映画「貞子DX」レビュー 令和の貞子は“謎解きとコメディー”と“仮面ライダーっぽさ”がマシマシに(2/3 ページ)
しかも、「謎解き」という若者から人気を得ている要素を中心に据えている。例えば「なぜ呪いのビデオを見てから24時間で死ぬのか?」といった問いに対して、論理的な思考を持って立ち向かう様が面白いし、その先に導き出した答えは思いの外「なるほど!」納得できるものになっていた。そういえば、もともとの「リング」も呪いを解くために情報を集めて奔走する、謎解きものだったではないか。そういう意味では、この点は新機軸ではなく今までのシリーズの面白さを踏襲しているのだ。
何より、冷静沈着に謎を解こうとする小芝風花と、ボケボケだが助手的に彼女に付き添う川村壱馬との、ホームズとワトソン的な探偵コンビの活躍そのものが楽しい。そもそものホラーと謎解きとコメディーという組み合わせを成功させたのも、医療とゲームという全く混ざらなさそうな題材をしっかり融合させた「仮面ライダー エグゼイド」を手掛けた高橋悠也の手腕によるところが大きかったのではないか。
ちなみに、二宮直彦プロデューサーは脚本開発のポイントについて、「いわゆるZ世代の若い人たちが貞子に遭遇したらどういう反応をし、どういう会話をするだろうという想定のもとに開発を進めた」「怖い部分は怖く、やりとりではコミカルな部分もあるという、新たな貞子映画を目指した」と語っている。小芝風花と川村壱馬による漫才的なやりとりも、やはり若い世代を意識したものなのだろう。
さらに余談だが、1998年の「リング」ではビデオを見てから死ぬまでの期間は1週間だったが、2016年の「貞子VS伽耶子」では2日だった。そして、今回の「貞子DX」では1日と、時代を経て短くなっていて、それは「ネット社会においてはたった1日で世界中に情報が広がっていく」ことも反映した設定だという。
その時短テクニックに沿うように、今回の「貞子DX」がタイムリミットが刻一刻と迫る中でテンポ良く展開する、見せ場満載の内容になっていたのも、娯楽のタイパ(時間的効率)を気にする若者のニーズに合わせた結果なのかもしれない。
貞子以外でちゃんと怖かった
ここまでコメディー成分や仮面ライダーっぽさや謎解き要素を紹介してきたが、肝心の「貞子」要素が気になっている方も多いだろう。
正直に言って、貞子の存在感は前述した主人公チームのキャラが濃すぎるせいもあって、薄くなっていると言わざるを得ない。だが、個人的にはそれも肯定的に捉えている。それは、路線変更された要素それぞれがちゃんと面白かったということはもちろん、「貞子以外」でしっかり怖いシーンがあることだ。
ネタバレ厳禁のサプライズもあるので詳細は伏せておくが、「呪いのビデオの映像」と「死ぬ前に見えるもの」に本気で戦慄したのだ。シリーズの中でも新機軸のアイデアであるし、斬新な恐怖を演出していることを素直に称賛したい。ちゃんと貞子が活躍するシーンもあるし、良い意味で笑うべきか怖がるべきか分からなくなる「笑いと恐怖が紙一重」なシーンも好みだった。呪いのビデオがSNSで不特定多数に拡散され、誰もが日常的に加害者にも被害者にもなり得るというのも今ならではの恐怖だろう。
何より、これだけアイコニックな存在になり、あれだけ怖かった「リング」のクライマックスはパロディーの対象となり、今ではTwitterで地震のたびにみんなを心配してくれたり、YouTuberデビューも果たしたりしと、もはや萌えキャラ化している貞子を、令和の今に純粋な恐怖の対象としてみることは不可能ともいえる。だからこそ、コメディー成分マシマシの路線変更ぶりも、貞子以外でしっかり怖いシーンを作り出したことも、ある種の開き直りとしてものすごく「正しい」と思えるのだ。
とはいえ、それなりに「おいおい」と思う部分もあったりする。例えばキャラクターたちは「科学的」な見地に基づいて謎解きをしているはずなのだが、その推論そのものが「別にそれ科学じゃなくね」と思う場面もあった。そもそもの論拠もまあまあフワっとしていたり、不確定すぎることを不用意にSNSへ書き込んだりするので「本当にIQ200かよ」と思う一幕もあった。
しかし、それらにツッコむのも野暮ではあるだろう。今回の「貞子DX」は小中学生も大好きな謎解きや仮面ライダーっぽさへと舵を切った内容なのだから、大人も童心に帰ったつもりで無邪気に楽しむことをおすすめする。なお、エンドロール後に遊び心というよりも良い意味でのちょっとした悪意も込められたおまけもあるので、お見逃しなく。
(ヒナタカ)
関連記事
- 過激派ヴィーガンをハムに加工して売るヤバいフランス映画「ヴィーガンズ・ハム」レビュー
マウント取り放題の知り合い夫婦も最悪(褒め言葉)だった。 - 交通事故より無能な上司が大問題! “社畜”が1週間をループしつづける悪夢的コメディ映画「MONDAYS」レビュー
社畜は意外とポジティブシンキング。 - インド版「ドラゴン桜」かと思ったら殺し屋との受験戦争(物理)が勃発する映画「スーパー30」レビュー
これでも実話が9割。 - さかなクンをのんが演じてさかなクンが不審者を演じる映画「さかなのこ」レビュー
性別の違いはささいなことである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
-
「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
-
「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
-
餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
-
「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
-
毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
-
放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
-
脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
-
父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
- 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
- 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
- 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
- コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
- 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」