「公権力による“暴力” そのものでは」 鳥取県の有害図書指定でAmazonが販売停止、出版元が抗議(1/2 ページ)

出版元の三才ブックス「鳥取県で本を販売することが、もはやリスクといえる事態」

» 2022年08月27日 20時20分 公開
[ケンゾーねとらぼ]

 鳥取県の有害図書指定を理由に書籍3冊がAmazonで販売停止されたことを受け、出版元の三才ブックスが県やAmazonとのやりとりを公開。ネット上で物議を醸しています。

 三才ブックスは指定理由の明確化を求め、県に対し有害図書を審議した議事録を求めましたが、返ってきたのは「会議概要」のPDF1枚のみ。不透明なプロセスに対し、「鳥取県で本を販売することが、もはやリスクといえる事態」と抗議しています。

 

 有害図書指定され、Amazonで販売停止されたのは、『アリエナイ医学事典』『アリエナイ工作事典』『裏グッズカタログ2022』の3冊。

有害図書指定 有害図書指定された3冊(三才ブックスのWebサイトより)

 有害図書指定は通常、自治体の管轄内でのみ効力を発揮するもの。ところが鳥取県では2021年10月、兵庫県宝塚市で2020年に起きたボーガンによる殺傷事件を受けて、県の青少年健全育成条例を改正。県外事業者が県内の青少年に対してインターネットなどを通じて有害な玩具刃物類、有害図書を販売することを条例の禁止対象としていました(販売した場合は30万円の罰金)。

 三才ブックスによると、2022年2月、書籍の著者がAmazonから消えていることに気付いて同社がAmazonに問い合わせると、販売停止となったのはこの鳥取県の条例が背景にあると説明されたそうです。これまでも東京都が定める有害図書指定が、ネット上を含む全国規模での影響を与えることはありましたが、他県の条例がこうした結果を招いたのは異例。

 三才ブックスではネット上の売上の9割がAmazonでのもの。そのためAmazon上で販売できないのは“死活問題”ですが、「18禁のアダルト商品としての再販」も断られ、紙・電子版共に販売停止の状態となっています。

 三才ブックスは続いて鳥取県に対し、有害図書を審議した議事録がインターネット上に公開されているかを問い合わせました。返ってきたのは、議事録として公開しているのは「令和3年度第1回鳥取県青少年問題協議会有害図書類指定審査部会(会議概要)」というPDF1枚のみとの回答。これには審議内容が書かれていません。三才ブックスは「インターネット通販での購入まで規制するという、他県よりも厳しい条例を制定しているのであれば、誰が見てもある程度納得できるようにしておくのが筋」と主張しています。

 回答に納得できなかった三才ブックスは鳥取県に対し、書籍中のどの箇所が問題となったのかなどを問い合わせました。この問いに対し、鳥取県の回答は、「明確な箇所ではなく、全体を通して総合的に判断しています」というもの。

 三才ブックスが開示請求して送られてきた資料によると、審査委員が図書類を閲覧して全体の内容から審査を行っており、審査理由などについては「委員の個別の発言は行われていない状況です」などと備考欄に記載されていたそうです。その後、記名投票で審査員5人中4人が「指定すべき」に入れたことで知事に指定するよう求めたという経緯でした。

 三才ブックスは、指定された『アリエナイ医学事典』について「前書きでニセ医学を批判し、50本の記事で知られざる医学史に光を当て、後書きで標準治療の重要さを述べていることから、多くの医療従事者からも支持されている」とし、『アリエナイ工学時点』については「刺激的でワクワクするように、キャッチなどを工夫して」際どく見せているだけで、3Dプリンターによる銃の作り方などは載っていないこと、『裏グッズカタログ2022』に載っているアイテムは「どれも普通にネット通販で買えるモノ」であるなどと主張して、指定に疑義を唱えています。

 その上で、今回の有害図書指定について「鳥取県内だけで勝手にやってる分には、最悪目をつぶるにしても、ネット通販にまで関わるとなると、鳥取県で本を売ること自体、もはやリスクといえます」と批判。

 また、「惰性で有害図書に指定していると思われるのは鳥取県だけではない」として、「作り手側には反論の機会を一切与えられないまま、一方的に『有害』だと決めつけ販売まで規制する。これはまさしく公権力による“暴力”そのものではないでしょうか」と主張しました。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/21/news032.jpg 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」 投稿者に話を聞いた
  2. /nl/articles/2501/21/news034.jpg 道端で拾った“松ぼっくり”をカットして、つなげていくと…… 度肝を抜かれる“完成品”が1300万再生【海外】
  3. /nl/articles/2501/22/news055.jpg 「これは惚れ直す」 高橋克典、妻の爆速“8分弁当”がおいしそう 「味がありますね」弁当箱に注目する人も【2024年の弁当・料理まとめ】
  4. /nl/articles/2501/21/news061.jpg 1人暮らし“1K9畳”の殺風景な部屋が…… 980万表示の“変身ビフォアフ”に驚がく 「これは職人」「理想的!!!」
  5. /nl/articles/2501/21/news135.jpg 「なんでうちだけダメ」 まひ&歩行困難の7歳りおなちゃん、初韓国旅行で“注意されて列並べず”……不憫に思う視聴者に母親「車いすだからという伝え方よくなかった」
  6. /nl/articles/2501/21/news077.jpg 「粋〜〜!!」 人からタッパーを借りたときは…… センス抜群の“返し方”に反響「これはうれしい」「まねします!」
  7. /nl/articles/2501/21/news094.jpg 息子は「BTSに激似」と話題沸騰 “カフェ店員”の25歳男性が両親公開 髪形維持で「毎日母親が散髪」
  8. /nl/articles/2501/20/news166.jpg 「これはひどい」 一番くじ「リコリス・リコイル」“衝撃のD賞”にファン爆笑 「見た目がやばい」「20センチ笑った」
  9. /nl/articles/2501/21/news021.jpg 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  10. /nl/articles/2501/19/news042.jpg 風呂上がりに偶然「牛乳を注ぐ女」になった人に反響 「ほぼそのままw」「盛大にふきだした」 投稿者に話を聞いた
先週の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  4. 鮮魚店で売れ残っていたタコを連れ帰り、水槽に入れたら…… ヤバすぎる光景に「こんなに可愛いなんて!」「笑ってしまった」
  5. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  6. 「まじで終わってる」 マクドナルド「エヴァ」コラボ品“高額転売”に嘆く声…… 「結局欲しい人が買えない」
  7. 母に「髪染めやピアスはダメ」と言われ続けた25歳東大女子、大変身を決意したら…… まさかの事態に「さすがにおもろい」「涙出てきた」
  8. 賞味期限「2年前」のゼリーを販売か…… 人気スーパーが謝罪「深くお詫び」 回収に協力呼びかけ
  9. 風呂上がりに偶然「牛乳を注ぐ女」になった人に反響 「ほぼそのままw」「盛大にふきだした」 投稿者に話を聞いた
  10. タンクトップ姿のパパ「昔はモテた」→娘は信じていなかったが…… かつての姿に衝撃走る「『トップガン』に出ていても納得」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」