボックスとして使えたりとかなり気を遣ってくれているおかげて前作ほど気になりません。というか前作の重量が強敵過ぎました。
まあそこまで気を遣うのであれば、敵がしょっぱい武器まで全部落とさなくても良かったし、そもそも重量制限自体必要だったのだろうかという気もしますが。何かこだわりがあるのでしょうか。
生存権とプライバシーの侵害
ウィッチャー3ではマップの各地にならず者のたまり場や基地があるのですが、レベル上げやアイテム収集のため片っ端からゲラルトに襲撃される運命にありました。そしてこれらのたまり場を襲撃すると、高確率でならず者たちがつづった日記や手紙が拾えます。
そこにはならず者たちがどんな悪事を働いていたのかや、遠方の仲間との下衆なやりとり、時にはならず者に転落していくまでの悲惨な過程などが記されており、ただアイテムのために襲撃して「はい終わり」にとどまらせない味付けとして非常によく機能していました。「これから馬車を襲撃しに行くぞ」という手紙のある基地のそばに破壊された馬車が転がっているなど、内容と周辺の状況をうまく絡めており見せ方にもこだわりを感じたものです。
この精神はサイパンにも引き継がれており、たまり場を襲撃するとならず者たち自身や被害者の死体からチャットログや指令書のチップを回収できます。また、サイパンでは周辺にPC端末が転がっている場合があり、そちらにメッセージのやりとりが残されている場合も。
そこら中にあるたまり場を襲撃して、ならず者たちがやった(またはやろうとしていた)ことやたまり場ができるに至った経緯を見てなんとも言えない気分になる。このならず者たちの生存権とプライバシーをボコボコに侵害する一連の流れは、未来の都市に姿を変えたウィッチャー3だなと感じる部分になっています。
しかしこのサイパンのならず者たちのチャットやメッセージ、全体的に行動が短絡的というか計画性皆無な物が多く、荒廃した世界にしても頭悪いやつが多すぎないかといろいろ心配になります。2077年が舞台のサイパンは中世のウィッチャー3より時代背景がはるか未来なわけですが、CD Projekt REDの理解としては長い時間の果てに人類の知能は後退してしまったのでしょうか。
モンスターのいるダンジョンはないが地雷の埋まった家はある
ウィッチャー3最大の楽しみといえば、広いオープンワールドマップの探索にありました。目的地に向かう途中で見つけた深い洞窟、意味ありげなでかい屋敷、謎の廃墟……ついつい目的を後回しにして寄り道してしまったものです。
この探索の醍醐味(だいごみ)は、サイパンでもしっかり堪能できるようになっています。未来の世界なので謎のダンジョンみたいなのはほぼないのですが、近くの壁からのダッシュジャンプでしか侵入できないマンション、ステータスを上げないと開けられないごみ廃棄場、周辺が地雷まみれでまともに近づけない家などなど、目的そっちのけで探索したくなる場所が次々見つかり話がろくに進みません。本当に進みません。まだACT2です。いつエンディング見られるん?
リアルで近代的な都市のオープンワールドといえば「Grand Theft Auto V(GTA V)」がありますが、探索して珍しいものが手に入ることはそんなに多くありませんでした。“リアルな都市の探索”なら、サイパンはそこらじゅうを走り回るだけでも楽しめるはずです。
非合理的なシステムはスッキリと
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