【「ソウルハッカーズ2」否定寄りレビュー】取捨選択を間違えて差別化しきれず、女神転生とペルソナを継承するには力不足 ターゲティングも誤ってしまった(5/6 ページ)

» 2022年09月11日 18時30分 公開

取捨選択とターゲティングを誤ったまま生まれてしまった悲しき続編

 ゲームを遊んでみれば、叩かれている部分にも見るべきところは多い。悪魔を装備品として宿し、探索時には姿が見られるというアイデアは、サマナーと悪魔の存在を両方立てるうえでは画期的だ。しかし、戦闘ではサバト以外で悪魔の姿は見えず、アイコンの中に映るだけなので意味がない。ペルソナですら攻撃時には召喚をするので、悪魔の扱いとしてはペルソナに劣る。近年でも異例の扱いといえるだろう。総攻撃であるサバトも棒立ちから突撃するだけのものとなっており、演出としては「ペルソナ5」の総攻撃の足元にも及ばない。テンポも悪く結局はスキップしてしまうので、戦闘における悪魔の見せ方としては大失敗だ。

ソウルハッカーズ2 レビュー

 「ソウルハッカーズ2」自体は、普通のRPGである。現状は否定的なレビューでさえ、過少に評価されている節があると言っていい。これは、やはりターゲティングのミスだと思われる。例えば、本作が「デビルサマナー外伝 ソウルマトリクス」のようなまったく異なる新規シリーズとしてのタイトルであったなら、違和感は少なかったかもしれない。新規IPでソウルハッカーズと世界観がつながっていた、くらいの方が逆に口コミで良い評価を得られた未来もありえた。あくまでも想像にすぎないが、現状ほどの反発は受けなかったはずだ。

 本来は、女神転生やペルソナほどではない力の入れ具合となっているタイトルに、それらと同じ高みを求めるのは酷な話ではある。しかし、そうしたファン層を相手に商売してきた結果でもあり、宣伝も含めた煽り方とタイトルが、高みを求められる結果となった。世界的に市場を広げた今では、日本だけではなく世界中のアトラスファンにも注目され、似たような反応として失望が色濃く出ている。結局は、高いレベルで期待されていたことの裏返しでもあるのだ。期待に反して、続編としても新作としても応えきれていないものが出てしまった。海外のファンが見たかったのも、前作のイメージを残しつつ人だけではなく悪魔もしっかり取り扱い、そのうえで新たな芯を持っている「ソウルハッカーズ2」だったのだろう。

ソウルハッカーズ2 レビュー

 見た目だけで「ペルソナ5」のダイレクトなコマンドもマネしきれていない。視点が左から右へとせわしなく移り変わり、アップや回転を多用するカメラワークもあって、戦闘シーンが見づらかった。「幻影異聞録♯FE」のチームには、彼らなりの輝かしいセンスがあったはずだが、今回は「ペルソナ5」的なUIを採用したことでケンカしてしまったように感じる。

 作品のテーマ性も同様に古さを感じるものであり、「ソウルハッカーズ」が示した未来像よりも意図的に後退させた狙いは悪くない。だが、話はいささかチープだ。テキストの破綻はないので飲めることは飲めるが、相互理解と人間同士の戦いにスポットを当てた結果、よくある愛と、世界の破滅を止める話になってしまった。AIと魂の関係を描くにしても、詰めきれてない。前作を遊んだとは思えない内容だ。

 「PROJECT Re FANTASY」や今後のペルソナシリーズ、胎動したままの「世界樹の迷宮」などには期待しているし、指摘されがちな要素を濃くする余地のある「真・女神転生V」の完全版も出して欲しい。しかし、本作が今の評判のまま再評価されないのであれば、デビルサマナーの系譜はまたしばらく途絶えてしまうだろう。そして、次回作を出したとしても今回買った古参の大半が買わない可能性は高い。ソウルハッカーズは、終わってしまうのか。

 これは、ある意味で逃げとも取れる作品だ。一見するとペルソナシリーズのような大胆な変化をしたことが否定につながったと思われがちだが、それは半分だけ正しい。新しい柱となるものではなく、無意識のうちにコンプライアンスや「ソウルハッカーズ」ファンとの向き合いを避けたこと。神話や悪魔を根底に置かない妥協をしたことが、世界中のファンに見透かされたのだと思う。だからこそ、Steamを見ても海外ユーザーが日本のユーザーと同様の悲観的な意見を述べているのだろう。続編の発表に反発した人たちだけではなく、それでも信じたファンの大半を裏切る結果につながってしまった。単体としてそこそこ遊べる作品になっているのに、「ソウルハッカーズ2」としては理想的な形になれなかった。

ソウルハッカーズ2 レビュー キャラクターの掛け合いは楽しく作られているだけに、喜ばれる形で届けて欲しかった

 システム面で気になることはいくつかあるが、既に各所でレビューされているものを読めばいいので、今回はあえて詳しくは触れなかった。そうした欠点を考慮しても、本作は平均点以上は取れるものであり、単体の作品としてはクリアまで遊べて一定の支持は得られる作品だろう。キャラクターに愛着が生まれ、好きだという人が生まれる作品でもある。「ソウルハッカーズ」の続編として見ても楽しい、という層も確実にいるとは思うが、現状で批判を受けている理由はここまで述べた通りだ。私自身も、素直な気持ちを吐露すれば本作を続編として評価することは心情的に難しい。なおのこと、単体の新作JRPGとして自信を持って出して欲しかった。今よりも高い評価を得られたのは間違いないし、購入もせずに離れてしまった古参のファンも最初から違うものとして出されれば、もっとついてきたはずだ。新規ユーザーも、続編だからと尻込みせずに安心して手に取っていたかもしれない。

