昔「ゲームは数千円で100時間遊べてコスパが良い」 → 大人になって時間の方が大事に 意識の変化をつづった漫画に反響(1/2 ページ)
「安い出費で長く遊べる」と「短時間で濃い体験ができる」、あなたならどちらが大事?
昔は「ゲームは価格のわりに長時間遊べてコストパフォーマンスが良い」と思っていたけれど、今となっては体験にかかる時間がネックに――。漫画家の沖島灯(@between0621)さんがTwitterに投稿した、ゲームに対する意識の変化をつづった漫画にさまざまな反響が寄せられています。
漫画はこれまでに1万件以上のいいねを集めており、これをきっかけにネット上では「ゲームはコスパが良いのか、それとも悪いのか」を巡ってさまざまな声が上がる形に。編集部では沖島さんに、いつごろからこうした意識の変化を感じるようになったのかなど、漫画を描いた背景を聞きました。
1作の体験に100時間かかるゲームは「コスパが悪い」?
沖島さんは以前、純粋にゲームを趣味としてプレイ。2時間の鑑賞に2000円ほどかかる映画と比較して、ゲームは5000円で100時間遊べる点を、(金銭的な)コスパが良いとしていました。
ところが、本格的に漫画を描き始めてからは、娯楽への向き合い方が「作品から何かを得よう」とするスタイルに。その結果、1作の体験に100時間もかかるゲームは「(時間的な)コスパが悪いのではないか」と、沖島さんの考え方は変わっていきました。それに伴い「2時間で濃密な物語が堪能できる」と、映画への意識も以前とは逆転しています。
年を経て立ち位置が変わるにつれ、重視するものもお金から時間へ――。価値観の変化を描いた漫画は、「年を食うと時間のかかるものは敬遠しがちになる」「より多くのインプットを求めると、この思考になるのは分かる」「楽しみたいものはたくさんあるのに時間がない」などと共感を呼びました。
その一方で、「娯楽をコスパで判断してしまうのは悲しい」との指摘も。他にも「映像作品と、インタラクティブ性のあるゲームを比較するものではない」「ゲームを映画などと比較するのであれば、妥当な対象は『スター・ウォーズ』や『アベンジャーズ』などの長編シリーズなのでは」など、さまざまな意見が上がりました。
大切なのは「楽しむときは全力で楽しむ」こと
編集部は沖島さんを取材し、コスパやゲームへのスタンスについて聞きました。
―― これまで遊んだ中で、金銭的な意味で特にコスパが良かったと感じたゲームは何がありましたか。
沖島:価格とプレイ時間で考えると「Nuclear Throne」です。見下ろし型のローグライク(ローグライト)シューティングゲームなのですが、1200円程度の出費で1000時間弱もプレイしていました。恐ろしいですね。
―― 逆に、時間的なコスパが良かったと感じたゲームはありましたか?
沖島:ありません。ゲームは本来コスパなど考えずに楽しむものだからです。そういう意味ではすべてのゲームはコスパが悪いのかもしれません。でも娯楽とは本来そういうものです。
―― 時間的なコスパを意識するようになったのはいつごろからですか。何かきっかけはありましたか。
沖島:創作活動をするようになり、脚本や演出を勉強しようと積極的に作品を鑑賞するようになってからです。創作の勉強という点においては、2時間という短時間で濃密な物語を鑑賞できる映画はコスパが良いです。それに比べると、勉強という点でゲームはコスパが悪いという考えになってしまっていました。
―― 「でもやり込んじゃう…」と漫画にはありましたが、それでも遊んでしまうゲームの魅力はどこだと思いますか。
沖島:没入感と達成感です。非日常な世界の一員となって冒険するワクワク感、絶対無理だろって局面を試行錯誤することによって突破したときの達成感と成長の実感――これがゲームの魅力だと思います。それらに対し、ゲームにおけるシナリオは、二次的なものかもしれません。
だから、シナリオを主軸とする映画と、体験を主軸とするゲームを比べるのは、そもそも間違いだったと今は思います。たくさん寄せられた意見を見て反省しました。
―― 今ではどんなスタンスでゲームと接していますか?
沖島:正直今はゲームをほとんどできていません。たまに無性にやりたくなってプレイしても、時間を浪費したと罪悪感にさいなまれてしまいます。
ですが、それは結局自分自身にメリハリがなかっただけだと気付かされました。仕事や勉強をするときは全力で取り組み、娯楽を楽しむときは全力で娯楽だけを楽しむ。そうすればクリエイターもコンテンツを純粋に楽しむことができるのだと今は思います。今後はそういうスタンスでゲームと接したいと考えています。
5000円で100時間遊べるゲームは「金銭的コスパが良い」のか、それとも「時間的コスパが悪い」のか――。恐らくゲーム好きにとっては永遠につきまとうであろう難題ですが、沖島さんの「結局自分自身にメリハリがなかっただけ」という考え方は、ゲームと長く付き合っていくうえで一つのヒントになるかもしれません。
「仕事や勉強をするときは全力で取り組み、娯楽を楽しむときは全力で娯楽だけを楽しむ。そうすればクリエイターもコンテンツを純粋に楽しむことができるのだと今は思います」と沖島さん。あらゆる娯楽は突き詰めれば無駄なものですが、どうせ楽しむなら全力で楽しむ方がいい。みなさんはゲームの「コスパ」について、どんなことを考えたでしょうか。
作品提供・協力:沖島灯(@between0621)さん
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