スイッチバックとループ橋がそろう「鉄道漫画の聖地」! 絶景「奥出雲」、熱烈スイッチバック鉄が企画した「鉄道マンガ展」に行ってきた月刊乗り鉄話題(2022年11月版)(2/5 ページ)

» 2022年11月15日 12時00分 公開
[杉山淳一ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

「鉄道マンガ展@奥出雲」 あえて奥出雲でやるファン納得の理由

 鉄道マンガ展なんて、鉄道ファンにとっても漫画ファンにとっても魅力的ですよね。

鉄道マンガ展@奥出雲チラシの裏面、企画者の江上さんが熱いコンセプトが語る 鉄道マンガ展@奥出雲チラシの裏面、企画者の江上さんが熱いコンセプトが語る
鉄道マンガを集めた珍しい展覧会。テーブルのサンプルは読んでOK 鉄道マンガを集めた珍しい展覧会。テーブルのサンプルは読んでOK

 でも、開催するならば、東京・大阪・名古屋……のような、人がたくさん来そうな大都市や全国の都道府県で巡回する方が成功しそうじゃありませんか。

 なぜ奥出雲なのでしょう。この漫画展は「木次線・出雲坂根スイッチバックをなんとかするプロジェクト」の第1弾として企画されました。漫画の紹介だけではなく「出雲坂根スイッチバックの魅力を広めたい、来てほしい」が主目的なのです。うん、鉄道ファンはそれで納得です。

 その出雲坂根スイッチバックは出雲坂根〜三井野原間にあります。奥出雲おろちループと木次線のスイッチバックは隣同士なんですね。鉄道のスイッチバックと道路のループ、ここには両方あります。こんなところ、日本ではここしかありません。世界でも珍しいかも?

木次線スイッチバックと奥出雲おろちループ(地理院地図を加工) 木次線スイッチバックと奥出雲おろちループの様子(地理院地図を加工)

 「木次線・出雲坂根スイッチバックをなんとかするプロジェクト」の代表者は江上英樹さん。漫画「鉄子の旅」シリーズを企画・連載した漫画誌『月刊IKKI』の元編集長です。江上さん自身も漫画に登場していたので、ファンにはおなじみの方ですね。

 江上さんはスイッチバックが大好き。スイッチバック鉄。コミケでスイッチバックの薄い本を販売しちゃうくらい好き。全国の約150カ所のスイッチバックを集めた本も制作中だそうです。だから、木次線のスイッチバックも大好きです。

出雲坂根駅はスイッチバック1段目と2段目の折返し地点にある 出雲坂根駅はスイッチバック1段目と2段目の折返し地点にある
出雲坂根駅の線路 スイッチバックのある出雲坂根駅付近の線路

 スイッチバックとは、主に標高差のある山岳区間で鉄道を走らせるのに用いる方式のことです。列車、昔の蒸気機関車の時代は特に、車重が重い上に登坂力が乏しく、急勾配を登れません。そこで緩やかな勾配を組み合わせて、上から見るとジグザグに、行ったり来たりしながら進むよう線路を敷きます。

 ループ線も緩い勾配で標高差を対処する方法の1つですが、スイッチバックのほうが小さな面積で、水平の折返し地点に駅を設置できる利点があります。

 ただし運転は面倒くさい(笑)。そこはループ線の勝ち。そして「乗りもの好き」にとって、面白さは互角!

出雲坂根から備後落合行きに乗ります 出雲坂根から備後落合行きに乗る
スイッチバック3段目から下を見ると、木々の間に出雲坂根駅がチラリ スイッチバック3段目から下を見ると、木々の間に出雲坂根駅がチラリ
奥出雲おろちループと三井大橋が見えた。橋の右端が道の駅 奥出雲おろちループと三井大橋が見えた。橋の右端が道の駅

 木次線のスイッチバックは「三段式」といって、途中で2回も折り返します。とても珍しい事例なんです。もうね、スイッチバックの王様といってもいいです。

 ところがこのスイッチバックは今、存続の危機にあります。理由は木次線が赤字だから(関連記事)。スイッチバックを走る観光列車「奥出雲おろち号」も来年2023年度で終了(関連記事)。これはマズい。マズいのです!!

三井野原駅で降りる。ここから道の駅まで徒歩15分 三井野原駅で降りる。ここから道の駅まで徒歩15分

 そこで江上さんは考えました。「木次線出雲坂根〜三井野原間のスイッチバックは日本最大級のスイッチバックとして、絶対に失うことがあってはならない存在。鉄道マンガ展を通じて、さらに多くの方に出雲坂根の魅力を届けたい」。そして、「みんなで作ろう」と開催資金をクラウドファンディングのREADYFORで募集。必要資金の120万円を10日で達成し、ネクストゴールを180万円に増額。全国から支援が集まって、最終的には205万2000円の支援が集まりました。

 何と江上さん、準備のために木次線の出雲横田駅近くに部屋を借りて住んでいます。木次線の定期券を買って、毎日スイッチバックで通勤しているとか。うらやましいな。

 それでは第一会場を観てみましょう。壁には代表的な鉄道マンガの原画が並びます。「鉄子の旅 三代目」「終電ちゃん」「RAPID COMMUTER UNDERGROUND」「さんてつ」「鉄道少女マンガ」「カレチ」「阿房列車」「月舘の殺人」「鎌倉ものがたり」「汽車旅行」があります。

 おお、ドラえもんの「のび太の模型鉄道」もありました。鉄道そのものがテーマではなくてもいいみたい。鉄道の情景が良い名作ばかり。うむむ、読んでない作品も多い。メモしておいて後日ちゃんと読もう。

第一会場は一部の展示物を除き撮影OK 第一会場は一部の展示物を除き撮影OK
冒頭と逆方向、奥から入口を見た様子 冒頭と逆方向、奥から入口を見た様子

 中央のテーブルには単行本が置いてあり、触ってOK、読んでOK。鉄道を主題にした漫画って、こんなにあるんですね。テーブルの中央にナノゲージ(ナノブロック)で作った列車が走っています。運転もできます。もちろん奥出雲おろち号もありましたよ。良くできてる。このセットを売ればいいのに。

テーブルの本は読んでOK テーブルにある漫画は読んでもOK!
鉄道漫画の名作たくさん! 鉄道漫画の名作たくさん!
ナノゲージを初めて知りました。うまくできてます ナノゲージを初めて知りました。うまくできてます

 鉄の彫刻美術館は入場無料、この第一会場も入場無料です。道の駅 奥出雲おろちループの駅長さんによると、遠足や修学旅行のバスも休憩で訪れるそうです。トイレ休憩だと思ったらマンガ展がやっていて、みんなびっくり。うれしいだろうなあ。いいぞいいぞ、みんな鉄道を好きになりましょうね。

常設展示は彫刻家の下田治氏の作品展 常設展示は彫刻家の下田治氏の作品展

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/16/news007.jpg まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  2. /nl/articles/2411/16/news013.jpg 自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
  3. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  5. /nl/articles/2411/16/news014.jpg 330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
  6. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  7. /nl/articles/2411/11/news056.jpg 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
  8. /nl/articles/2411/17/news038.jpg 58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
  9. /nl/articles/2411/17/news004.jpg 「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
  10. /nl/articles/2411/16/news077.jpg 大谷翔平、インスタ最新投稿で活躍シーンのハイライト公開 一瞬映る“妻・真美子さんと母・加代子さんの笑顔満開ハイタッチ”に注目
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた