「ファスト映画みたい」「法的にどうなの」――Twitterで増加する「ビジネス本図解アカウント」は違法? 弁護士、図解製作者に見解を聞いた

無断で“要約本”を出版するケースも。

» 2021年10月15日 19時00分 公開
[ねとらぼ]

 Twitterなどで昨今増えつつある「ビジネス本の図解アカウント」が一部で物議を醸しています。中には「ファスト映画みたい」「法的にどうなの」といった批判や疑問の声も。“他者の本の内容の図解化”はどのような問題があるのか、弁護士に見解を聞きました。

図解クリエイター問題 ビジネス本を「図解」してフォロワーを稼ぐ『図解クリエイター』が一部で流行っているらしい(Togetter

 問題になっているのは、主に有名なビジネス本などを対象に、書籍の内容を3〜4枚の図にまとめて投稿しているアカウント群。ひろゆきさんの『1%の努力』や、近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』など、Twitterで「図解+書名」などのキーワードで検索すると、多くの書籍が“図解化”されているのが見つかります。自分なりの知識やノウハウ、日常の“あるある”などを図解にして投稿しているツイートは以前からありましたが、最近になってこうした「書籍の図解化」を行うアカウントが増えてきたようです。

図解クリエイター問題 ひろゆきさんの『1%の努力』を図解化しているツイート(Twitterより/画像加工は編集部によるもの)
図解クリエイター問題 近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』も(Twitterより/画像加工は編集部によるもの)

 普通に読めば時間もお金も掛かる有名書籍の内容を、まがりなりにもわずか1ツイートで吸収できる利便性からか、どのアカウントもそこそこの人気があり、中には数万人単位のフォロワーを抱えるアカウントも。また「図解アカウントの運用の仕方」を解説した情報商材も販売されており、複数のアカウントで一斉に「書籍の図解化」が行われているのは、こうした「共通ノウハウ」が拡散されているためではないかとも推測されています。

 ただ、これらの図解の多くは恐らく、著作者の了承を得ていない“無断図解化”です。もちろん、本の文章をそのまま転載しているわけではなく、図や文章は投稿者が実際に本を読み、自分の言葉で書き起こしたものでしょう。しかし「買わなくてもおおよその内容を知ることができる」という点では、昨今問題になっている「ファスト映画(※)」などに通じる一面も。またさらに悪質なケースでは、元の本の内容をさらに短くまとめたものを電子書籍化し、Kindleでセルフ出版しているケースもみられました(現在は削除済み)。

図解クリエイター問題図解クリエイター問題 Kindleストアで電子書籍として販売されていたもの

※映画の内容を10分ほどに編集し、短い時間で映画の内容や結末をほぼ網羅できる動画のこと。映画業界側から問題視する動きがあり、2021年6月には逮捕者も出ている

弁護士、投稿者に見解聞いた

 実際にこうした“ビジネス本図解”を投稿しているアカウントの一つに話を聞いてみたところ、アカウント開設時点で既に多くの先駆者がおり、最初はそれを模倣する形で始めたといいます。また“図解化”の法的リスクについては事前に弁護士に相談しており、その際「図解自体は創作物であり、書籍の内容をインプットして、その頭の中を表現したものにすぎなければ著作権法上問題はない」といった回答を得ていたそうです。ただ、Kindleで販売しているケースについて話すと「それは初めて聞きましたが、あまり印象は良くないかと思います」と語りました。

 並行して、編集部からも図解化の法的リスクについて弁護士に確認してみました。回答いただいたのは、白石総合法律事務所の宮崎大輔弁護士。

―― 他者の書籍を第三者が図解にまとめることについて、法的には問題はないのでしょうか。

宮崎弁護士:著作権法違反の可能性があります。著作権法第第二十七条では、「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と記載されています。

 翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現形式を変更して新たな著作物を創作する行為であると解されています。私は、他者の書籍を図解にまとめることについては、もちろん個別差はあろうかと思いますが、この翻案に該当すると思います。したがいまして、他社の書籍を図解にまとめることにより、著作者の翻案権を侵害する可能性があります。

図解クリエイター問題 文化庁「著作権解説集」より「翻案権」についての解説

―― 書籍の内容をまとめ、それを電子書籍として販売しているケースについてはどうでしょうか。

宮崎弁護士:他社の書籍を図解にまとめて、それを公表すること自体、違法となる可能性が高いので、最低限、著作権者の同意を得て販売しないと、著作権法違反となります。



 宮崎弁護士が問題にしていたのは主に“翻案権”の部分。直接的な文章や画像の転載はしていなくても、既存の著作物の内容を元に新たな著作物を創作する場合は“翻案”にあたり、著作権法違反にあたる可能性がある、というのが宮崎弁護士の見解でした。

 なお編集部では“要約版”をKindleで販売されていた出版社の一つにも「要約や販売について許諾していたか」など質問していましたが、さまざまなケースがあり一概に回答するのが難しいとの理由から、コメントは控えたいとのことでした。

 Twitterで問題視する声があがった後、こうした「ビジネス本図解アカウント」の一部は活動休止を発表したり、話題になったツイートを削除したりしていますが、現在も図解の投稿を続けているアカウントはまだ多くあります。現時点では「ファスト映画」のような大きな問題には発展していませんが、今後の動向が気になるところです。


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