過熱するポーカーブーム、アミューズメント店での高額プライズ提供、オンラインカジノ利用者急増に問題は? 弁護士と法務省を取材(3/4 ページ)
オンラインポーカーを国内でプレイすることについて
――国内から海外のオンラインカジノサイトやオンラインポーカーサイトにアクセスし、お金を賭けている人が増えているそうですが、これらの行為に問題点はないのでしょうか。
園田名誉教授:海外のカジノに足を運んで賭博を行ったとしても、海外で賭博という行為がすべて成立しているので、日本の刑法の適用外となるのですが、オンラインポーカーの場合は賭博行為の一部が日本で行われているため、日本の法律で裁くことは可能です。というのも日本の主権が及ぶ範囲で刑法が適用される「属地主義」が日本では採用されており、犯罪行為かその結果が一部でも日本で行われていれば日本の刑法が適用可能だからです。
――オンラインポーカーをプレイする様子を配信するYouTuberなどが、一般ユーザーに対してオンラインポーカーサイトなどへの勧誘を行い、その勧誘に対するフィーを運営会社から受け取るということも増えてきました。こうした行為に問題はあるのでしょうか。
園田名誉教授:まずオンラインポーカーをプレイして配信収益を得る行為については、先ほども申し上げたように国内からのプレイであれば法に触れるといえます。一方勧誘行為自体は道義的には問題ですが、犯罪とまでは言えないと思います。ただ、それが特定の個人に向けられた場合、刑法第61条の教唆、刑法第62条のほう助と取られる可能性もありますので、推奨できる行為ではありません。
現行法が抱える問題点
――警察が摘発を行うボーダーライン、ポイントみたいなものってあるのでしょうか。
園田名誉教授:犯罪には、能動的認知の犯罪と受動的認知の犯罪の2種類があります。
受動的認知とは、被害届などが提出され、警察が受け身になって犯罪を認知する場合でほとんどの犯罪数がこれに属します。
一方動的認知は、賄賂罪や薬物犯罪や売春等のいわゆる直接的な被害者が存在しない犯罪のことで、警察が積極的に犯罪を認知するというものです。近年若年層において大麻事犯が増加していると言われていますが、これは警察が若年層の大麻事犯の摘発を集中的に取り締まっているからなんです。
賭博に関する犯罪も能動的認知の犯罪に属すので、検挙に至るかどうかは警察の裁量が大きいです。
――賭博に関する法律が時代に合っていない、という声も聞かれますが園田先生ご自身はどう思われますか。
園田名誉教授:単純賭博罪は時代に合っていない法律だと感じます。 そもそも稼いだお金をいかに使うかは個人の自由です。寄付するもよし、馬券を買うもよし、なんだったら捨ててしまってもいいわけです。
ではなぜ公営ギャンブル以外で賭博をすると犯罪になるかと言えば、もともと賭博罪は「道徳・風俗に対する犯罪」だったからなんです。戦前や戦争中に兵士が命がけで戦っているのに、博打を打つとは何事かということで博徒が摘発されるケースが非常に多かったんですよね。
しかし終戦後に復興のために宝くじが発売されることとなり、公営ギャンブルが認められると、「賭博はモラルに反するもの」という考えが弱くなっていきました。
令和の時代に明治時代から同じ法律を照らし合わせるのは極めて不自然ですし、私自身刑法185条は削除してしまえばいいとさえ思っています。
ただし、刑法第186条の賭博場開帳図利罪に関しては暴力団の資金源にもなるものですし、私設馬券等のノミ行為についても同様ですから、賭場を開く権利を免許制で与え、その免許を持たずに賭場を開いたものに対して処罰するという法律に改正すべきと考えます。
せっかくポーカーが国内でブームになっているのであれば、その楽しさを損なわないよう、国会での法改正を急ぐべきだと思います。
法務省の見解は
ねとらぼ編集部はこうした取材を踏まえて法務省に対して「アミューズメントポーカーにおいて高額プライズが提供されることについての是非」および「海外のオンラインポーカーサイトを日本人が国内からプレイする場面が増えていることについて」の見解を尋ねました。
すると、法務省刑事局公安課より「捜査機関が収集した証拠に基づいて、個々に判断すべき事柄であることからお答えすることは差し控えます」との回答がありました。
“プライズ=あくまでもポーカー体験”と考え方で1000円程度のトロフィーなどを提供している店舗がある一方、現行法においては賭博行為が認められないため“上位大会への出場権が得られる”というサテライトシステムによって、成り立たせている店舗がほとんどなアミューズメントポーカー業界。
海外の大会でに日本人が活躍する場面も増え、海外に挑戦するプレイヤーも増えていますが、今後の国内での発展のためには、法改正について考える必要がありそうです。
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