ファミコンカセットをたたいて操作するゲームが斬新すぎる 故意にバグらせてタイムを縮める何でもありのRTAを体感(1/2 ページ)
実はこのファミコン、衝撃に反応するコントローラーとして機能しているだけで、ゲーム自体はPC上で動作。本当にバグらせているわけではないのでご安心を。
ファミコンのカセットをたたくと、画面が崩れてキャラクターがワープ! 古いゲームのバグめいた挙動を利用して攻略するゲーム「Bear Runner Any%RTA」が、注目を集めています。ゲーム機が衝撃でおかしくなる現象を、正式な仕様にしてしまうとは斬新すぎる。
同作は個人ゲーム開発者のしゅんて(@shunte_two)さんが手掛けた、RTA(リアルタイムアタック。ゲームクリアまでのタイムを競う)を疑似体験できる作品。8月7日開催のインディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン」に出展されました。Any%(何でもあり)レギュレーションのRTAでたまに見られる、ハードウェアに衝撃や熱などを与えてバグを引き起こす手法そのものを、ファミコンの筐体を使って正規のシステムに採用しています。
見た目はスーパーマリオブラザーズに似た横スクロールアクションゲームですが、大きく異なるのは主人公が自動で移動する点。障害物などもジャンプで越えてくれるので、放っておけば勝手にゴールインします。では、プレイヤーは何をすればいいのかというと、「適切なタイミングでカセットに打撃」。これにより発生する“バグ風の挙動”で主人公を障害物の向こう側へワープさせ、タイムを縮めるのがゲームの肝というわけです。
ただし、たたくタイミングを誤れば穴の上などにワープしてミスに。また、たたきすぎると本当にバグったかのように画面がフリーズし、実質ゲームオーバーとなります。
このユニークな作品は、会場でプレイしたhacha(@hacha)さんのツイートで注目を集めることに。「その発想はなかった」「仕様がノスタルジックで好き」「昔カセットをたたいて無敵にしてクリアしたゲームを思い出した」などと話題を呼びました。
なかには「どんな仕組みなんだ」「本当に壊れてクリアできなくなるのでは」と不安がる声も。そこで、編集部は作者のしゅんてさんに、ゲームの仕組みなど詳細を聞いてみました。
―― このゲームはどのような仕組みで動いているのでしょうか
しゅんて 筐体には秋葉原で3000円で購入したジャンク品のファミコン実機を使っています。振動センサーでカセットがたたかれた衝撃を感知し、arduinoというマイコンで信号を拾ってPCに入力を伝える、コントローラーの役割を果たします。つまり、このゲームはPC用で、実際にファミコン実機でゲームが動作しているわけではないのです(笑)。電源スイッチやリセットボタンも本体の部品を流用し、はんだ付けで配線してarduinoで入力を検出しています。
―― そもそも、この発想はどこから思いついたのでしょうか
しゅんて このゲームは以前、ゲーム開発イベント「1週間ゲームジャム」で発表した「Any% Glitched」をベースにしたものです。これは2021年の「回」というテーマのときに作り、総合順位1位をいただきました。
当時ゲーム実況やRTAといった文化が一般にも浸透してきたあたりで、いわば「ゲームそのものだけにとどまらない遊び方」が広がってきたように感じたんですね。そういうちょっとメタな面白さをゲームにできないかなと思って開発しました。
また、同じく個人ゲーム開発者のジェッドムさんというかたがいらして、筋トレグッズをコントローラーにするといった試みをしていて、とても面白いと思ったんです。同じ個人開発界隈(かいわい)ということもあり、強い影響を受けていると思います。
―― 開発期間や苦労した部分など教えてください
しゅんて 元のゲームは約1週間で開発したもので、今回のイベント用に作り直したのですが、それも1週間程度で終わりました。やはりコントローラー製作が一番大変で、arduinoの取り扱いもはんだ付けも初めてだったので、試行錯誤の繰り返しでした。
また、会場で不特定多数にたたかれる都合上、耐久性や操作感は大きな懸念点でした。念のため同じものを2台作って持っていったところ、案の定イベントの途中で反応がおかしくなり、急きょ予備品と交換してことなきを得ました。このあたりは次回以降の課題ですね。
―― 今後も展示される機会はありますか
しゅんて 今回参加した「東京ゲームダンジョン」が、また2023年1月に開催されるようなので出展を考えています。11月にも「デジゲー博」というイベントがあり、状況が許せばそちらでも展示したいですね。
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