Twitterにファンアートを投稿したらアカウント凍結 虚偽申請の被害絵師が悲痛な胸の内語る(2/3 ページ)
Twitter社は虚偽DMCAをどう捉えているか
こうした状況について、ねとらぼ編集部はTwitter社に対して次の6項目を質問してみました。
- 法人からのDMCA申請の際、フリーメールアドレスであっても申請を受け付けているか。また法人などからの申請の場合、実際にその法人が存在するかの確認等は取っているか。
- DMCA申請について対応しているのは、Twitter社ではなく、委託会社であるという指摘もあるが事実か。
- 虚偽DMCA申請によるアカウント凍結などについては、これまで何度も問題となっているが、Twitter社として対応策は考えているか。また2020年には何件の虚偽DMCA申請が行われたか。
- 虚偽DMCA申請からどれぐらいの期間までであれば異議申し立て申請できるか。
- 虚偽DMCA申請を行った者に対して、Twitter社から何らかのペナルティを科しているなどはあるか。
これについてTwitter社からはDMCA違反については「著作権ポリシーに基づき、著作権所有者またはその権限を与えられた代表者から当社に送られた有効な著作権の苦情に対応します」との回答が寄せられました。
また「著作権通知に関しては、ハーバード大学バークマン・クラインセンターとの提携により設立された、透明性イニシアティブであるルーメンデータベースに詳細が寄稿されています」「著作権に関するポリシーのもとで、2020年1月から6月の期間、Twitterが受領したDMCAの削除通知は前回の報告対象期間以降、15%増加し、影響のあるアカウントは87%増加しました。また今回の対象期間中、商標に関するポリシーに基づいた商標表示の遵守率は30%減少しました」ともコメントし、「DMCA違反については次のサイトより異議申し立ても可能(※)」との見解も示しています。
(※)詳細は、私のコンテンツがTwitterから削除されましたを参照。
法の専門家は虚偽DMCA申請をどう見るのか
続いてお話を伺ったのは、電羊法律事務所の平野敬弁護士。法の専門家は虚偽DMCA申請をどう見るのか、質問してみました。
――虚偽DMCAを申し立てた場合、申立者はどんな罪に問われる可能性がありますか。
平野弁護士:偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。もっとも「被害者」であるTwitter社の申し出がなければ警察としても動きにくく、国際的な捜査が必要になるなど立件のハードルは高いと思われます。
――虚偽DMCAをした人物を特定する方法はありますか。
平野弁護士:虚偽DMCAの態様によります。本件では無断転載をしたブログに関して、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示を行うことが考えられます。
――虚偽DMCA申請を行われた場合、被害者は個人情報を世間に公表するリスクを背負って異議申し立てを行わなければならないので、これが大きなネックとなっています。個人情報を公表せずに異議申し立てをする方法はありますか。
平野弁護士:代理人弁護士を通じて異議申し立てを行うことができます。この場合、申請者に開示されるのは代理人の情報となります。
――明らかな虚偽DMCAによってアカウントを凍結した場合、Twitter社は何らかの責任を問われる可能性がありますか。
平野弁護士:ありません。実際に著作権侵害があったか否かを調査する義務はTwitter社にないためです。
――虚偽DMCA申請されないための予防策などはありますか。
平野弁護士:申請されないための直接的な予防策はありません。イラスト自体にサインや日時を入れれば、異議申し立ての際に主張する材料とはなります。迂遠ですが、DMCAの適用されない日本企業のサーバに画像をアップロードし、Twitterにはそのリンクを投稿するといった手段もあり得るでしょう。
被害絵師を救おうという動きも
こうした状況について、被害絵師を救おうとする人も現れました。 スタッフブログ監視アカウント(@kanshistaffBg)さんは、2020年1月ごろから独自に転載先ブログの魚拓を取るなどの活動をはじめ、本当の著作権を有する絵師に対して虚偽申請をされにくくするためのアドバイスなどを行っています。
現在は絵師同士が被害状況を報告しあえる環境を整えており、一部の被害絵師と連携し、虚偽申請者への損害賠償請求を含む法的措置についてのフォローも行っているほか、近くTwitter社に対する声明の送付も検討しているとのことでした。
ねとらぼ編集部がTwitter社への取材を進めていく中で凍結が解除されたアカウントも存在しましたが、多くの絵師が「時間がたちすぎている」と回答。元のアカウントを再運営するケースはほとんどありませんでした。
また本件にかかわらず、弁護士を雇ってIPアドレス開示請求をしたり、損害賠償請求をしたりするためには数十万円の費用がかかる一方、認められる賠償額は非常に安価であることが想定されることから、ネット上の権利にかかる法の対応が不十分だとの声も多く聞かれました。
ごく少数の悪意ある人物によって、多くのクリエイターが発表の場を奪われているという現状。被害絵師たちは「(クリエイターの活動の場を奪うのは)どうしても許せない行為であり、虚偽のDMCA申請そのものが罪に問われる可能性もある」「犯人がきちんと特定され、今後虚偽のDMCAが無くなるような世の中に繋がるようにしたい」「今後は法的措置を視野に準備を進めていく」と取材に対して答えました。
このような実態を多くの人が知ることこそが、虚偽DMCA申請をさせない社会を作る第一歩なのかもしれません。
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