映画「ゆるキャン△」レビュー 愛に満ちた「社会人物語」の大傑作(1/3 ページ)
環境は変わった、でも変っていない、みんながそこにいた。
「テレビアニメの劇場版」としても、「社会人物語」としても、最上級の作品を見届けた。7月1日より劇場公開されている映画「ゆるキャン△」が、そうだったのだ。
溢れんばかりのキャラクターへの愛と、そして優しいメッセージに触れ、終盤では涙がポロポロこぼれ落ちた。個人的に「トップガン マーヴェリック」をも超えて、2022年のベスト1候補の映画が本作である。「ゆるキャン△」を全く知らないという方でも、丁寧に紡がれた物語と、かわいいキャラクターが織りなすクスクスと笑えるコメディー要素、そして劇場のスクリーンで映える演出を大いに楽しめるはずなので、老若男女を問わず幅広い世代に見ていただきたい。
「その後」を描いた物語
テレビアニメ化だけでなくドラマ化もされた漫画「ゆるキャン△」は、個性豊かでかわいい女子高生たちが、タイトルさながらの「ゆるい」キャンプをしていく、優しくてほっこりとした印象が好評を博した作品だ。キャンプのノウハウもしっかりしており、現在に至るキャンプブームの火付け役にもなっていて、天真らんまんな女の子を筆頭とする仲間たちとのグループキャンプだけでなく、1人でいることを好む女の子によるソロキャンプの良さを示したことも画期的だったのではないか。
そして、今回の映画「ゆるキャン△」では、女子高生だったキャラクターたちは社会人となっている。原作でもある種の妄想のような形で、大人になった、またはおばあちゃんになった彼女たちの姿が描かれたこともあったが、今回の社会人の描写は「ガチ」。もしも社会人だったら…?といった「IF」と言うよりも、原作者のあfろも監修を務めた形での、「その後」を描いた作品なのだ。
おそらく、映画「ゆるキャン△」において、ファンが最も危惧していることは、その社会人という設定、そして完全な映画オリジナルストーリーであることだろう。原作はもちろんテレビアニメでもまだ「正史」として描かれていなかった、未来の話を先んじて映画で語ることはやぼともいえるのではないか、はたまたこれまでのキャラクターや世界観、もしくは「ゆるキャン△」という作品にあった良さが失われてはしないかと、不安に思っている方も多いと思うのだ。
だが、安心してほしい。そこには変わらないキャラクターの魅力があった上で、2時間をかけて語る物語としてのダイナミズムも作り出し、さらに後述する「ゆるキャン△」という作品の素晴らしさをも広げていくような、「映画でしかできない」「社会人という設定を最大限に生かした」、最適解を見事に提示した内容になっていたのだから。
「ゆるさ」がありつつも「甘やかさない」作劇
予告編などで示されている通り、今回の物語は「みんなでキャンプ場を作る」というシンプルなもの。これまでキャンプ場でキャンプを楽しむ側だった「野クル(野外活動サークルの略)」のメンバーが、忙しい社会人として働く傍ら、空いた時間を使って集まり、草が生い茂ったままの場所を、キャンプ場へと作り替えるまでの切磋琢磨が描かれているのだ。
特筆すべきは、そのキャンプ場作りの過程に「野クルらしいゆるさ」はあるものの「甘やかしていない」ことだろう。例えば、草を手作業で刈り取る作業は過酷だが、そんな作業もしっかりやりきる姿が描かれ、さらには効率的で負担をかけない作業方法も提案される。
さらに作業の過酷さは「腰が痛い〜!」というギャグに昇華され、バイクでの長距離移動も「相変わらずストロングスタイルだねぇ」と評されるなど、明るい彼女たちの「らしさ」が存分に描かれる。キャンプ作りにおけるさまざまな問題も良い意味であまり深刻にならず、やはり「ゆるキャン△」らしいほっこりとした印象のまま見られるのだ。
それでいて、キャンプ場作りをする上で、工事はもちろん経営の経験などない彼女たちには、草刈りや長距離移動以外だけではない、大小さまざまな困難が待ち受けていて、それもまた「実際そうなるだろうなあ」というリアルさで描かれている。
そもそも「山梨の観光推進機構に勤める千明が、数年前に閉鎖された施設の再開発計画を担当していた」ことからキャンプ場作りに着手できたという設定も、とても「ありそう」なものだ。原作も本格的なキャンプ描写が好評だったが、今回の映画でも徹底した取材を行ったことがうかがえるのだ。
個人的に泣きそうになってしまったのは、野クルのみんなが同じ日に集まれないことさえも、「とある自分たちの呼び名」を持って明るいギャグにしてしまっていること。「休みの予定が合わずなかなかいつものメンバーがそろわない」ことは社会人あるあるだが、それでも野クルのみんなはしょげたりなんかしない。思えば原作でも、メンバー全員が揃わなくても、それぞれの時と場合でそれぞれの楽しいキャンプを描いてきたので、この点でも「社会人になってもみんな変わらないなあ……」と、やはりほっこりとできるのだ。
