「とらのあな」なぜ急ペースで閉店? コロナ禍の影響は? 閉店が相次ぐ理由を聞いてみた(1/2 ページ)
お話を聞いたらいろいろ納得でした。
ここしばらく、ものすごいペースで店舗が閉店している同人ショップ「とらのあな」。つい先日も札幌店と広島店が6月30日で閉店することが発表され、これによって国内直営店は関東に5店舗、名古屋に1店舗、大阪に2店舗、岡山に1店舗が残るのみとなりました。
コロナ禍の影響もあるだろうし、とらのあなの経営ってそんなに大変なのか……と思いきや、6月9日に発表されたプレスリリースでは「2020年5月〜2021年4月のオンラインサービス事業の流通総額が200億円を突破」「昨対比143%を達成」とやたら景気のいいニュースも。店舗はガンガン閉店してるのに、どうやらオンラインでの事業は好調な様子。一体どういうことなの……?
ということで、とらのあなの偉い人に直接閉店についての疑問をぶつけてみました。取材に答えてくれたのはとらのあなの親会社ユメノソラホールディングス取締役で、虎の穴取締役でもある鮎澤慎二郎氏。一体大量閉店の裏側では、何が起こっていたのでしょうか。
コロナ禍の前から始まっていた、通販へのユーザーの偏り
―― これまでの閉店の直接的な理由はなんだったんでしょうか?
われわれが27年間やってきたビジネスは、店舗からスタートしています。それを基本にして経営してきたわけですが、実は2〜3年ほど前からお客様の流動が通販に寄っていたんです。
―― コロナ禍の前から店舗から通販へ購買行動が移っていく傾向があったんですね。
そうですね。その時期から店舗経営をどうしていくべきか考えていました。とらのあなの店舗には男性のお客様が多いように見えていたと思いますし、実際男性寄りの店舗の方が多いんですが、しかし通販など全てを含めた近年のユーザー構成では7割が女性なんです。そういった中で経営をどうしていくかを模索しているところで、コロナ禍に入ってしまったんです。
―― やはり、コロナ禍の影響は大きかったんですね。
コロナ以降は、さらにユーザーの動向が通販に寄っていく動きが顕著になりました。皆さんもご存知のように大型イベントも中止になり、お客様自身が店舗に足を運ぶことができなくなりましたから。一時期は前年対比で70%近く来店客数が低下したこともありました。
―― 大ピンチですね……。
ただ、その時期の通販はというと150%の伸び率を示していたんです。当然、昨年(2020年)以降は2年前の段階で「店舗をどうしていこうか」と話していた状況とは全く異なる状態になってきまして、そこから経営的な舵を切ったのが現状です。
―― 先ほど、全体のユーザー構成では7割が女性とおっしゃっていましたが、そうなると女性のお客さんの方が通販を頻繁に使うということなんでしょうか?
全体ではどうか分からないですが、当社を利用していただいている女性のお客様は通販をご利用いただいていることが多いです。池袋店などでは女性のお客様にご利用していただけるような商品を提供していましたが、結果として通販をご利用いただくケースの方が圧倒的に伸びていますね。そういったユーザー構成と購買行動の特徴という背景もあって、一旦は店舗を絞ってでも、今伸びている通販の方に舵を切ろうと判断しました。
―― これ以上店舗を閉める予定はあるんでしょうか?
はっきりしたことはまだ決まっていませんが、状況によってはこれ以上の閉店も考えなくてはならないと思います。コロナについてはワクチンなど状況の変化で好転することはあると思いますが、2年ほど前のインバウンドのお客様が秋葉原や名古屋、難波といった主力店舗に足を運んでくださっていた状況と比べれば、海外のお客様が足を運べない状況は続きますから。そういう状況を総合的に判断して、閉店を考えることはあると思います。
―― 店舗については、新しい動きはないのでしょうか? プレスリリースには直接的な交流のための場として運用していくというお話もありましたが。
例えば秋葉原の店舗には、展示会場として活用できるようなイベントスペースを設けています。ファン交流とクラウドファンディング型のサイトであるFantiaも非常に伸びていることから、こういった場で交流イベントを企画していくことは考えています。また「とらのあな出張所」という形で、他の書店様と協力しながら新しい形の店舗の形態を模索しようと思っております。
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