アニメ界の“最終防波堤” 「作画崩壊」でトレンド入りした演出家に直撃インタビュー 「作画監督が10人とかいるアニメは無駄の極み」(3/5 ページ)
――13本抱えてたときは、どんなスケジュール感で仕事をされていたんですか。
佐々木 気合と根性と無心ですね。
――力技だ……。
佐々木 連日打ち合わせがあるから、やるべきことが自動的に逆算されていくんです。昼12時に音響スタジオでアフレコ。16時に打ち合わせ。夕方スタジオに戻ってくると、そこから朝まで演出チェックの作業。徹夜で作った素材を使い翌日の昼13時からカッティング。それが終わると同じ編集スタジオですぐにまた別作品の作業があったり。そこからさらに夜まで打ち合わせが続いたりします。
――聞いてるだけで具合が悪くなってきました。
佐々木 この感覚を説明するのは難しいんですが、カレンダー上でスケジュールがミサイルのように飛び交うイメージなんです。「マーキングが落ちる」→「作打ちはこの日できない」というように、日程がミサイルのように飛び交って、パズルゲームのようにこれしかないという形に組み上がる。
それでもイレギュラーな事態は起こるもので。結果、カッティング会場で5社ぐらいの制作が腕組みしながら「この後の佐々木のスケジュールをどうしましょうか」と話し合いを始めたりする。
――手塚治虫の原稿待ちをする編集者たちみたいな光景が……。
佐々木 そんな仕事量だから、あの頃は「中身を見ずにマルをつけてるんじゃないのか」と噂されたりもしました。そう言うなら「マルを付けるだけでいいから13本やってみろ!」と言いたい(笑)。
アニメーターA 名義貸しの人と違って佐々木さんは手を動かして、レイアウトも描いてますからね。中身を見ないでマルを付けるだけだと、そもそも放送できませんよ。本当にそんなことをしたら次の仕事が来ないどころか、たぶん途中で降ろされます。アニメ業界にいれば、それが絶対に通用しないのは分かるはずなんです。それでも、実情と異なる噂が先立ってしまう。
このあいだもスケジュールが放送まで1カ月とちょっとしかない状態で半パート助けてくださいと相談されて、悪い噂を耳にしていたその作品の監督が「こんなところに頼まなきゃいけないほど切迫した状況なのか……」と肩を落としていたらしいんです。でも、上がりを見て「あれ?」と。
――噂と違って、ちゃんとしてるじゃないかと。
佐々木 「Twitterは辞めたほうが良いですよ」とは言われましたけどね(笑)。それでも放送後、現場の経緯を全く把握してない、良い生活をしている上役から「なんだこの佐々木ってやつは!」と文句を言われることはある。
「年収4000万円」の真相
――良い生活と言えば、先日はクルーザーに乗った写真を上げてましたね。
佐々木 世間的には我々が予算を抜いてハワイでバカンスみたいなイメージになっているようですよ?
アニメーターA またわざわざ煽るようなツイートを……。
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