 女神転生は女神転生であり、ペルソナはペルソナだ。サマナーにはサマナーとしての進化を見せて欲しかった。だから、本作は良作であるが駄作でもある。評価できるが、評価できない。「ソウルハッカーズ2」ではあるが、「ソウルハッカーズ2」ではない。

 今の評判は芳しくないが、私自身の感想としては、この路線で出てしまった以上は新しくついたファンを大切にして欲しい。この業界は、しばしばリブートに失敗するとリブート後の作品までないがしろにされがちだが、新しく付いたファンは確実にいるのである。 自分たちの新路線でついたファンを大事にして、望まれている続編を出していくべきだろう。

ソウルハッカーズ2 レビュー

 「ソウルハッカーズ2」を冷静に評価すれば、単体のキャラクター重視なRPGとしてはそれなりに良くできている。悪魔合体とバトルを楽しむ作品としても、合格点以上の内容だ。それがなぜ、ここまで反発を受けてしまったのかといえば、今までに書いてきたことが原因だと思われるし、日本だけではなく海外ユーザーからも同じような意見が見られるのは、冒頭でも文中でも述べた通りである。根本的な続編の作り方や、リブートとして見たときのプロダクトの失敗が作品全体の評価をかすませているのだとすれば、それはとても悲しいことだ。

 金子一馬氏の悪魔イラストと、先人が残してきた神話という遺産を現実の問題と絡め、初代の「女神転生」から連なる派生作品を作るのが、アトラスの魅力でもある。もちろん、それ以外のタイトルも良い出来だが、ソウルハッカーズに関しては少なくともそうだった。

 だとするならば、やはり文化としての神話や自分たちのIPに対して慎重すぎるほどに慎重なリサーチを重ねて欲しかった。それは金子一馬氏のデザインによる悪魔だけではなく、歴史を通して作られてきた神話や悪魔という概念そのもの、そして過去作のIP自体も指している。私は今回のキャラクターも単体として嫌いではなく、伏線を回収した「ソウルハッカーズ3」が出ても遊ぶのは間違いない。しかし、現状のように「下僕よ!」と言わせてしまう感覚では心配だ。このチームの次回作は、敵やIPをオリジナルにするべきかもしれない。

 今回は、なぜ「ソウルハッカーズ2」の評価が荒れているのかに鑑みて、レビューというよりも分析に務めた。本作は普通で平凡な作品から人によっては良作、というのが平均的な評価だろう。普通といわれることは間違いではない。この規模の作品も必要であり、新人の育成も兼ねているのであれば、既存の要素を使って慣れることも重要だ。作品単体として狙い通りにできているとすれば、私は評価したい。今回の開発に関わったスタッフにも、次の作品で評判をリベンジしてもらいたいものだ。ただ、今回は1万円という価格を出したときの満足度につながるかといえば難しく、また「ソウルハッカーズ2」を期待していた層への裏切りに近い形であったことは否定はできない。マーケティングで女神転生とペルソナに継ぐ作品であることを押しすぎていたために、それらに及ばないことも指摘されがちである。

 一番の問題は、「デビルサマナー」及び「ソウルハッカーズ」の続編かどうかよりも、本作独自の個性を確立できていないために微妙な立ち位置になっていることだ。ペルソナを遊びたいなら「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」をオススメする。新しい女神転生を遊びたいなら「真・女神転生V」をオススメするし、シナリオの薄さが気になる人には「真・女神転生IV」と「真・女神転生IV FINAL」がオススメできる。この戦闘システムが良いなら、それこそ「幻影異聞録♯FE Encore」や「真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY」のほうが楽しめるだろうし、完成度も高い。「ソウルハッカーズ2」は素材を生かせず、コンプライアンスに気を遣いすぎているのか、作品全体から情熱を感じられなかった。現実を反映したリクエストの内容や、街のNPCの会話などには魅力を感じたのだが本体が迷走している。

 本作は、人によって良作になり得るそれなりの作品ではあった。単品のRPGとして見れば、私自身も好きな部類に入る。しかし、これは別の会社で作れる内容であるのも事実だ。デビルサマナーとしての世界観と、ソウルハッカーズとしての神話はそこになかった。それでは、アトラスの作品として重きを置いている古参の層としても、もっと出来が良い別の会社のRPGを購入すれば良くなってしまう。新規のユーザーに取っても、取捨選択の間違いとターゲティングのズレがゲームそのものの過少評価につながっているとすれば、返す返すも残念だ。いっそのこと、最初から悪魔すら出さずに振り切っていれば良かったのかもしれない。本作は単独でそこそこに楽しめるRPGではあったが、続編として考えると失格でしかなかった。せめて、新規に振り切ったものであったなら。それが本稿の結論である。

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