「これは本物だ……」「楽しすぎる」 国産インディーゲーム「ElecHead」はなぜゲーマーや開発者をここまで魅了したのか
純粋なパズルとの殴り合いだけで構成された、ひたすらぜいたくな2時間。
自分が大好きなゲームの一つに「Celeste」という作品がある。
その「Celeste」の作者、Maddy Thorson氏が、最近発売された「ElecHead」(Steam/itch.io)という日本製のゲームを褒めていた。
そのうち瞬く間にタイムライン上でElecHeadは話題となった。「これは本物だ……」「楽しすぎる」と好意的な反応ばかり目立つ。
慌ててプレイすると自分もまた夢中になり、一度も休憩することなくエンディングを迎えてしまった。友人に「俺に2時間ちょうだい! 絶対面白いからやって!」と言ってしまうくらい。そんなアツい布教欲に駆られたのはいつぶりだろうか。
純粋なパズルとの殴り合いだけで構成された2時間
本作は電気を使って解くパズルアクションゲーム。
主人公の“Elec”は電気を帯びているため、壁やギミックに触れることで自らが動力となり、リフトや足場などを動かすことができる。また、自らの頭を投げることで離れた所を通電させることが可能、投げた頭は10カウント以内に回収できないと動力切れで爆発(なんで?)してしまう。
プレイすると、このゲームはパズルの質が異常なほど良いことに気付く。針の穴を通すようなテクニックが必要であったり、細い足場を渡るジャンプが必要となったりすることはなく、どのステージでも必要なものはひらめきとトライ&エラーだけだった。こういったゲームにありがちな、偶然解けてしまって「これでいいの?」と不安になるような場面がないのは印象的で、想定された解答にたどり着けたことに毎マップ新鮮な喜びがある。
そんなパズルへの自信からか、本作ではアクションパズルではありがちな“謎解きを邪魔する敵”がおらず、制限時間もない。謎解きは「実はこんなこともできます」といった意外な(ズルい)ものではなく、「電気の特性上、これもできるはずだけど……できた!」と納得できるものばかり。プレイヤーはただひたすらに謎と向き合い、体をいろんなところにぶつけ、ビビッとひらめきを感じながら、それらを打倒していく快感だけを堪能することができる。
パズルとの殴り合いはどのステージでも新鮮で、そうこうしていると、ゲームとしては少々短くも感じる「約2時間」というボリュームでゲームはエンディングを迎える。作者のツイートによると、もともと10ステージ(現在は6ステージ)作っていたが、プレイヤーが胸やけしないようにこのボリュームにしたらしい。一度作ったものを削るのはなかなかできることではないと思う。
起動してから一度も飽きないまま、「楽しい」という感情だけを摂取してエンディングを迎えたとき、良質な映画を楽しんだときのような充実感があった。シンプルさを補って余りある“パズルの質”で正々堂々と勝負し、やりたいことをやったらさっさと風呂敷を畳んでしまうこのゲームはカッコいい。
言語の壁がなく、途中からでも謎解きに参加できるわかりやすさ
言語を使用しないでプレイヤーにルールを理解させようとするところもこだわりを感じたポイント。何か新しいギミックが出てきたときに、NPCが登場し「そこの足場に乗ると電球にエネルギーが充填(じゅうてん)されて、その状態で触れるとミスになるよ」と説明されるようなことはなく、「踏んだな? 触ったな? 死んだな? もう分かったな?」と、体験して理解できるように設計されている。
自分はプレイ中、Discordを利用して友達に「面白いらしいよ」と見せながら遊んでいたが、途中から見はじめた人も「そこはこうすればいいんじゃないの?」と口を出してきた。パズルゲームを配信しながら遊んでも、途中から見た人にはルールが分からなかったりするが、このゲームは途中から見ても余裕で理解できるようだ。みんなでああでもないこうでもないとワイワイ考えながらプレイして、正解なら発言者は「ほら!」と誇らしげに喜ぶ。小さいころ友達の家でやったような友人とのコミュニケーションがなんだか懐かしく楽しかった。
また「言語を排除する」という世界観はオプション画面にまで及んでいて、実際にどれがどの設定なのか、図形だけで分かるようになっている。
そんな仕様のおかげで、ローカライズの必要がないというのはすごい。Steam商品ページの「29言語対応」なんて初めて見る記載に思わず笑ってしまった。
余談だが、最近友人の誕生日にSteamでゲームを送りあうのが身内ではやっている。今年の誕生日には「Pogostuck」や「Jump King」「Getting Over It with Bennett Foddy(壺おじ)」など面白そうなゲームをたくさんいただいたが、いざ私がプレゼントする番になると、ボリュームがあるゲームをプレゼントするのは強制しているように思えてしまい、なるべく短くて面白いゲームを送るようにしている。ElecHeadもそれにぴったりなゲームだったので来年は全員に送りつけてやろうと思っている。
言語の壁がない、ぜいたくなこのゲームがたくさんの人に遊んでもらえますように。
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