「お産だ〜!!!」「(ええええ)」 “予定日一カ月前の出産”を淡々と描くレポート漫画に「感動した」「泣きながら大笑いした」の声(1/4 ページ)
初めての出産はわからないことだらけ。
自らの出産体験をユーモアを交えて描いたレポート漫画がTwitterで公開され、記事執筆時点で5000件超えのリツイートと3万1000件以上の“いいね”が寄せられて話題になっています。
投稿したのは漫画家の古山フウ(@fuu_furu_essay)さん。2021年に我が子を出産した時の様子を描いています。
「まさかこれが陣痛じゃないでしょ」予定日一カ月前の腹痛
出産予定日の1カ月少し前、友人とピクニックの約束があった古山さんは、おいなりさんを買いに出かけました。朝からおなかが痛かったものの、子宮筋腫合併妊娠症の経験があったこと、まだ予定日まで日があったことから、そのときは「まさかこれが陣痛じゃないでしょ」と思っていたそうです。
「出産は人生で一番痛い」と聞いたことがあったので、これまでに経験した痛みのランキングを考えることに。1位は気絶した生理痛、2位はハオコゼ(毒魚)に刺されたときで、ピクニックを予定していた朝の痛みは3位だったのだとか。しかし、後にこの痛みは陣痛だったことがわかります。古山さんは当日を振り返り「陣痛は痛みの強さよりも間隔の方が重要なので、少しでも『これは?』と思ったら産院に連絡しましょう」と呼びかけています。
ピクニックに出かけたものの、友人に体調のことを話すとすぐに産院に行った方が良いということに。すると子宮口が2センチほど開いており、そのまま入院が決まりました。ちょうどその日の朝に完成していた出産用の入院セット家族に届けてもらい、入院生活が始まります。
赤ちゃんが1日でも長くおなかにいた方がいいということで、陣痛を止める点滴をしながらおなかの張りを観察。点滴の副作用でものすごい動悸(どうき)を感じたそうです。
おなかの張りを測る機械は、赤ちゃんの心音や胎動を拾う構造。「ドンドコ」「バゴォン」と音が響き「こんなんで寝られるかーッ」と思っていたら、案外よく寝られたとのことです。よかった。
「子宮口8センチ開いてますね」突然始まったお産
一夜明けて痛みがなくなり、一度家に戻るという話になりました。一安心したのもつかの間、退院前の内診をしてみると子宮口が8センチも開いていたことがわかります。カーテンで仕切られた検診台の向こうで、「だめだ帰れないわコレ」「お産だ〜!」と産院の人たちがザワザワ。結局退院ではなく出産の方向に話が進みました。
大きな痛みもないまま、突然お産は最終局面に。長い廊下の向こうにある分娩室に向かいます。年配の助産師さんも、古山さんを内診しすぐに産まれると判断。準備をしている間、大きく広げたお股をライトで照らされたまま待つことに……。
しかし、このときにはなかなか陣痛が来ませんでした。一度分娩台を降りて待つことになりましたが、痛みが強くなる気配はありません。出産という戦いが始まらないという現実……。
そんな中、古山さんはふと自分の便意に気付いてしまいました。記憶をたどると、前回出たのは前日の朝。出産時に便が出てしまうことは少なくなく、助産師さんたちも慣れているはずですが「これは絶対大惨事になる」と感じ、トイレに行きたいと伝えます。
しかし、助産師さんからは「NG」の判断を下されてしまいました。赤ちゃんが産まれる直前になると、妊婦さんは「いきみたい」感覚になるもの。これは排便の時の感覚とよく似ています。赤ちゃんがトイレで産まれてしまっては危険なので、出産直前にはトイレに行けないことが多いそうです。
ただ、古山さんはこの感覚を「いきみたい」ではなく「出したい」方だと判断。10分ほどかけて必死に助産師さんに説明すると、「下剤を入れたら陣痛が進むかも」という話になり、トイレに行かせてもらえました。すっきりした結果おなかの痛みも強くなり、再び分娩台に上がります。
おなかの痛みがハオコゼの時より強くなってきたころ、子宮の収縮を測定している機械を見てみると数値がMAX(100)を振り切っていることに気が付きました。耐えられる痛みだったものの、「もう産まれるのでは?」と思い助産師さんに「めっちゃ痛いです!」とアピールをして再び内診。案の定子宮口は全開大に開いており、周囲がバタバタしはじめます。
破水がまだなので先生の許可を得て破膜(人工破水)。その瞬間、温泉のようにドーンと羊水が流れ出ました。
破水を終え「いきんでいいから」と声をかけられた古山さん。「ついにか」と思うと同時に、一番痛みを感じる瞬間にもかかわらず自分が耐えられていることに衝撃を受けます。古山さん、めちゃくちゃ痛みに強かったんだ。
いよいよ出産! と思ったら……
さぁ、今度こそお産の最終局面。周りの人に励まされて頑張っていると、駆け込んできた看護師さんから「先生がくるまでもう少しかかるので、いきむのをいったんやめてもらえます!?」という非情な声が。なんと直前で出産が寸止めになってしまいました。
謎の“いきみ中止タイム”に枕元へスマートフォンを持ってきてもらい、夫に連絡。陣痛が治まっている隙をみて「産まれるよー」「きてー」とメッセージを送ります。
その後やっと先生が来て、再びいきみが始まりました。ウワサのサンシャイン池崎いきみ(「いきむときはヘソの上のろうそくを吹き消すサンシャイン池崎になれ」という出産方法)を全力で実践します(関連記事)。
「頭が見えてきた」といわれて思い出すのは、おなかの中の赤ちゃんと一緒に過ごしてきた9カ月のこと。不思議な連帯感もあり感慨に浸っていると……ついに出産!
