スイッチバックとループ橋がそろう「鉄道漫画の聖地」! 絶景「奥出雲」、熱烈スイッチバック鉄が企画した「鉄道マンガ展」に行ってきた:月刊乗り鉄話題(2022年11月版)(2/5 ページ)
「鉄道マンガ展@奥出雲」 あえて奥出雲でやるファン納得の理由
鉄道マンガ展なんて、鉄道ファンにとっても漫画ファンにとっても魅力的ですよね。
でも、開催するならば、東京・大阪・名古屋……のような、人がたくさん来そうな大都市や全国の都道府県で巡回する方が成功しそうじゃありませんか。
なぜ奥出雲なのでしょう。この漫画展は「木次線・出雲坂根スイッチバックをなんとかするプロジェクト」の第1弾として企画されました。漫画の紹介だけではなく「出雲坂根スイッチバックの魅力を広めたい、来てほしい」が主目的なのです。うん、鉄道ファンはそれで納得です。
その出雲坂根スイッチバックは出雲坂根〜三井野原間にあります。奥出雲おろちループと木次線のスイッチバックは隣同士なんですね。鉄道のスイッチバックと道路のループ、ここには両方あります。こんなところ、日本ではここしかありません。世界でも珍しいかも?
「木次線・出雲坂根スイッチバックをなんとかするプロジェクト」の代表者は江上英樹さん。漫画「鉄子の旅」シリーズを企画・連載した漫画誌『月刊IKKI』の元編集長です。江上さん自身も漫画に登場していたので、ファンにはおなじみの方ですね。
江上さんはスイッチバックが大好き。スイッチバック鉄。コミケでスイッチバックの薄い本を販売しちゃうくらい好き。全国の約150カ所のスイッチバックを集めた本も制作中だそうです。だから、木次線のスイッチバックも大好きです。
スイッチバックとは、主に標高差のある山岳区間で鉄道を走らせるのに用いる方式のことです。列車、昔の蒸気機関車の時代は特に、車重が重い上に登坂力が乏しく、急勾配を登れません。そこで緩やかな勾配を組み合わせて、上から見るとジグザグに、行ったり来たりしながら進むよう線路を敷きます。
ループ線も緩い勾配で標高差を対処する方法の1つですが、スイッチバックのほうが小さな面積で、水平の折返し地点に駅を設置できる利点があります。
ただし運転は面倒くさい(笑)。そこはループ線の勝ち。そして「乗りもの好き」にとって、面白さは互角!
木次線のスイッチバックは「三段式」といって、途中で2回も折り返します。とても珍しい事例なんです。もうね、スイッチバックの王様といってもいいです。
ところがこのスイッチバックは今、存続の危機にあります。理由は木次線が赤字だから(関連記事)。スイッチバックを走る観光列車「奥出雲おろち号」も来年2023年度で終了(関連記事)。これはマズい。マズいのです!!
そこで江上さんは考えました。「木次線出雲坂根〜三井野原間のスイッチバックは日本最大級のスイッチバックとして、絶対に失うことがあってはならない存在。鉄道マンガ展を通じて、さらに多くの方に出雲坂根の魅力を届けたい」。そして、「みんなで作ろう」と開催資金をクラウドファンディングのREADYFORで募集。必要資金の120万円を10日で達成し、ネクストゴールを180万円に増額。全国から支援が集まって、最終的には205万2000円の支援が集まりました。
何と江上さん、準備のために木次線の出雲横田駅近くに部屋を借りて住んでいます。木次線の定期券を買って、毎日スイッチバックで通勤しているとか。うらやましいな。
それでは第一会場を観てみましょう。壁には代表的な鉄道マンガの原画が並びます。「鉄子の旅 三代目」「終電ちゃん」「RAPID COMMUTER UNDERGROUND」「さんてつ」「鉄道少女マンガ」「カレチ」「阿房列車」「月舘の殺人」「鎌倉ものがたり」「汽車旅行」があります。
おお、ドラえもんの「のび太の模型鉄道」もありました。鉄道そのものがテーマではなくてもいいみたい。鉄道の情景が良い名作ばかり。うむむ、読んでない作品も多い。メモしておいて後日ちゃんと読もう。
中央のテーブルには単行本が置いてあり、触ってOK、読んでOK。鉄道を主題にした漫画って、こんなにあるんですね。テーブルの中央にナノゲージ(ナノブロック)で作った列車が走っています。運転もできます。もちろん奥出雲おろち号もありましたよ。良くできてる。このセットを売ればいいのに。
鉄の彫刻美術館は入場無料、この第一会場も入場無料です。道の駅 奥出雲おろちループの駅長さんによると、遠足や修学旅行のバスも休憩で訪れるそうです。トイレ休憩だと思ったらマンガ展がやっていて、みんなびっくり。うれしいだろうなあ。いいぞいいぞ、みんな鉄道を好きになりましょうね。
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