少女が卵を温める、イヤな予感しかしない北欧ホラー映画「ハッチング―孵化―」 最大の恐怖は息の詰まる“理想的な家族”(1/3 ページ)
ホラー版「ドラえもん のび太の恐竜」だった。
タイトルやビジュアルから「イヤな予感しかしない」と思ったあなたは、大正解だ。何がって、4月15日より公開されている、フィンランド製ホラー映画「ハッチング―孵化―」のことである。
実際に見てみると、大方の予想を超えて良い意味でしっかりイヤな気分にさせてくれる上に、日本人にとっても全くもって他人事ではない、身近な恐怖を鮮烈かつねっとりと描いてくれる秀作だった。さらなる魅力を記していこう。
少女の気持ちが卵の大きさとシンクロする恐怖
あらすじは単純明快、「12歳の少女が、森の中にあった卵を持ち帰り、家族に隠れてベッドで温め始める」というものだ、子どもがこっそりと卵を孵化させようとする様は、まるで「ドラえもん のび太の恐竜」のようでもある。
この「隠し続けた卵が異常に巨大化していく」ことが、思春期手前の少女の心情につながっているように見えることが重要だ。
何しろ、彼女は体操選手として日々練習に励み、かつての母がかなえられなかった夢を背負い続けるという、「母が望む通りの娘の姿でいようする」プレッシャーを抱えている。つまり、少女の押さえつけていた自意識、転じて反抗期だからこそ蓄積されていた不満が、卵の大きさにシンクロしているように映るのだ。
理想的な家族の動画を配信するグロテスクさ
娘の気持ちをちっとも顧みようとしない母の生きがいが、「笑顔に満ちた幸せな家族の日常を動画で発信すること」というのも意味深だ。
劇中では「心の闇」そのもののような恐ろしい画がいくつもあるが、実は劇中でもっともグロテスクなのは、この母親が配信する、過剰に加工し、汚いものを排除し、美しく理想的なものだけを取り出した、「絵に描いたような幸せな家族」の映像なのではないかとすら思わせる。
本作の物語を子育てのメタファーだと考えると、より分かりやすい。子どもに重いプレッシャーを与えたり、表向きには何も問題のない家族として振る舞ったりすることで、子どもの暗い感情や切実な気持ちに気付けずに、より大きな問題を家庭に呼び込んでしまうのは、世界中のどんな家族にとっても他人事ではないだろう。巨大化する卵というファンタジーが根底にありながらも、描かれているのは普遍的な家族の問題そのものなのだ。
そして、ここまで書いてきたことは、あくまで「卵がかえるまで」であり、まだまだ映画全体の4分の1程度。その後はネタバレ厳禁の予想外の展開の連続であり、「翻弄される恐怖」も存分に味わえる内容となっていた。「どこに行き着くのか」という物語の着地点は序盤こそ不明瞭に思われるかもしれないが、終わってみれば「なるほど」と納得できる方も多いだろう。
圧巻の俳優の熱演とビジュアル
本作は、その特異な設定に大きな説得力を持たせる、俳優の熱演と、こだわりのビジュアルも素晴らしい。
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「因果応報」のレベルが半端じゃなかった。
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