東海大学の附属高中で100万円超の未払い賃金か 無期契約になる前日に雇い止め 元教師「当時は非常勤講師にタイムカードがなかった」(1/2 ページ)
記者会見を取材しました。
東海大学の付属校「東海大学付属浦安高等学校・中等部(東海大浦安)」で、未払いの賃金が発生していた問題などについて、元教員が記者会見で明らかにしました。
私学教員ユニオンが実施した記者会見によると、Aさんが東海大浦安で非常勤講師として働いていたのは2017年4月〜2022年3月の5年間。119万2297円の未払いの賃金(私学教員ユニオンらの算出によるもの)のみならず、無期契約になる前日に雇い止められるという問題も発生していたといいます。
未払いの賃金が100万円超発生か
Aさんは授業以外にも、授業の前にはプリントを印刷するなど準備をしたり、前後には生徒からの質問に対応したり、放課後には生物部の顧問を務めたり、さまざまな付随業務を担っていました。にもかかわらず、Aさんには法律上の休憩時間が十分に付与されないばかりか、早出・残業分や休日出勤分、休憩の未取得分の賃金が適切に支払われませんでした。
背景にあったのは労務管理上の問題です。Aさんの給与は授業ごとの「コマ単位」で支払われており、働き始めた2017年4月当時、非常勤講師はタイムカードを使用できませんでした。団体交渉を経て、2022年1月に出退勤ソフトが非常勤講師に導入されてもなお、「その日最初の授業の30分前から打刻してください」「その日最後の授業終了後30分以内に打刻してください」などと指示されていたため、客観的な労働時間は把握されなかったのです。
Aさんはこのような状況を踏まえ、出勤時と退勤時に時刻が分かる時計の写真を撮影していました。これらの記録などによって算出された未払いの賃金が、119万2297円に及ぶというのです。なお、これら未払い賃金については、2022年1月に船橋労働基準監督署が法違反を認定して是正勧告を出していますが、いまだに支払われていません。
無期契約になる前日に雇い止めに
ところが、問題は未払いの賃金だけにとどまりませんでした。非正規労働者を保護する観点から、2013年4月に施行された「無期転換ルール」が実質的に無視される、という問題も発生しています。無期転換ルールとは、「同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換される」というものです。
Aさんは2017年4月から年単位で更新を繰り返しており、2022年4月1日には無期転換権が発生する予定でした。しかし、その前日に東海大浦安から雇い止めされてしまったのです。Aさんと学校側の契約書にはすでに、契約を更新する場合でも最長で5年であるという趣は記載されていました。Aさんはこの点について契約時には認識しておらず、弁護士らは問題点をこう指摘しています。
「学校側は雇用が5年を超えると、無期転換権が発生することは認識しています。無期転換ルールにもとづいて無期転換をさせないために、上限を5年間にしていると言わざる得ないのではないか」(弁護士/日本労働弁護団本部事務局次長の市橋耕太さん)
「無期転換ルールは『5年間も継続雇用していれば、無期転換しても良いのではないか』という目的で施行されました。今回のケースではむしろ、この制度が雇用を打ち切ることに利用されています。まったくもってあってはならないことです。正面からケンカを売るような運用だと言えます」(弁護士/日本労働弁護団常任幹事の嶋崎量さん)
生徒を裏切るような発言をせざるを得なかった
会見で度々指摘されたのは、このような非正規雇用の教員が抱える問題は東海大浦安にとどまらないということです。現在、公立学校では全体の約2割、私立では約4割が非正規雇用と言われています。私学教員ユニオンの佐藤学さんは「将来の見通しも立たないので、目の前の生徒に集中することもできず、教育の質の劣化にもつながるという現状があります」と課題を挙げています。
団体交渉の過程では「あの先生、騒ぎすぎだよね。こんなに騒ぎにしちゃってね」という声もあったものの、Aさんは非常勤講師の“使い捨て”にして利益を上げるという教育業界の構造について、誰かが声を上げるべきだとの認識を示しています。また、生徒に「来年の理科、生物を選択したら、先生に教えてもらえますか?」と聞かれた際のことを振り返り、こう語りました。
「2022年3月31日で雇い止めされた私は、後1日だけ勤務すれば、無期契約転換権が発生する状態でした。(『来年の理科、生物を選択したら、先生に教えてもらえますか?』と聞かれた)生徒には、『さぁどうだろう。楽しみにしててね!』ということしかできませんでしたが、内心申し訳ない気持ちでいっぱいです。生徒を裏切るような発言をしているわけですから」(Aさん)
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