「映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝」レビュー 30作目の節目だからこその集大成(2/3 ページ)
はっきり言って、この取り違えが「実はそうじゃない」ということは見る前から分かりきっている。クレしんという強固な設定が土台にあるシリーズだからこそ、そこは覆されるはずがないのだから。
そうだとしても、その取り違えを告げられ困惑する過程での面白みがあったら良かったのだが、実際はしんのすけは単に誘拐され、忍びの里での忍者幼稚園では珍蔵のことを誰も知らないので「替え玉」的なサスペンスにもなっていないし、ひろしとみさえも観客と同様に「そんなわけがない」なテンションで行動している。強いて言えば、前述したちよめの「誰かに助けを求められなかった」心情にリンクはしているのだが、それ以外では取り違えが物語上でほとんど意味のない、予告編やあらすじで興味を引かせるギミック程度のものにとどまってしまっているのだ。
おいしい展開をたくさん詰め込んでいると最初に掲げたが、裏を返せば詰め込みすぎてやや散漫な印象もある。忍者、もののけ、取り違え、社会風刺といった種々の要素が、終盤ではあまり結びついていない印象もあり、全ての伏線を「青春」という大きなテーマに集約させた29作目「謎メキ!花の天カス学園」と比べると、パワーダウンしていると感じる部分もあった。
30年追ってきたファンへの大サービス
そんな不満もあるものの、クレしんファンにとっては開始5分で涙腺がゆるゆるになるサービスがある。それは「しんのすけが生まれた日」の、しかも「原作の再現」をしてくれることだ。これは、解禁されている冒頭映像でも見ることができる。
9作目「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」の「ひろしの回想」のシーンでも、しんのすけが生まれた日は描かれていたが、そちらでは雨が降っておらず、しんのすけの「名前の由来」も、ひろしが病室を間違えるくだりもなかった。もちろん「オトナ帝国の逆襲」も素晴らしい作品だが、この30作目の節目に、原作を尊重したしんのすけの誕生を改めて描いてくれることに、大きな感動があったのだ。
さらに、中盤では最初に掲げたように、もはや「ズルい!」「そんなの泣くに決まってるだろ!」と理不尽な文句を言いたくなるほど、クレしんファンこそが感涙できるシーンが待ち受けている。これもまた、30作目の節目だからこその大サービスといえるだろう。
次回作予告の衝撃
「30周年にして30作目の節目を迎えたからこその転換点であり集大成」と思えた理由が、もう1つある。それはエンドロール後の「次回作予告」だ。その衝撃度は、クレしん映画史上No.1だと断言する。
正直、期待よりも不安のほうが大きい。「この方向性」は同じく国民的人気アニメ映画がすでにやっているアプローチであり、そちらは表現や物語も含め、かなりの賛否両論を呼んでいたからだ。クレしんというコンテンツで「それだけはやってほしくなかった」と思う方もいるだろう。
だが、クレしん映画の近作は、常に新しいことにチャレンジし、より良い面白い作品にしようとする気概が、作品からも大いに伝わってくる。「もののけニンジャ珍風伝」が30作目のクレしん映画として「やり切った」集大成だからこそ、次回作でこのアプローチは納得はできるし、応援したいと心から思えるのだ。クレしんファンの1人として、楽しみにしている。めちゃくちゃ不安だけど。
(ヒナタカ)
関連記事
- 子どもの方が、作り手より「心がエリート」 映画「クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」高橋渉監督&脚本うえのきみこインタビュー
コロナ禍に生きる子どもたちへ伝えたいことがあった。 - クレしん映画の歴史を塗り替える大傑作 「謎メキ!花の天カス学園」レビュー
名作「オトナ帝国」の呪縛から逃れ、そしてアンサーを投げかけた大傑作。 - クレしん映画の新たな傑作「激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」レビュー 「オトナ帝国」「戦国大合戦」と単純比較するべきではない理由
「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」の素晴らしさをネタバレなしで語る。 - 「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」レビュー 国際情勢と奇しくもシンクロした、大切なメッセージ
スネ夫が史上最高に愛おしかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「クレオパトラみたい」と言われ傷ついた55歳女性→カット&パーマで大変身! 「本当にびっくり」「素敵なマダムに」
-
伝説の不倫ドラマ「金曜日の妻たちへ」放送から41年、キャストの現在→75歳近影が「とても見えません」と話題
-
余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
-
七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
-
野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
-
「あのお客さんに幸あれっ!」 小銭の出し方が完璧な“神客”にレジ店員感激 会計がスムーズになる配慮が参考になる
-
「こういうの好き」 割れたコップの破片を並べたら…… “まさかの発想”で息を飲むアート作品に 「すごいセンス良い」「前向きな考え」
-
50代女性「モンチッチみたいにしてほしい」→美容師がプロのワザを見せ…… 別人級の変身に「めっちゃお洒落」「すごい!」
-
「これが免許証の写真???」 コスプレイヤーが公開した“信じられない”免許証が話題 コスプレ姿との比較に「両方とも可愛いすぎる」
-
大型犬が18年間、ドアを開け続けた結果……そうはならんやろな驚きの末路に「どうしたらこんな風になるのよ」の声
- ネットで大絶賛「ブラウニー」にカビ発生 業務スーパーに7万箱出荷…… 運営会社が謝罪
- 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
- トラックがあおり運転し車線をふさいで停車…… SNSで拡散の動画、運転手の所属会社が謝罪
- 「ヤヴァすぎる!!」黒木啓司、超高級外車の納車を報告 新車価格は5000万円超 2023年にはフェラーリを2台購入
- そうはならんやろ “ドクロの絵”を芸術的に描いたら…… “まさかのオチ”に「傑作」の声【海外】
- 「ウソだろ?」 ハードオフに3万円で売っていた“衝撃の商品”に思わず二度見 「ヤバいことになってる」
- 「結局こういう弁当が一番旨い」 夫が妻に作った弁当に「最強すぎる!」「絶対美味しいビジュアル」
- “メンバー全員の契約違反”をライブ後に発表 異例の脱退騒動背景を公式が釈明「繋がり行為などではなく」
- 「言われる感覚全く分からない」 宮崎麗果、“第5子抱いた服装”に非難飛び……夫・黒木啓司は「俺が言われてるのかな?」
- 大沢たかお、広大プールを独り泳ぐ“バキバキ姿”が絵になり過ぎ 盛り上がる筋肉の上半身に「50代とは思えない」「彫刻みたい」
- “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
- 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
- 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
- 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
- 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
- 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
- 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
- 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
- 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
- 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声