「おめでとうございまーす!」の声とともに見せられた赤ちゃんは「誰だコレぇ」と言いたくなるような未知の存在でした。
出産するまでは妊娠の延長線上に出産と育児があると思っていたものの、実際には突然、“超現実的に”目の前に現れた赤ちゃん。古山さんは育児がこんなに「超ゼロベースからスタート」するとは思っていなかったそうです。
赤ちゃんは2300グラム台と小さめで産まれたため、すぐ保育器に入ることに。産まれたてホヤホヤの状態での抱っこはかないませんでした。
「すいませーん、胎盤見ていいですか?」
出産の後に来るのが胎盤(赤ちゃんに栄養を送っていた組織)が出てくる「後産」。古山さんが胎盤を見てみたいというと「やめといた方がいいですよ」「内臓ですよ」と止められてしまいましたが、ついさっきまで自分の中にあったものを見ないで処分されるのが寂しく「どうしても見たい」と伝えた結果、見せてもらえることになりました。目にした胎盤は、思った以上の大きさ。「かっこええ〜でけえ〜」と写真を撮ります。
一番つらかった「後陣痛」
会陰切開のあとを縫合してもらい分娩室を出ると、そこには夫が。「産まれるよ」の連絡を受けて10分で駆け付けたものの「もう産まれました」と言われ、ずっと新生児室の我が子を見ていたのだとか。
病室に入って「産まれたねぇ」「産まれたねぇ」と言い合う二人。もうおなかに誰もいないのかと思うとちょっとさみしく感じたそうです。子どもが産まれた途端に体温調節がうまくいかなくなってしまったのか、暖房がついているのに寒いと感じた経験も。これは治まるのに半年くらいかかったそうです。
大きく広がっていた子宮が元の大きさに戻ることを後陣痛と呼びます。古山さんの場合は、陣痛より後陣痛がきつく、いつ終わるのか分からないこともストレスになったのだとか。痛みというのは「物理的痛み」に「精神的つらさ」が上乗せされて「総合的痛み」になると実感するのでした。
ちなみに、出産を終えた古山さんの「人生の痛みランキング」は2位に後陣痛、3位に出産がランクイン。1位は気絶した生理痛で変わらず、後に3位は「本気の母乳マッサージ」となりました。
「人の数だけある出産の、ある1人の話としてお楽しみいただけたら」
赤ちゃんは保育器に入っているため、母子同室ではない入院生活。会いたいときには長い廊下をゆっくり歩き、新生児室まで見にいきます。
小さな赤ちゃんを見ていると、ふと「私は今、この子の一番古い時間を生きている」と気付いた古山さん。たとえこの子が覚えていなくても、私がちゃんと覚えていよう…としんみりしていたものの、退院後の目まぐるしい子育ての日々の中では光の速さで記憶が消えていってしまいます。そのため、思い出を心に留めておくために漫画で残すことにしたといいます。
古山さんはこれまでいろいろな人に出産時の話を聞きましたが、誰1人として同じ経験をした人はいなかったとのこと。数ある出産の1人の話として楽しんでいただければ……と漫画を結んでいます。
リプライ欄には「すごい読みやすかったです」「受け止めたまま淡々と書かれるエッセイすてきでした」「世のお母様方は本当にすごい」といった声が。「来週予定日ですが頑張ります」という決意表明や、「おっぱいマッサージ痛いですよね」「私も今、光の速さで大きくなる幼児と乳児を育てています」といった体験談も寄せられ、注目を集めています。
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