最高のカーテンコールをありがとう 傑作ゲーム「Outer Wilds」の追加DLC「Echoes of the Eye」レビュー(※ネタバレなし)やや最果てエンタメ観測所(2/2 ページ)

» 2021年10月12日 22時50分 公開
[砂義出雲ねとらぼ]
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序盤、中盤を経て思う。これは紛れもなく「Outer Wilds」だ! だけど――

 プレイ序盤。「Outer Wilds」のことなら知らないことはほぼないぐらいのつもりでいた私はある一つの事実に驚きます。それは――。

Outer Wilds Echoes of the Eye 序盤に訪れる施設

 「なにも分からない」!

 なんと、このゲームは、DLCパートにおいて明らかに「全てを知っている」プレイヤーを、再び「全てが未知の世界」へと引き戻す仕掛けがなされていました。すさまじいワクワク感。未開の地に足を踏み入れる一歩ごとに身体は震え、鼓動が高鳴っていきます。そして、心の中は歓喜に満ちあふれていました。「また、一からOuter Wildsをプレイできている!」

Outer Wilds Echoes of the Eye 待ち受ける未知の冒険

 ですが、中盤。その喜びに陰りが出てきはじめます。

 事前に告知されていることなので書いてしまいますが、『Echoes of the Eye』にはホラー要素が含まれています。(一応、ゲームメニューからは「恐怖を緩和する」オプションが用意されており、難易度を下げる効果もあります。ホラー要素やゲームが苦手な方はためらいなくオンにしてしまって構わないと思います)このホラー要素が中盤でかなり強くなってくるのです。

Outer Wilds Echoes of the Eye ゲーム開始時の注意書き。恐怖緩和オプションは本編中いつでもオンオフができます

 そして、アクション的にもやや今までと違うことが要求されるようになります。この中盤のプレイ感覚は本編に比べると明らかに異質であり、賛否両論があるでしょう。もちろん、本編部分でもストレス耐性を要求するシーンは多々ありました。「Outer Wildsは、ストレスを好奇心で乗り越えながら進んでいくゲームだ」が自分の持論だったのですが、ただ本編でのそれは探索が徒労に終わったときの手応えのなさや、ミスをしてしまったときの虚脱感を指すもので、今回設えられていた恐怖はいわゆる「ホラーゲーム」に見られるような「湿度の高い恐怖」でした。自分が思い出したのはロウソクを片手に廃校を探険する「返校」というホラーゲームです。

Outer Wilds Echoes of the Eye 「返校」(画面写真はNintendo Switch版

 ホラーゲームがあまり得意でない私はプレイ中「Outer Wildsにこんな方向性は望んでなかった!」と半泣きになっていました。また、個人的にはPS4でプレイした時にエラー落ちが多発したのも心を折るポイントでした(これは後日アップデートでなんとかしてほしい)。ちょうど謎解きに詰まったことも相まって、この辺りで「このゲーム本当にクリアできるかな」と思ってしまったことも何度かあります。人生ベストゲームのDLC、その体験がまさかこんな予想だにしなかった方向性で心が折れそうになるとは。


終盤に訪れた圧倒的な「涙腺崩壊シークエンス」。滂沱の涙が止められない――

 しかし、終盤。私を待ち受けていたもの。それは圧倒的な「涙腺崩壊シークエンス」でした。

 それも、今まで「Outer Wilds」の世界を長く旅して、深く愛してきた人間ほど破壊力が高くなるような、あまりにも濃密な「Outer Wilds」ファンへのご褒美。

 自分の琴線に触れるツボに、こういうものがあります。「ひょんなことから、誰かの思いが報われてしまう瞬間」です。そこで繰り広げられたものは、まさにそのような展開であり、それはちょうど「もうこのゲーム無理かもしれない」と心の折れかけていた自分のプレイ体験ともシンクロするようなものでした。

 ああ、今までの旅は無駄じゃなかったのだ、と。諦めずにここまで旅を続けてきてよかった、と。私は嗚咽混じりで、全ての苦労が一瞬で報われてしまうようなその素晴らしいシークエンスを見ました。最高。最高です。

 私は本編の「Outer Wilds」をプレイしたことで人生観が変わったと思っています。それは、虚無に襲われがちな世界でどうやって生きるか、人はなぜ生きるかという話です。それに近い感動が、今回のDLCにもありました。世の中は何がどう巡り巡って、報われてしまうか分からない。だからこそ、その瞬間のために、時に折れそうになる日々を懸命に生きるのだと。ロマンチシズムが過ぎるといわれるかもしれません。でも、それこそが「先の見えない」人生を生きる道しるべの一つではないでしょうか?

 そして、強く感情を揺さぶるエンディングを迎えながら私は思いました。「素晴らしい『Outer Wilds』だった」、と。


総括:これは「Outer Wilds」を再体験できる『夢のDLC』だった! ぜひ、本編未プレイの方は本編の後にプレイを

 ということで、振り返ってみると、「Echoes of the Eye」は単なるゲームの「追加要素」どころか、「Outer Wilds」というゲームを丸ごと「再体験」できる、夢のようなDLCだったと言えます。

 序盤で再びプレイヤーを「何も分からない」状態に放り出して、そこから「分かってくる」楽しさを味わわせ、中盤でときに投げ出す人が続出しそうな試練を与え、終盤でその不満を吹き飛ばすような圧倒的なエモさでぶん殴ってくる。これこそ、「Outer Wilds」!

 図らずも、記憶を消さずとも「Outer Wilds」というゲームをもう一度プレイするという願いがかなってしまったのです。そのため、個人的には、本編をまだ未プレイの方は、本編をきちんとクリアした上でDLCパートをプレイすることをお勧めします(最初の惑星にある『電波塔』からの謎解きがDLCの範囲に当たります)。

Outer Wilds Echoes of the Eye 電波塔。DLCへの導入も謎解きになっているのが最高に「Outer Wilds」

 そして、今、完璧なゲームであるOuter WildsにDLCを作る意味はあったのか? という疑問には自信を持って答えることができます。

 ――間違いなく、あった。つらいこともあったけど、最高の旅だった。私は制作者一同様にこう言いたいと思います。最高のカーテンコールをありがとうございました。

 Outer WildsのDLC「Echoes of the Eye」は、PS4Xbox OneSteamEpic Gamesストアで配信中です。


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