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» 2022年02月04日 20時45分 公開

「大怪獣のあとしまつ」レビュー 見た後に怒りの後始末が必要な全方位にスベり散らす怪作ギャグ映画(1/3 ページ)

アイデアは良かったのですが。

[ヒナタカ,ねとらぼ]

 いっそスガスガしい。何がって2月4日から公開中の「大怪獣のあとしまつ」のことである。

 「大怪獣のあとしまつ」レビュー 怪獣映画どころか全方位にケンカを売りながらスベり散らす怪作 (C)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

 こんな内容を、ここまでの超豪華キャストを集めて、最高峰の特撮技術も使って、最大規模で公開しているのは、はっきり言って正気の沙汰ではない。良い意味でも悪い意味でも(だいたい悪い)二度とはないタイプの「何か」が誕生しており、個人的には2022年のワースト映画が早くも決定した。

 本作はぜひ、映画館で目撃してほしい。矢継ぎ早に繰り出される全てのギャグシーンで誰1人としてクスリともせず、観賞後にはお通夜のような静寂に包まれる、虚無を超えて禅の境地のような体験ができるはずだ。

 個人的には「序盤からの悪い予感が全て当たる」というのも初めての経験だった。人によっては「この映画を先に始末するべき」などととブチギレてもおかしくないほどの、具体的なヤバさを記していこう。エンドロールの最後にも、人によっては怒髪天を衝くすごいおまけがあるので、これから足を運ぶ人は見逃さないようにしてほしい。

※以下、大きなネタバレはありませんが滑っているギャグ内容の一部などに触れています

「大怪獣のあとしまつ」本予告

スベり倒すギャグの投げっぱなしジャーマン

 本作は「誰もが知る“巨大怪獣”の、誰も知らない“死んだ後”の世界を描く、空想特撮エンターテインメント」であると銘打たれている。

 ギレルモ・デル・トロ監督の「パシフィック・リム」でも怪獣の死体をどう扱うかは描かれていたし、現在熱狂的な支持を得ているマンガ『怪獣8号』でも主人公が怪獣の死体清掃の仕事をしていたが、なるほどそれを主題とした映画というのは斬新であるし良いアイデアだ。怪獣の死体に向き合う過程での、科学的な考証、はたまた政治的な軋轢、世論と政府の対立など、面白くできそうな要素もたくさん思い浮かぶ。

 だが、実際の本編で何よりも目立つのは「スベり散らかすギャグ」である。冒頭の「警報かと思ったら笑い袋だった」からヤバいと思っていたが、その後も「あんたの顔トンボ顔だよね〜!」というなじりとか、聞き間違えで「どですかでん(黒澤明監督の映画)?」と言うとか、「感動して泣いた涙と鼻毛を抜いた時の涙は見分けがつかない」などと長ったらしい例えをするけど納得しにくいとか、はたまた「うん○」「ゲ○」「セック○」などの下ネタワードを並べるなど、お偉いさんがこんなことを言う国は早く滅びろと思ってしまう展開が続く。

 さらに上記以外にも「今のはなんだったんだよ?」と意味が分からないままギャグが流されるシーンが続き、意識を失いかける瞬間が多々あった。俳優の田中圭が公式に寄せたコメント「大怪獣の後始末にはみんな一生懸命なくせに、笑いの後始末はあまりしてくれませんw 出てくる人出てくる人みんな投げっぱなしジャーマン繰り出してくる」は完全に正しいのである。

 他にも、劇中で変なセリフがあったときに、聞き手が絶句するリアクションを取ったりする場面がある。つまり「つまらない」「意味が分からない」ことを前提としているギャグなのだが、実際はスベり笑いも起こらずにただただつまらなさが純粋培養され続けるだけだった。とはいえ、ギャグのツボは千差万別。これについては、まだ人によっては爆笑ものな可能性が残されているかもしれない。

 また、本作は松竹と東映が共同配給を手掛けていることも注目点に挙げられる。これにより、2社のライバルに当たる東宝の怪獣映画……いや、それ以外にもいろいろとケンカを売っているギャグもあるのだ。しかし、「ゴジラ FINAL WARS」にあった「やっぱりマグロ食ってるようなのはダメだな」のような珍セリフの域には至っておらず、ただただがっかりさせられた。

 具体的には「シン・ゴジラ」のラストの作戦を揶揄(やゆ)したとしか思えないセリフや、菊地凛子が「パシフィック・リム」のヒロインほぼそのまんまなおかっぱのヘアスタイルで登場したりもする。これらをリスペクトと取るか、中途半端なイジリと取るかでも、評価が大きく分かれるだろう。


大災害に立ち向かう人たちへの往復ビンタ

 そうした矢継ぎ早に繰り出されるギャグで常に気が遠くなるのだが、お話のほうもなかなかに壊滅的だった。比較対象として分かりやすいのは、Netflixで配信中の映画「ドント・ルック・アップ」だろう。

「ドント・ルック・アップ」予告編

 「ドント・ルック・アップ」では間もなく地球に衝突する彗星を巡って、まともに取り合ってくれない大統領、市井の人々の対立構造、はたまた利益優先のIT企業など、極端ではあるが未曾有の事態に対して「あり得そう」な人間の行動をブラックコメディとしてシニカルに描いていた。短絡的なギャグには始終せず、ドラマそのものに「恐ろしさも込みで笑ってしまう」ことこそが面白い作品だったのだ。

 この「大怪獣のあとしまつ」でも、大臣が問題を押し付けあったり、多発するトラブルに対して望みの薄い作戦を遂行するなど、怪獣の死体に対して右往左往する人間のおかしみは一応は描かれている。

 ただ、終始リアリティーレベルに問題があるため「そんなことするわけないだろ!」と思うことだらけ。主人公たちが顔を剥き出しの状態で怪獣の死体をつついて体液を浴びたり、環境大臣が怪獣の死体の上に乗って安全性をアピールするも命綱もつけていないなど、悪い意味でのバカバカしさのほうが際立ってしまっている。

 市井の人々の世論はTwitterらしきSNSで軽く提示される程度であり、「キノコ」のくだりに関してはもう科学的な考証なんてハナから度外視の、見た目のインパクトと短絡的なギャグのためだけに存在しているという塩梅。「シン・ゴジラ」のように「怪獣が現れたら本当にこうなるのかもしれない」とシミュレーションしたかのようなリアルさは、大きく欠けてしまっている。

 それらを100歩譲って誇張したギャグとして許そうとしても、分かりやすすぎる伏線のおかげで展開は読めてしまうし、安易な作劇を示す「デウス・エクス・マキナ」への言及は、それを正当化しているかのようで目も当てられなかった。

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