映像制作経験のない監督が7年かけ作り上げたヤバい映画「JUNK HEAD」レビュー(2/3 ページ)
そして、中盤で誰もが戦慄するであろう、あの「史上最狂に気持ち悪い食事システム」を考えた堀監督はどうかしている(褒めてる)。観賞後にはG(全年齢)指定であることを二度見してしまった。
それでもさまざまなピンチが訪れるエンターテインメントとして楽しいし、人形なのである程度グロさは軽減されているので、本当に(字幕の漢字が読める年齢の)子どもから大人までおすすめである。
そんな良い意味での悪趣味さがたっぷりの反面、キャラクターはめっちゃキュートであったりもする。主人公を神様だとあがめている「3バカ兄弟」は、「今日は食べ物がないんだーごめんねー」などと気の抜けた話し方をしており、性格そのものもボケボケでなんともいとおしい。中盤から登場する「女の子」も心からその身を守りたくなるだろう。
それでいて、クズいキャラもいるというのもうれしい(?)ポイントだ。中盤から登場する六角精児にそっくりなキャラは、誰もがその言動を見て「地獄に落ちろ☆」と思えるだろう。そして、その期待に十二分に答えてくれるので心から笑顔になれた。
そんなわけで、肉体損壊描写に「グロい!」とおののき、主人公の境遇に「ひどい!」と同情し、しかもとぼけたキャラに「かわいい!」と萌えたりもできる、そんな風に感情がぐっちゃぐちゃになるのがこの「JUNK HEAD」なのだが、それこそが最大の魅力でもある。こんな映画は、他には存在しない。
そして、広大(に見えることがすごい)なディストピア世界の冒険の果てにもまた、とんでもない感動が待ち受けていた。見終われば、誰もがさらなる「JUNK HEAD」の世界(続編)に期待し、そして「お疲れさまです!」とねぎらいの言葉をかけたくなるだろう。
5月公開の「クー!キン・ザ・ザ」も要チェック!
「JUNK HEAD」の堀監督は、1986年のソ連製作の映画「不思議惑星キン・ザ・ザ」を、もっとも好きな映画として挙げており、そのタイトルと同じフォントが予告編で使われているようだ。
「不思議惑星キン・ザ・ザ」は知る人ぞ知るカルト的な人気を誇るディストピアSF映画であり、そのとぼけたコメディー描写、宇宙船の造形のレトロ感などは、なるほど「JUNK HEAD」に通じるところがあった。作風に大きな影響を与えていることは間違いないだろう。
そして、その「不思議惑星キン・ザ・ザ」を、なんと27年の時を経て同じ監督がアニメ映画化した「クー!キン・ザ・ザ」が、2021年5月14日より公開される。
「JUNK HEAD」と合わせてこの「クー!キン・ザ・ザ」を見て、その共通点を探してみるのも、きっと面白いだろう。一風(どころじゃない)変わったアニメ映画を期待して、ぜひ劇場へ足を運んでほしい。
(ヒナタカ)
参考記事:自主制作のコマ撮りSFアニメ「Junk Head 1」がヤバい! - KAI-YOU.net
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