共演声優からも過去に「いろいろな役ができる」 飯豊まりえ、「夏へのトンネル、さよならの出口」 ヒロイン役で抱いた“望み”とは(1/2 ページ)
「繊細な『寄せる』『寄り添う』ことが意外と得意なのかな」。
八目迷さんの小説を基にした劇場版アニメ映画「夏へのトンネル、さよならの出口」が9月9日に全国公開されます。
同作は、“欲しいものがなんでも手に入る”とうわさされる「ウラシマトンネル」を巡る青春SF。過去に起こったある体験から心に傷を負った主人公・塔野カオルがひょんなことからトンネルを発見し、芯の強さともろさを併せ持つ孤高の同級生・花城あんずと“共同戦線”を結び、その謎を追っていくというミステリアスな物語です。
切なさもただよう同作でヒロインのあんず役を務めたのが飯豊まりえさん。“ずっと憧れだった”という声優仕事への熱い思いや、作品を貫く大きなテーマのひとつでもある「壁を乗り越えること」についてうかがいました。
ヒロインの花城あんずは「絶対的存在」
―― 原作を読んだときの印象をまずお聞かせください。
飯豊まりえ(以下、飯豊) 何かを得るために何か代償があるという、ファンタジーだけども現実離れしていないところに引かれただけでなく、何でも欲しいものを手に入れられる「ウラシマトンネル」が、自分の過去や現在を変えてくれる存在だということにちょっと勇気を与えてもらえるなと。
それって「今が一番素晴らしいんだよ」「過去があったからこその今なんだよ」っていうメッセージなんですけど、すてきだなと思いました。
―― オーディションを受けた際の心境についてはいかがでしょう?
飯豊 声優のお仕事に憧れがあったので、作中のどの役でもやってみたくて。
その上であんずは、かなりクールに見えつつ繊細な部分もあったりして、自分とちょっと違うキャラクターな分、逆にとても演じやすかったです。
―― あんずは飯豊さんからみてどんなキャラですか?
飯豊 魅力的ですよね! みんなの注目を集められるという、絶対的存在というか気になる存在だと思います。私はその点全然かけ離れていましたけど(苦笑)。
―― では、飯豊さんはどんな高校生でしたか?
飯豊 急に姿をみせて「みんなで楽しもう!」って声を上げるんだけど、いの一番にいなくなっちゃうタイプの子でした。
みんなとずっと何かをするより、もうワンテンポ進みが早いというか、「もう完結した!」と思った途端、私は「よかった!」「じゃ!」ってその場からポンポン飛んでいくタイプです。
―― 高校時代の話になりましたが、「夏へのトンネル」はタイトル通り、ひと夏の出来事を描いた作品です。夏にまつわる思い出もうかがえますか?
飯豊 子どものころ、父と大好きなカブトムシを朝早く取りにいったことです。「(甲虫王者)ムシキング」というカブトムシのカードゲームがありましたが、私はカッコいいものが当時好きだったんですよね。
「実際に野生で生きているカブトムシが欲しい」っていうことで山へ取りにいったんですけどいなくて。でも、オオクワガタの幼虫を手に入れて孵化させて。
―― 昔から活発に外で遊ぶ子だった?
飯豊 いや、そうでもなかったですね! 1人っ子だったので、両親から「危ないから家の外には出ないでくれ」って頼まれていて。あんまり外に冒険しにいくことはなかったんですけど、そのときは家の敷地内でオオクワガタを放して自然に返してあげました。
共演者の鈴鹿央士さんは「塔野とはちょっと違う性格」
―― あんずはどのように演じましたか?
飯豊 あんずのせりふで好きなものを読みながら、「こういう声にしようかな」ってイメージしていきました。
声の調整に直前まで悩んでいたんですけど、「どいてくれる?」「世界は断絶されてるんだ」っていう、ちょっと冷たいせりふをどういうテンションで言うのが正解か、っていうのもひとつ決め手になりましたね。
―― 今のお話だと、声音や声量にもだいぶ気を遣っている?
飯豊 そうです。ラストから逆算してあんずの声を徐々に高めに調節する、といった工夫もしていました。
あんずは、物語の最後でウラシマトンネルに入るか選択を迫られるキャラ。塔野と寄り添うようにして物語を進んでいくさまを声で表現したかったので、とにかく細かくチューニングしていましたね。
―― 現場の雰囲気もうかがいたいです。初共演の塔野役・鈴鹿央士さんにはどのような印象を抱きましたか?
飯豊 不思議な方だなって思いました。「(役柄用の)衣装着ていないから気持ちが入らないかも!?」とか思ったことを口にする人で(笑)。塔野とはちょっと違う性格の方だな、面白いなと感じたんですよね。
―― 鈴鹿さんは飯豊さんから「教えていただいた」と。
飯豊 あのときはリテイクが何回もかかっていて、メンタル的にやりづらくなっちゃいそうだったので、「今は目の前の子に声を当ててるので、その向こう側の人に話すようにしてみたら、声のボリュームが変わってやりやすいと思いますよ」って言ったんです。そうしたらすぐにクリアしていました(笑)。
―― すてきな“共演”です(笑)。では、収録で印象に残っているせりふやシーンは?
飯豊 あんずが塔野に“床ドン”をして、「ねぇ、塔野くん。わたしにもあなたの見ている世界見せてよ」って言って、「味気ない世界だよ」って返されるシーンが大好きです。
この物語って登場人物がかなり少ないんですよね。恋なのか友情なのかはわからないけど、あんずと塔野の世界はきっと忘れることができない思い出なんだなっていう、はかない感じがとても青春だなと思いました。
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