3.11、病院で被災したナースの実録漫画が過酷な状況伝える 「ここでは医療者も患者も一緒に震災を戦う仲間でした」(1/2 ページ)

岩手の勤務先で被災した看護師の体験を漫画化。

» 2021年03月11日 19時45分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 東日本大震災から10年が経った2021年3月11日、『Ns'(ナース)あおい』で知られる漫画家のこしのりょう(@koshinoryou)さんが、病院で被災した看護師の実録漫画をTwitterで公開。当時の過酷な状況を生々しく伝えています。


アイキャッチ 苦しいなか支え合う姿に胸が熱くなる


 同作は作者が日本看護連盟の機関誌『N∞[アンフィニ]』で連載している『HANA♪うた』の一編。震災当時に岩手県立大槌病院で総看護師長を務めていた、鈴木栄子さんへの取材に基づいて描かれています。


1P

2P

 2011年3月11日当時、強い揺れに病院は騒然。まもなく停電が起こり、警報が鳴るやいなや津波が押し寄せてきました。


3P

 病院が2階まで浸水したため、職員は総出で患者を屋上へ避難。電気や水、情報などが途絶えるなか、医療者たちはありあわせの物資で患者の世話を続けます。


4P

 しかし、医療者もまた被災者。ある者は家族を心配して泣き、幼子を持つ者は乳の張りに苦しみながら働いていました。休憩時は互いにあたため合えるよう、患者たちのふとんの間に寝そべって――鈴木さんは当時の状況を「ここでは医療者・患者ではなく一緒に震災を戦う仲間でした」と振り返ります。


5P

6P

 夜が明けて2日目を迎えるも、救援は訪れず、わずかな物資でしのぐ生活が続きます。3日目にラジオでさらなる地震のおそれを知った職員たちは、病院ではこれ以上耐えられないと判断。全員で車いすを押し、自力で帰宅できない患者を近隣の学校へ避難させました。


7P

 それからの3日間で患者全員の受け入れ先が決まり、病院は一時解散。震災直前に亡くなった1人と、震災のなか亡くなった2人、3人の患者が遺体安置所に送られたといいます。


8P

9P

 職員は一時帰宅とされましたが、鈴木さんの住んでいたアパートは津波で崩壊。なんとか震災を免れた実家に帰りますが、そこには震災の影響で亡くなった母の姿がありました。混乱のなか、母はリウマチもあって満足に動けなかったのだろう――。そう察した鈴木さんは、仕方ないと自身に言い聞かせながらも、母のそばにいられなかった自分を悔やむのでした。


10P

 いたましい出来事から3カ月が経過し、鈴木さんは新たな病院へ赴任。勤務先の町はライフラインが回復し、震災前の活気を取り戻しつつありました。しかし、心の傷がまだ癒えぬ鈴木さんは、これからどう生きていけばいいのか分からずに思い悩みます。


11P

 そんな折に頼まれたのが、震災にまつわるレポート。思い出したくもないしどう書けばいいかも分からない、でも何かを始めなければ――そんな思いに駆られ、鈴木さんは筆をとりました。

 「ゆっくりでいい……全ての人が自分で傷を埋める何かを見つけられるといいなと思います」――。漫画は鈴木さんの願いと、被災した小学校でガレキに埋もれながらも、力強く咲いた桜の花で結ばれました。


12P

作品提供:こしのりょう(@koshinoryou)さん
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  2. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  3. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  4. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  5. 田代まさしの息子・タツヤ、母の逝去を報告 「あんなに悲しむ父親の姿を見たのは初めて」
  6. 「遺体の写真晒すのはさすがに」「不愉快」 坂間叶夢さんの葬儀に際して“不適切”写真を投稿で物議
  7. 大友康平、伊集院静さんの“お別れ会”で「“平服でお越しください”とあったので……」 服装が浮きまくる事態に
  8. 妊娠中に捨てられていた大型犬を保護 救われた尊い命に安堵と憤りの声「絶対に許せません」「親子ともに助かって良かった」
  9. 極寒トイレが100均アイテムで“裸足で歩ける暖かさ”に 今すぐマネできるDIYに「これは盲点」「簡単に掃除が出来る」
  10. 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」