関連記事
- 最高のアニメ映画「アイの歌声を聴かせて」の魅力を全力紹介 見たら幸せになれる20の理由
3月11日から期間限定先行レンタル配信がスタート! - 少女が卵を温める、イヤな予感しかしない北欧ホラー映画「ハッチング―孵化―」 最大の恐怖は息の詰まる“理想的な家族”
ホラー版「ドラえもん のび太の恐竜」だった。 - 「グッバイ、ドン・グリーズ!」レビュー 「よりもい」ファンの期待に応えた“疎外感”に向き合う傑作アニメ映画
和製「スタンド・バイ・ミー」であり、その先の飛躍もあった。 - クマが“数の暴力”より“知恵”で統治する 奇妙なフランス・イタリア合作のアニメ映画「シチリアを征服したクマ王国の物語」レビュー
クマさん版ベルセルクだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
【追記あり】夫に「油買ってきて」と頼んだのに、手ぶらで帰宅した理由はまさかの…… とんでもないオチに「やめてww」「久しぶりに大爆笑」
-
1歳息子の“はじめての寝落ち”が140万再生 10歳兄のやさしい行動に「なにこの平和でかわいい世界」「最高に癒やされる」と絶賛の声
-
「予言者いた」「先見の明」 大谷翔平選手&真美子さんの結婚を2021年時点で予言(?)している投稿が発掘され話題に
-
北海道内の移動距離を本州と比較したら…… 感覚がバグるマップ画像に「これが北海道」「大きすぎる」
-
生後1カ月の赤ちゃん「ぼく泣かないもんねっ」 うるうるおめめとへの字口が「はぁ〜たまらん!」「ぐぁぁああああっっ」取り乱すほどかわいい
-
「一番イチャイチャしているように見える」 大谷選手が公開した写真でドジャース山本由伸選手の“手つなぎ”?が話題に 「そっちに目が行く」
-
「妻の服を勝手に着て脱げなくなったムキムキ夫とデカワンコ」に爆笑の嵐 シュールすぎる状況が500万表示突破
-
“おしりが5日で変わる”トレーニング! 「明日からやるか」「1日1回だけなら続けられる」と累計3000万再生突破
-
大好きなボールを100個プレゼントされたときのワンコの表情に「放心ww」「引いてない?」 直視できない姿がSNSで話題
-
赤ちゃんが妙に静かだと思ったら…… 思わぬものへの“真剣モード”に笑顔になる人続出「たれたもちもちほっぺたまらん!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- 昭和時代に“無かった物”が写っている……? 細かすぎて伝わらない「未来から来たことがバレた写真」に6万いいね
- 「マジで汚い」「こんなもんです」 辻希美、“大散乱”のリビングと“新”キッチンの差を公開し共感の声集まる
- 双子の赤ちゃん、姉が全力でくしゃみして…… 被害にあった妹の反応に「生後3ヶ月でドリフのコントw」「めちゃどっちもカワイイ」と絶賛の声
- 「よくも病院に連れてきたな……」とにらむ猫、先生が来た瞬間 驚きの変貌に爆笑の声「これがほんとの猫かぶり」
- 急に片耳がたれたワンコ、慌てて病院にいった結果…… 「こんな可愛い診断結果初めて見たよw」「笑っちゃった」と反響
- 「何羽いる?」一見普通の“草むら”、よく見ると……? 思わず絶叫まちがいなしの1枚に「どっさりいるw」「まさに迷彩!」
- 店員に「この子は懐きませんよ」と言われたチンチラ、家に来て3日後…… 人を信じる姿に「愛が伝わったんですね」
- 元SDN48光上せあら、目を離した隙に……子どもが商品を触り“全買取” 「子連れママに厳しすぎないか?」
- 柴犬を子どものように育てた結果、人間みたいな行動をするようになった 何気ない幸せな日常に「完全に家族の一員」「全部が愛くるしい」
- 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
- パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
- “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
- 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
- 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
- 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
- 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
- “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
- 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」