映画「シャン・チー」レビュー シリーズで1、2を争う面白さにぶっ飛ばされる傑作(1/3 ページ)
主演に大抜擢されたシム・リウに惚れた。
9月3日から、映画「シャン・チー テン・リングスの伝説」が公開されている。結論から申し上げておくと、本作は「ぶっ飛ばされるほど」に超絶面白かった。予備知識もいっさい必要なく、見る人を選ばない娯楽作として万人に心からおすすめできる。
本作は同じ世界観を共有するスーパーヒーロー映画シリーズ「マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)」の第25作目。筆者個人としては、これまでシリーズでは「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019)が別格だったが、本作はそれに迫る傑作だった。
アメコミ映画のファンはもちろん、全く見たことがないことがないという人も魅了されるであろうポイントがいくらでも思い付く。ネタバレにならない範囲で、さらに詳しく、その面白さを紹介していこう。
MCU初のアジア人の主人公 シム・リウの身体能力を見よ!
本作で何より注目するべきは、主人公がMCU初のアジア人ヒーローであること、そしてそれを演じるのが中国系カナダ人の俳優シム・リウだということだ。
シム・リウは「パシフィック・リム」(2013)のエキストラや、多数の海外ドラマの出演の経験はあるものの、これまではほぼ無名に近かったため、異例の大抜擢(ばってき)と言っていい。そして、実際に本編を見れば、なぜ彼が世界最高峰の映画シリーズのヒーローに選ばれたのかが、はっきりと分かる。
それは「カンフー」を取り入れた盛りだくさんのアクションに、シム・リウが類まれな身体能力を持って全力で応えているからだ。彼がインスタグラムに投稿している動画を見ても、彼本人がスーパーヒーローたり得る資質を存分に持っていることを思い知らされる。
しかも、劇中では見た目も性格も親しみやすくチャーミングで、「普段は平凡なホテルマン」という役にピッタリとマッチしている。ちなみに、無名時代に写真素材サイトのモデルとして活躍していた写真もどれを見てもかわいいのでおすすめである。
本編のアクションはカンフーと、ハリウッド最高峰のスタッフによる派手なVFXやセットを組み合わせた「ギミック満載」でこその面白さがある。特に序盤の「バス内でのバトル」はアイデアはもちろん見せ方も抜群に優れていて大興奮だった。
さらに中盤では「ビルの外壁」を見事に利用したアクションが展開し、そして「予告編でいっさい見せていない大スペクタクル」に至っては「MCUの中でいちばん面白いぞ!」と思えるほどだった。
そして、アジア映画界の大スターであるトニー・レオンが主人公の父役、さらに多数のアクション映画で活躍するミシェル・ヨーも重要な役で登場し、瞬きする間も惜しい格闘シーンを見せてくれるのがたまらない。
時に、もはや「ドラゴンボールかな?」と思わせる「空中をぶっ飛ぶ」アクションが展開するのも最高だ。ちなみに、デスティン・ダニエル・クレットン監督は監督は幼少期にアニメ「ドラゴンボールZ」を見て育っていたらしいので、オマージュになっている部分もあるはずだ。その他にも「監督は日本が大好きなんだな」と思える日本文化がいくつか劇中に登場するのが嬉しい。
そんな「世界的ヒーロー映画シリーズにおけるNo.1のアクション」を実現したのが「今までほぼ無名の俳優」というのがシンデレラ・ストーリーであるし、今までディズニー作品やハリウッド映画ではあまり日の目を見てこなかったアジア系の俳優が主演を務めたことが、日本人としても嬉しい。
何よりも、シム・リウという人そのものが本当に魅力的であり、本編を見て心から大好きになれたのだ。ポスターや予告編を見て「誰?」と思った方も、ぜひ見てほしい。惚れるぞ。
「毒親」と戦うストーリーも熱い
ここまでシム・リウの魅力を先走ってお伝えしたが、あらためてあらすじを記そう。
主人公シャン・チーはホテルの駐車係として平凡な生活を送っていた。実は、彼は幼い頃から父が率いる犯罪組織「テン・リングス」で厳しい修行の日々を送っていた過去があり、ある理由から逃げ出して自分の運命を変えていたのだ。そして、今になって父が放った刺客がシャン・チーを襲い、陰謀に巻き込まれることになる。
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