恐竜×神父×ニンジャ カッコイイ要素をバカ正直に掛け算した映画「必殺!恐竜神父」にアーメンダブツ!(2/3 ページ)

» 2021年04月08日 19時15分 公開
[サメ映画ルーキーねとらぼ]
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 「必殺!恐竜神父」は俗に言う“So Bad It’s Good”(酷すぎて逆に面白い)という哲学を真剣に考え抜いた「意図的に」ダメな映画であり、郷愁を誘いつつ「ダメ映画」そのものを監督の抜群のセンスでパロディー化したコメディー作品なのだ。

 そこがどう見てもアメリカだろうと字幕で「中国」と表示してしまえばそこは中国だし、往年の“ニンジャ”映画に見られたデタラメ忍者が殺陣を披露し、着ぐるみの恐竜が暴れ回る……多少なりとも1980〜1990年代にVHSで乱造されたアヤシゲな映画やアメリカン忍者映画に親しみを覚える人なら愛おしくて堪らないシーンの連発である。


 「必殺!恐竜神父」は低予算作品とはいえ(だからこそ)、監督たちの熱すぎる情熱がこもっている。若き鬼才ブレンダン・スティアー監督にとっては今作が初めての長編となるが、アイデアは偶然やってきたらしい。メールで“Velociraptor(ヴェロキラプトル)”と打とうとしたところ、誤って“VelociPastor(ヴェロキラプトル+Pastor:牧師)”と打ってしまった。この語感に衝撃を受けた彼は、いっそ映画にしてしまおうと立ち上がったのだ。

 当時の彼は映画学校に通う学生であり、自ら製作した映像をYouTubeにアップしても全く再生数が伸びずに悩んでいた。しかし“The VelociPastor”のフェイク予告編をアップしたところ再生数が1000倍に増えた(45回再生→4万5000回再生)ことが製作の決め手となったそうだ。

 その後2回のクラウドファンディングの失敗を経て、母親の友人から個人的な融資を得て製作にこぎ着けたのである。主要な登場人物の1人であるステュワート神父は監督の実の父親だし、恐竜の着ぐるみは監督が高校時代に映像製作の為に外注したものだ。こうした裏事情も何とも愛らしいと思わないだろうか。


 昨今のレンタル市場の縮小により、街のレンタル屋にあった誰が見るかも分からないような洋画の配給が極端に減ってきているのは周知の事実だ。いまあなたが大手のレンタル店を訪れたとしても、そこに広がっているのは奇妙なまでに整い画一化された空間でしかない。あの妙なタイトルやジャケットの作品に出会える可能性は限りなく低い。事実、「必殺!恐竜神父」も大手レンタル店に並ぶことはほぼ無いだろう。

 答えは単純、売れないからである。だがそうした事を分かった上で、レンタル市場を捨ててでも配給に踏み切ってくれたコンマビジョンの漢気をどうか理解して欲しい。そしてDVDを買うか、各種配信サービスでレンタルをして欲しい。豪華なキャストと美麗なCG、そして派手なアクションでできた「良い」映画だけではダメなのだ。多様性こそ映画の本懐なのだから。

サメ映画ルーキー


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