「公権力による“暴力” そのものでは」 鳥取県の有害図書指定でAmazonが販売停止、出版元が抗議(1/2 ページ)
出版元の三才ブックス「鳥取県で本を販売することが、もはやリスクといえる事態」
鳥取県の有害図書指定を理由に書籍3冊がAmazonで販売停止されたことを受け、出版元の三才ブックスが県やAmazonとのやりとりを公開。ネット上で物議を醸しています。
三才ブックスは指定理由の明確化を求め、県に対し有害図書を審議した議事録を求めましたが、返ってきたのは「会議概要」のPDF1枚のみ。不透明なプロセスに対し、「鳥取県で本を販売することが、もはやリスクといえる事態」と抗議しています。
有害図書指定され、Amazonで販売停止されたのは、『アリエナイ医学事典』、『アリエナイ工作事典』、『裏グッズカタログ2022』の3冊。
有害図書指定は通常、自治体の管轄内でのみ効力を発揮するもの。ところが鳥取県では2021年10月、兵庫県宝塚市で2020年に起きたボーガンによる殺傷事件を受けて、県の青少年健全育成条例を改正。県外事業者が県内の青少年に対してインターネットなどを通じて有害な玩具刃物類、有害図書を販売することを条例の禁止対象としていました(販売した場合は30万円の罰金)。
三才ブックスによると、2022年2月、書籍の著者がAmazonから消えていることに気付いて同社がAmazonに問い合わせると、販売停止となったのはこの鳥取県の条例が背景にあると説明されたそうです。これまでも東京都が定める有害図書指定が、ネット上を含む全国規模での影響を与えることはありましたが、他県の条例がこうした結果を招いたのは異例。
三才ブックスではネット上の売上の9割がAmazonでのもの。そのためAmazon上で販売できないのは“死活問題”ですが、「18禁のアダルト商品としての再販」も断られ、紙・電子版共に販売停止の状態となっています。
三才ブックスは続いて鳥取県に対し、有害図書を審議した議事録がインターネット上に公開されているかを問い合わせました。返ってきたのは、議事録として公開しているのは「令和3年度第1回鳥取県青少年問題協議会有害図書類指定審査部会(会議概要)」というPDF1枚のみとの回答。これには審議内容が書かれていません。三才ブックスは「インターネット通販での購入まで規制するという、他県よりも厳しい条例を制定しているのであれば、誰が見てもある程度納得できるようにしておくのが筋」と主張しています。
回答に納得できなかった三才ブックスは鳥取県に対し、書籍中のどの箇所が問題となったのかなどを問い合わせました。この問いに対し、鳥取県の回答は、「明確な箇所ではなく、全体を通して総合的に判断しています」というもの。
三才ブックスが開示請求して送られてきた資料によると、審査委員が図書類を閲覧して全体の内容から審査を行っており、審査理由などについては「委員の個別の発言は行われていない状況です」などと備考欄に記載されていたそうです。その後、記名投票で審査員5人中4人が「指定すべき」に入れたことで知事に指定するよう求めたという経緯でした。
三才ブックスは、指定された『アリエナイ医学事典』について「前書きでニセ医学を批判し、50本の記事で知られざる医学史に光を当て、後書きで標準治療の重要さを述べていることから、多くの医療従事者からも支持されている」とし、『アリエナイ工学時点』については「刺激的でワクワクするように、キャッチなどを工夫して」際どく見せているだけで、3Dプリンターによる銃の作り方などは載っていないこと、『裏グッズカタログ2022』に載っているアイテムは「どれも普通にネット通販で買えるモノ」であるなどと主張して、指定に疑義を唱えています。
その上で、今回の有害図書指定について「鳥取県内だけで勝手にやってる分には、最悪目をつぶるにしても、ネット通販にまで関わるとなると、鳥取県で本を売ること自体、もはやリスクといえます」と批判。
また、「惰性で有害図書に指定していると思われるのは鳥取県だけではない」として、「作り手側には反論の機会を一切与えられないまま、一方的に『有害』だと決めつけ販売まで規制する。これはまさしく公権力による“暴力”そのものではないでしょうか」と主張しました。
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