AIが進化した未来、人類に残された仕事は「クレーム対応」だけだった 不毛で人間らしい社会を描いたSF漫画(1/2 ページ)
あり得なくはない未来の話。
AI技術が極まった未来、人類唯一の「人間らしい仕事」は「クレーム対応係」だった――。漫画家の窓口基(@R_adical)さんによるSF短編、「『怒られ屋』あるいは『人類最後の仕事』」が好評です。
舞台はAIが人の思考速度を超えるに至った世界。AIは脳と一体化し、人間の思考能力をサポートしています。
例えば“主人”が「今日は何を食べよう」と考えたとき、人気のレシピや生活費、食材の備蓄、気候や体調といったもろもろの条件を参照。適切なメニューを割り出して本人の意識下に提案します。人間に先回りして答えを導き出し、「より良い選択」を「人間が自分で思い付いた」ていで、自然に合理的な判断を促すわけです。
こうして誰もが理性的になった時代において、「“人間的”とは愚かであること」が通念に。その穏やかな社会に1つだけ残った“人間的”な仕事こそ、クレーム対応だったのです。
クレーム対応と言っても、求められているのは「問題解決のためのオペレーター」ではなく、「感情のはけ口としての人間」。なんともブラックな仕事に聞こえますが、クレーマーに謝り頭を下げる一連の動作は全てAI任せ。本人の意識は脳の余力を使ってクラウド上のSNSへ接続。趣味の執筆を楽しんでいて、気苦労などはなさそうです。
クレーマーもクレーマーで、他人を怒鳴るのも面倒だからと、言動をAIに任せて意識は趣味に没頭中。どうやら、メンタルのバランスをケアするために“自分で思い付いたつもり”になって怒っているに過ぎないようです。不毛な話ではありますが、合理性だけでは割り切れないのが人間というものなのかもしれません。
漫画は最後に、これまで自分の仕事をナレーションで説明してきた主人公の視点へ。彼は「“人間らしさ”をほんのり感じられるこの仕事を、俺はけっこう気に入っている」――もとい、「気に入っていると“自分では”思っている」とつぶやくのでした。
漫画は「すごく納得感のある未来」「コミュニケーションも思考もAIに任せるほうがうまくいくのは自明なので、いずれ実際にこうなる」「そのうち怒るほうもバーチャルに飛んで存在しなくなる」「欄外の膨大な脚注が士郎正宗的で好き」などとさまざまな感想を呼びました。作者はほかにも、Twitterで興味深いSF短編を公開しています。
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