えっ、マルーンちゃうやん! 「白い」阪急電車もあった!? 100年以上続く阪急電車の「マルーンカラー」、本気すぎるこだわりとその裏側(1/5 ページ)

大好き「マルーンの疾風(かぜ)」! 阪急ヘビーユーザーの筆者が、阪急電車の“隠れ”魅力を愛でていきます。

» 2022年11月03日 14時00分 公開
[二木繁美ねとらぼ]

 皆さんは「マルーンの疾風(かぜ)」と呼ばれる電車をご存じでしょうか。大阪、京都、兵庫を結ぶ阪急電車はマルーンカラーの美しい車体色が特徴。関西の人はもちろん、ファンは全国にいて、1981(昭和56)年から毎年「マルーンの疾風(かぜ)」という阪急電車の車体が主役の公式カレンダーが発売されているほどです。

マルーンカラーの車体色が特徴の阪急電車 マルーンカラーの車体色が特徴の阪急電車(写真:二木繁美、以下同)

 阪急電車で走行している車体は全てこのマルーンカラー。1910(明治43)年の開業時に運行された1形車両から変わることなく続いているというのだから驚きです。そして、走る電車はいつ見てもツヤツヤでキレイです。汚れが目立ちやすい濃いめの色調なので、約5日に1度は洗車してこの美しさを保っています。

 なぜマルーンカラーの阪急電車は「いつもきれい」なのか。以前、阪急電鉄の平井車庫でその理由を聞きました(関連記事)が、今回はさらにじっくりと「裏」まで。阪急電鉄正雀車庫・工場で「マルーンカラーの阪急電車が愛される秘密」を覗いてきました。

今回は、阪急電鉄の正雀車庫・工場へ潜入〜! いざ、阪急電鉄の正雀車庫・工場へ潜入〜!
マルーンカラーの車体色が特徴の阪急電車 今回は、阪急電鉄の正雀車庫・工場へ潜入〜! え? 「白い」阪急電車もあったの……!? 担当者さんも「ほとんど見ることがない」という救援の方向幕を発見 塗装のためクレーンで持ち上げられる車体。そこに流れる「禁じられた遊び」のメロディー。ちょっと哀愁 マスキングを施して塗装へ! 塗りたての車両とドッキング 塗りたては「ツヤ」が違います シートも定期的に全貼り替えし、「きれい」を保つ スリスリしたくなる手触りのアンゴラ山羊の毛を用いたモケット生地 リングバネ、ウレタン、スポンジ、表生地とかなり複雑な構造 生地をピンと伸ばしながら、吊りマウントで固定する。すべりを良くするために、手を濡らして作業するのだそうです とまどう素人。丁寧に教えていただきました 阪急電車にはシートの裏にもたくさんの愛が隠されている 座面にも、柔らか快適感触のための工夫がある 新京阪鉄道時代の10形車両。ボディーは木製 100形の運転台。レトロな感じがしびれます 保存車両も、もちろんメンテナンスを清掃を行い、「きれい」を保っている 「京とれいん 雅洛」のミニチュア ミニチュアといっても、このサイズ。大迫力 筆者が一番好きなパーツ、パンタグラフ 最新型車両の1300系(左)と、現役車両で最も古い「3300系」(右) 3300系は、梅田〜嵐山間で行楽シーズンの臨時急行としても運転された

「マルーンちゃうやん!」え? こんな色もあったの? 「白い」阪急電車を発見!

 今回行われた正雀車庫プレス向け見学会は、「阪急電車のデザイン」が2022年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞したことを記念して行われました。評価理由は、開業以来継承されてきた「マルーンカラー」と品の良い車両の内装。学生時代から社会人、そしてフリーランスライターとなった今もずっと愛用している「阪急ヘビーユーザー」の筆者も自身が普段使う電車が認められ、とても誇らしい気持ちです。

え? 「白い」阪急電車もあったの……!? え? 「白い」阪急電車もあったの……!?

 工場に入ってまず目に付いたのは、え? まさかの「白い」阪急電車? 「えっ、マルーンちゃうやん!」となって絶句してしまいました。白い車両なんてあったの……?

