アニメ界の“最終防波堤” 「作画崩壊」でトレンド入りした演出家に直撃インタビュー 「作画監督が10人とかいるアニメは無駄の極み」(2/5 ページ)
アニメーターA これはどういった趣旨のインタビューなんですか?
佐々木 アニメが「作画崩壊」する裏側と、佐々木が何者なのかについて。
アニメーターA 佐々木さんはアニメ界の“最終防波堤”ですよね。佐々木さんのところに来るような仕事って、そもそもこちらに依頼された時点でスケジュールがやばいし、もう全然まともな人が集められてないし、落ちそうなんですよ。
佐々木 そうですね。
アニメーターA だから、普通の人は受けないんです。なぜなら金銭的にも、仕事の負担的にも自分に得がないし、評判としてもマイナスにしかなりませんから。でも佐々木さんは制作さんがかわいそうだからと言って受けてしまう。
作画が明らかに崩れているアニメは、多くの場合スケジュールとか腕のあるアニメーターを集められなかった制作側に問題があったのかなと、見る人が見れば思うんです。でも、ツイートとかのイメージもあって誤解されがちですよね。
――今回の取材もツイートがきっかけでした。
佐々木 俺はアニメ業界のあり方に対して疑問を持って見てもらいたい、考えてもらいたいと思っているので、Twitterではあえてああいう書き方をしているんです。
――確かに、ツイートだけ見ると「なんでこんなこと書いてるのに、仕事が減らないんだろう?」という疑問が湧いてきます。
アニメーターA 佐々木さんの横で実際の仕事を見ているから分かるんですが、佐々木さんは基本的に使えない素材を修正しまくっているんです。
作品のできが「マイナス100万」ぐらいだったのを「マイナス10万」ぐらいまで引き上げるのは外部からは見えづらいんですが、一緒に仕事をした監督やスタッフからはそこをちゃんと評価してもらってます。
――素材を修正しまくってるということですが、以前「修正用紙2枚しか入れなかった」みたいなツイートもしていたような……。
佐々木 ありましたね。あのときはせっかく描いた修正指示が、ほとんど全て無視されてしまったんです。ラッシュチェックで「おかしいぞ」となり、データを確認してみると、修正が2カット分だけスキャンされていて、他はスキャンされてなかった。
――大事故では?
アニメーターA 演出の「こういう風に直してほしい」という指示が無視されてしまうと、当然、仕事が全部なかったことになってしまう。
佐々木 他社の制作さんのスキャン漏れでそういう事態になってしまったんです。しかもあのときは時間がなかったので、満足なリテイクもできず、そのまま放送されてしまった。ということを踏まえて、皮肉って「修正用紙2枚しか入れなかった」とツイートしたんですけど(笑)。
アニメーターA 視聴者がツイートだけ見たら、「こいつサボッててけしからん」ってなるのでは?
――なってましたね……。
佐々木 “真実”っていうのは、自分の手で掴まなきゃいけないんですよ……。こんなツイートをするようになったのにもきっかけがありまして。4年ほど前、演出処理を13本抱えていて、「本当に、もう仕事を振らないでくれ」と祈る気持ちでツイートをしたんです。
――え、13本?
佐々木 知り合いから頼まれたタイトルが重なってしまったんですよね。
――アニメってそんなに同時に作れるものなんですか……?
佐々木 普通なら3本で血反吐を吐いて、4本で「もう無理……」ってなると思います。
【※演出処理を13本】他のアニメ演出家にも取材したところ「制作スケジュールがバッティングしていたら2本同時でも厳しい」とのことだった。
――……検索すると本当にやってますね。ほぼ週イチで佐々木さんの演出回が放送されている。
佐々木 なぜあれができたのか、今となっては自分でも謎です。と言いつつ、今も似たペースで仕事をしているんですが。
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