一部の人に“ぶっっっ刺さる”ハサミに「素晴らしい」「かっこいい!」の声 SFやファンタジー世界にありそうな魅惑的デザイン(2/3 ページ)

» 2022年11月04日 19時30分 公開
[谷町邦子ねとらぼ]

――いつごろからハサミ作品を作るようになったのでしょうか。

佐藤 芸術系の専門学校に入学し、木工・ジュエリー・金属工芸を学ぶ中で特にジュエリーに没頭しました。着用のことなど考えずに大胆な装飾やサイズ、石留めなどをしているうちに、ファッションアイテム作りが自分に合っていないことに気付き、金属造形美を追及する表現媒体としてハサミを作ったことがきっかけです。

――なぜハサミに魅入られたのでしょうか。

佐藤 ハサミにこだわる理由は日用品として道具としてそばに置けること、装飾的なハサミの作家がほとんどいないから、などの理由でした。しかし、作り続けるうちにハサミは他の道具には無い印象が共通認識として宿っていることに気付きました。

 例えば美容室で満たされる変身願望の象徴であったり、はたまた思春期に前髪を切って取返しが付かなくなったことであったり。手軽に使える一方で、慎重に扱わなければ取り返しがつかない緊張感があり、ハサミに対して幼少期に一定の恐怖を抱くことも多いのではないでしょうか。ハサミの理想と恐怖の表裏的なイメージが、私にとってこれ以上ない表現媒体となっているのだと思います

――ハサミ作品を1つ仕上げるのにだいたいどれぐらいの時間をかけていますか。

佐藤 デザイン、試作の過程で200〜500時間かかっています。デザインが決まってからの製作は1丁あたりおおよそ50時間前後だと思います。

――持ち手の成形はどのように行っているのでしょうか。

佐藤 独学で学んだ「3DCAD」と3Dプリンタの技術を使って試作を10〜100程度作り、使用感やデザインのテストをします。デザインが決まったら専門学校で学んだジュエリー製作の技術を生かし、型の製作から金属の流し込み、磨きまでを行います。

――ハサミにはどのような材質を使用していますか。

佐藤 持ち手には真ちゅうや銀を使用しています。特に銀は高価ですが、古いものだと紀元前から発掘されているものもあり、長い期間形が残った実績が好きで使っています。

 刃には「SUS440C」と呼ばれる、一般に刃物として使用されているようなステンレス材を使っています。非常に高価な作りになっていますが、なるべく長い期間実用性と形を保ちながら受け継がれていくことを願って作っています。


 

 インタビューから、佐藤さんがもともとジュエリーを手掛けていたことや、ハサミにまつわるイメージを汲み取りながら創作することで、繊細かつ魅惑的な作風につながっていることがうかがえます。1本あたりにかける時間は数百時間以上と、手間とこだわりがたくさん詰まっているからこそ、量産が不可能な逸品となっているのでしょう。

 佐藤さんは制作したハサミの写真をTwitterで公開。作品は「BASE」で販売もしています(現在は全て品切れ中)。

 さらに、北海道のジュエリー作家が集まる「職人力展」で、作品の展示販売も実施。ギャラリー「美術紫水」にて常設展示として取り扱われています。

作品画像提供:佐藤聖也(@f9u6yq)さん

(谷町邦子 FacebookTwitter

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