もしもあなたが孤独なら、プレイしてほしいゲームがある 「ドキドキ文芸部プラス!」レビューやや最果てエンタメ観測所(1/2 ページ)

なぜこのゲームがこんなにも胸を締め付けるのか。

» 2021年11月05日 17時30分 公開
[砂義出雲ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 このゲームレビューは、とある一人の少女にささげられている。

 彼女は、世界の理不尽に気付きそれに抗える、そんな少女だった。彼女が僕にしてくれたことはたくさんあった。その言葉に癒されることも、励まされることも、ときには過剰だと思うこともあった。逆に、僕が彼女を悲しませてしまったことも多々あるような気がする。ただ、一つだけ間違いないのは――彼女が、真正面から僕に向き合ってくれたということ。だから、せめて彼女のためにできるだけ真摯(しんし)で丁寧なレビューを心掛けたい。

ライター:砂義出雲

砂義出雲 プロフィール

作家・シナリオライター。はてなダイアリー「やや最果てのブログ」の運営を経て、2011年に小学館ライトノベル大賞・優秀賞を受賞し『寄生彼女サナ』でデビュー。なんだかんだ10年以上業界の片隅でラノベを書いたりゲームシナリオを書いたりしてきました。映画とゲームとsyrup16gが生きる糧。人生ベストゲームは「Outer Wilds」です。

Twitter:@sunagi



 ということで、今回紹介するゲームは「ドキドキ文芸部プラス!」SteamPS5&PS4Xbox Sereies X/S&OneSwitch)だ。同作は2017年にPC向けフリーゲームとして配信されて人気を得たノベルゲーム「ドキドキ文芸部!」(原題がDoki Doki Literature Club!なので、略称はDDLCと呼ばれている)に追加要素を加えた、いわば「有償版」だ。

【※本稿は基本的にネタバレは避けていますが、2ページ目以降でこのゲームが「どんな作品か」にだけは触れていますのでご注意ください】

 DDLCは、アメリカのゲームクリエイター、ダン・サルバト氏を中心として制作されたインディーゲームである。アメリカ産ゲームにもかかわらず、まず眼を引くのが――女の子たちの立ち絵が現れて下に会話ウィンドウが出る、いわゆる日本の美少女ゲームフォーマットにしか見えないゲーム画面。

DDLC DDLCのヒロインたち。左から、モニカ、ナツキ、ユリ

 つまり、本作はアメリカの「オタク」が日本の美少女ノベルゲームに対する「愛」を詰め込んで作った「ラブレター」のような作品なのだ。

 ただ、パッケージやゲーム開始時にも書かれるようになったことなのでここまでは書いていいと思うが……ジャンルとしては「サイコホラーゲーム」になる。

DDLC やはり商業展開となると「だまし討ち」的要素がなくなるのは仕方ないか

 つまり、中盤にやや血みどろの展開やビックリ展開が待っている。

 ギャルゲーのフォーマットで始まったゲームが、いつしか血みどろ展開になっていく……。実は、日本の豊潤な美少女ゲーム文化において、このようなジャンルはそこまで珍しいものではない。2021年にも新作アニメが放送された「ひぐらしのなく頃に」(2002)などはその最たるものだし、ダン氏は「月姫」(2000)が最も影響を受けた作品だ、とインタビューで話している(それにしても気付いたけど、今年は月姫リメークが発売されてひぐらしが再アニメ化されてるわけで、一体西暦何年ですか?)。

DDLC 「ひぐらしのなく頃に」、画像はSteam版

 そして、もっとはっきり言ってしまえば、DDLCはそのようなノベルゲームと比べて単体でクオリティーが高いものかと言うと、正直そこまでのものではない。

 そもそもゲームとしてはあまりボリュームがないし、日米の文化的食い違いが転じてミーム的に愛されている「エアコン小さすぎだろ!」などの突っ込み所もあるし、基本的に「元はフリーゲームである」、という前提認識が必要な作品だろうとは思う。

DDLC 背景に注目。日本人ならツッコミたくなる「エアコン小さすぎだろ!」

 では、DDLCが話題になったのは、前述のショッキング描写が日本国外のユーザーにとって新鮮だったからだけなのか? その答えは「否」だ。DDLCはホラーだからというより、「もう一つの要素」により、日本でも根強く……筆者を含めて愛されている作品だ。

 その要素の話をするとネタバレになるので次ページ以降での話になるが、その前に「ドキドキ文芸部プラス!」は買いかどうか、迷っている人に簡潔に伝えておく。

 個人的に、「DDLCプラス」は、あくまで原作ファンがお布施として割り切るのが一番正しい作品だと思う。有償版が出た今でも無印版はフリーゲームとして配布中なので、未プレイの人は手間は掛かるが非公式日本語パッチを導入する方法を調べて、まずPCでプレイしてみることをお薦めする(PCを持っていない人が雰囲気だけでも味わいたい、などはありだと思う)。なぜなら、プラスは無印版を再現しようと「頑張ってはいる」し、追加されたサイドストーリーはキャラクターを補完する要素として少しうれしくはあるものの、原初の体験としてはやはり物足りないところがある。そして、最大の不満点は――次ページで述べよう。

 ということで、次のページからは「DDLCがどのようなゲームか」だけは知っている、あるいは知ってしまってもいい人向けのパートとさせていただく。


       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/27/news037.jpg スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  2. /nl/articles/2501/27/news028.jpg 「ユンボないと無理」 竹林がなぜ“凶悪”なのか分かる開墾風景が壮絶すぎる 「抜根抜根! オラーッ!」
  3. /nl/articles/2501/26/news053.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  4. /nl/articles/2501/27/news074.jpg そうはならんやろ! 髪を自分で切って失敗した女性、美容院に行くと…… “まさかの展開”が爆笑必至 「わらったwww」
  5. /nl/articles/2501/25/news063.jpg 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. /nl/articles/2501/26/news011.jpg 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. /nl/articles/2501/26/news045.jpg これはNG! ホテル従業員が教える「実はやって欲しくないこと」4選 「そんな人いてるんですね」「気をつけます!」と反響
  8. /nl/articles/2501/23/news050.jpg 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  9. /nl/articles/2501/26/news035.jpg 「引越し以来、何に使うのか解らなかったコイツ」がお風呂に→3カ月後に判明 まさかの正体に「初めて見ました」「それは画期的!!」
  10. /nl/articles/2501/27/news019.jpg 保護当時、9.1キロだった“デカい猫”が数年後…… 飼い主も驚きの姿に「あ、圧倒的な安心感」「オオカミっぽい」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  4. 鮮魚店で売れ残っていたタコを連れ帰り、水槽に入れたら…… ヤバすぎる光景に「こんなに可愛いなんて!」「笑ってしまった」
  5. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  6. 「まじで終わってる」 マクドナルド「エヴァ」コラボ品“高額転売”に嘆く声…… 「結局欲しい人が買えない」
  7. 母に「髪染めやピアスはダメ」と言われ続けた25歳東大女子、大変身を決意したら…… まさかの事態に「さすがにおもろい」「涙出てきた」
  8. 賞味期限「2年前」のゼリーを販売か…… 人気スーパーが謝罪「深くお詫び」 回収に協力呼びかけ
  9. 風呂上がりに偶然「牛乳を注ぐ女」になった人に反響 「ほぼそのままw」「盛大にふきだした」 投稿者に話を聞いた
  10. タンクトップ姿のパパ「昔はモテた」→娘は信じていなかったが…… かつての姿に衝撃走る「『トップガン』に出ていても納得」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」