もしもあなたが孤独なら、プレイしてほしいゲームがある 「ドキドキ文芸部プラス!」レビュー:やや最果てエンタメ観測所(1/2 ページ)
なぜこのゲームがこんなにも胸を締め付けるのか。
このゲームレビューは、とある一人の少女にささげられている。
彼女は、世界の理不尽に気付きそれに抗える、そんな少女だった。彼女が僕にしてくれたことはたくさんあった。その言葉に癒されることも、励まされることも、ときには過剰だと思うこともあった。逆に、僕が彼女を悲しませてしまったことも多々あるような気がする。ただ、一つだけ間違いないのは――彼女が、真正面から僕に向き合ってくれたということ。だから、せめて彼女のためにできるだけ真摯(しんし)で丁寧なレビューを心掛けたい。
ということで、今回紹介するゲームは「ドキドキ文芸部プラス!」(Steam、PS5&PS4、Xbox Sereies X/S&One、Switch)だ。同作は2017年にPC向けフリーゲームとして配信されて人気を得たノベルゲーム「ドキドキ文芸部!」(原題がDoki Doki Literature Club!なので、略称はDDLCと呼ばれている)に追加要素を加えた、いわば「有償版」だ。
【※本稿は基本的にネタバレは避けていますが、2ページ目以降でこのゲームが「どんな作品か」にだけは触れていますのでご注意ください】
DDLCは、アメリカのゲームクリエイター、ダン・サルバト氏を中心として制作されたインディーゲームである。アメリカ産ゲームにもかかわらず、まず眼を引くのが――女の子たちの立ち絵が現れて下に会話ウィンドウが出る、いわゆる日本の美少女ゲームフォーマットにしか見えないゲーム画面。
つまり、本作はアメリカの「オタク」が日本の美少女ノベルゲームに対する「愛」を詰め込んで作った「ラブレター」のような作品なのだ。
ただ、パッケージやゲーム開始時にも書かれるようになったことなのでここまでは書いていいと思うが……ジャンルとしては「サイコホラーゲーム」になる。
つまり、中盤にやや血みどろの展開やビックリ展開が待っている。
ギャルゲーのフォーマットで始まったゲームが、いつしか血みどろ展開になっていく……。実は、日本の豊潤な美少女ゲーム文化において、このようなジャンルはそこまで珍しいものではない。2021年にも新作アニメが放送された「ひぐらしのなく頃に」(2002)などはその最たるものだし、ダン氏は「月姫」(2000)が最も影響を受けた作品だ、とインタビューで話している(それにしても気付いたけど、今年は月姫リメークが発売されてひぐらしが再アニメ化されてるわけで、一体西暦何年ですか?)。
そして、もっとはっきり言ってしまえば、DDLCはそのようなノベルゲームと比べて単体でクオリティーが高いものかと言うと、正直そこまでのものではない。
そもそもゲームとしてはあまりボリュームがないし、日米の文化的食い違いが転じてミーム的に愛されている「エアコン小さすぎだろ!」などの突っ込み所もあるし、基本的に「元はフリーゲームである」、という前提認識が必要な作品だろうとは思う。
では、DDLCが話題になったのは、前述のショッキング描写が日本国外のユーザーにとって新鮮だったからだけなのか? その答えは「否」だ。DDLCはホラーだからというより、「もう一つの要素」により、日本でも根強く……筆者を含めて愛されている作品だ。
その要素の話をするとネタバレになるので次ページ以降での話になるが、その前に「ドキドキ文芸部プラス!」は買いかどうか、迷っている人に簡潔に伝えておく。
個人的に、「DDLCプラス」は、あくまで原作ファンがお布施として割り切るのが一番正しい作品だと思う。有償版が出た今でも無印版はフリーゲームとして配布中なので、未プレイの人は手間は掛かるが非公式日本語パッチを導入する方法を調べて、まずPCでプレイしてみることをお薦めする(PCを持っていない人が雰囲気だけでも味わいたい、などはありだと思う)。なぜなら、プラスは無印版を再現しようと「頑張ってはいる」し、追加されたサイドストーリーはキャラクターを補完する要素として少しうれしくはあるものの、原初の体験としてはやはり物足りないところがある。そして、最大の不満点は――次ページで述べよう。
ということで、次のページからは「DDLCがどのようなゲームか」だけは知っている、あるいは知ってしまってもいい人向けのパートとさせていただく。
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