 阪急電車のマルーンカラーは、国が定める4年、8年ごとの定期検査(重要部検査、全般検査)のたびに「塗装を全てはがして、塗り替える」のだそうです。正雀工場はそんな大規模検査を行う場所です。

 大規模検査で車両の全機器類を取り外し、全般にわたり細部まで検査と整備を行います。一両あたり約7日掛けて行うそうです。そして、色も全塗り替え。手作業で前の塗装をはがし、小キズや凹凸があればもれなくパテで埋めて、サンディングして、表面をビシッと滑らかに補修します。この下地処理を手間を掛けて丁寧に行う理由はもちろん、再塗装するマルーンカラーの美しさのため。この白(というか、薄いピンク)は、マルーンカラーを塗る前の下地処理時の色でした。よかった(?)。

担当者さんも「ほとんど見ることがない」という救援の方向幕を発見 「救援」の方向幕になっていた! 工場の説明員さんでさえ「ほとんど見ることがない」というレア表示だった

 部品が外され、台抜きされ、クレーンゲームのように釣り上げられる大きな車体。そこには「禁じられた遊び」のメロディーが流れ、何だか哀愁がただよっていました。ほかにもルパン三世やインディー・ジョーンズのテーマも流れます。これは、「今どの機械が稼働しているのか」を現場作業者が感覚的に分かりやすくする安全作業のための工夫と取り組みでした。へぇぇ。

塗装のためクレーンで持ち上げられる車体。そこに流れる「禁じられた遊び」のメロディー。ちょっと哀愁 塗装のためクレーンで持ち上げられた車体。そこに流れる「禁じられた遊び」のメロディー。ちょっと哀愁。そして、めっちゃ上まで行くやん……

 阪急電車のマルーンカラーは、「基準板」を用いて色調が変わらないよう入念な検査を経て塗られます。その基準版も、経年による色あせを防ぐため2年に1度塗り替えます。ブレない……! 使う塗料は耐候性に優れるウレタン塗料。洗車機へ入れるような感じで動かしながら塗料を吹き付けます。約24時間かけて自然乾燥したら完了です。

マスキングを施して塗装へ! マスキングを施して「マルーンカラー」再塗装へ!

 塗装を終えたら再度クレーンで運ばれ、別工程で点検を終えた台車とドッキング。電気系統をつないで動作試験をし、8両そろえば試運転となります。

 塗装したての車両はやっぱり輝き方が違いますね! 駅で、見るからに「よりピッカピカ」な車両に出会ったときは「新車か工場から出たてかのどちらかですね」とのことですよ。

塗りたての車両とドッキング ツヤツヤに再塗装された車体と台車をドッキング
塗りたては「ツヤ」が違います ピッカピカ! 塗りたては「ツヤ」が違います
       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/29/news009.jpg 高校生のときに出会った“同級生カップル”→「親に頼らん!」と必死に貯金して…… 19年後、現在の姿に反響
  2. /nl/articles/2501/31/news120.jpg 大野智さん巡る悪質“逮捕デマ”巡りSTARTO社が発信者情報開示請求 「株式会社嵐」代表は「一呼吸おいてよく考えて」と心境吐露 
  3. /nl/articles/2501/31/news085.jpg “自分を醜い”と感じてきた49歳女性が…… “別人級の大変身”に感動 「衝撃的だった」「信じられない」
  4. /nl/articles/2501/30/news026.jpg 普通の折り紙1枚を、パタパタ折っていくと…… プレゼントにぴったりな美しいアイテム完成に「すげぇつくりたい」「かわいい」
  5. /nl/articles/2501/31/news185.jpg 大谷翔平、“消防士たちとの5枚のショット”に反響 「どの消防士より屈強」「これは期待の新人」
  6. /nl/articles/2501/31/news014.jpg 手芸で余った大量のハギレ → あまさず活用する“驚きの方法”に反響 「ナイスアイデア」「考えたこともなかった」
  7. /nl/articles/2501/31/news050.jpg 「許されると思ってんの?」 スマホのアラームを設定→翌朝…… “絶望の通知内容”が430万表示 「ほんとこれ」
  8. /nl/articles/2501/30/news047.jpg 「死ぬほど笑ったw」 “ほろよい”限定デザイン → 人気ゲームの“例のロゴ”に見えると話題に まさかの公式も反応「ほろよい うま」 投稿者に話を聞いた
  9. /nl/articles/2501/31/news019.jpg “部屋が汚すぎて”彼氏に振られた女性→1人孤独に片付けを続け、600日後…… まさかの光景に「感動しました」
  10. /nl/articles/2412/09/news077.jpg 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議