3.11、病院で被災したナースの実録漫画が過酷な状況伝える 「ここでは医療者も患者も一緒に震災を戦う仲間でした」(1/2 ページ)
岩手の勤務先で被災した看護師の体験を漫画化。
東日本大震災から10年が経った2021年3月11日、『Ns'(ナース)あおい』で知られる漫画家のこしのりょう(@koshinoryou)さんが、病院で被災した看護師の実録漫画をTwitterで公開。当時の過酷な状況を生々しく伝えています。
同作は作者が日本看護連盟の機関誌『N∞[アンフィニ]』で連載している『HANA♪うた』の一編。震災当時に岩手県立大槌病院で総看護師長を務めていた、鈴木栄子さんへの取材に基づいて描かれています。
2011年3月11日当時、強い揺れに病院は騒然。まもなく停電が起こり、警報が鳴るやいなや津波が押し寄せてきました。
病院が2階まで浸水したため、職員は総出で患者を屋上へ避難。電気や水、情報などが途絶えるなか、医療者たちはありあわせの物資で患者の世話を続けます。
しかし、医療者もまた被災者。ある者は家族を心配して泣き、幼子を持つ者は乳の張りに苦しみながら働いていました。休憩時は互いにあたため合えるよう、患者たちのふとんの間に寝そべって――鈴木さんは当時の状況を「ここでは医療者・患者ではなく一緒に震災を戦う仲間でした」と振り返ります。
夜が明けて2日目を迎えるも、救援は訪れず、わずかな物資でしのぐ生活が続きます。3日目にラジオでさらなる地震のおそれを知った職員たちは、病院ではこれ以上耐えられないと判断。全員で車いすを押し、自力で帰宅できない患者を近隣の学校へ避難させました。
それからの3日間で患者全員の受け入れ先が決まり、病院は一時解散。震災直前に亡くなった1人と、震災のなか亡くなった2人、3人の患者が遺体安置所に送られたといいます。
職員は一時帰宅とされましたが、鈴木さんの住んでいたアパートは津波で崩壊。なんとか震災を免れた実家に帰りますが、そこには震災の影響で亡くなった母の姿がありました。混乱のなか、母はリウマチもあって満足に動けなかったのだろう――。そう察した鈴木さんは、仕方ないと自身に言い聞かせながらも、母のそばにいられなかった自分を悔やむのでした。
いたましい出来事から3カ月が経過し、鈴木さんは新たな病院へ赴任。勤務先の町はライフラインが回復し、震災前の活気を取り戻しつつありました。しかし、心の傷がまだ癒えぬ鈴木さんは、これからどう生きていけばいいのか分からずに思い悩みます。
そんな折に頼まれたのが、震災にまつわるレポート。思い出したくもないしどう書けばいいかも分からない、でも何かを始めなければ――そんな思いに駆られ、鈴木さんは筆をとりました。
「ゆっくりでいい……全ての人が自分で傷を埋める何かを見つけられるといいなと思います」――。漫画は鈴木さんの願いと、被災した小学校でガレキに埋もれながらも、力強く咲いた桜の花で結ばれました。
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