「完全禁煙」ルール無視の客に旅館の女将が怒りのツイート 「強い悲しさと憤り」「部屋は消臭作業のため数日は使えない」(1/2 ページ)

ツイートを投稿した、山形県の西屋旅館に話を聞きました。

» 2022年12月19日 16時14分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 白布温泉(山形県)の西屋旅館が、完全禁煙のルールを破った利用客がいたことに怒りのツイートを投稿し、大きな反響を呼んでいます。編集部は同館の女将(おかみ)を取材し、詳細を聞きました。

西屋旅館 西屋旅館では、電子タバコ含め完全禁煙
西屋旅館 禁煙の旨は、公式サイトのトップページにも明記されている

 同館は貴重なかやぶき屋根を残す老舗旅館。建物の古さと、2000年に白布温泉で起きた火災により、同じかやぶき母屋の旅館が全焼した惨事に鑑みて、館内も敷地内も完全禁煙と決断しています。

西屋旅館 消臭中の客室

 禁煙の注意は公式サイトや予約ページ、客室でも示されているにもかかわらず、ある日使用後の客室に喫煙の痕跡を発見。強いにおいを残して去った利用客を、女将は「その部屋は消臭作業のため数日は使えない」「凍える空気の中掃除してくれたスタッフに心の中でわびなされ!!」「禁を犯してなお喫煙が止められないのであれば、どうかうちでなくちゃんと喫煙可能なお宿で寛いで」と強く批判しています。

 禁煙の意図を説明するため、客室案内にはくだんの大火災の写真を掲載し、協力をお願いしていたとのこと。「その思いさえ伝わらなかったのも内心ショックでした」と女将は語ります。

 投稿は広く拡散され、「禁煙と知って宿泊したのなら宿のルールに従うべき」「同じ喫煙者として恥ずかしい」「宿のかたはもっと怒っていい」と、共感の声を呼びました。宿泊施設関係者からは、「禁煙の客室で吸われたら、壁紙などににおいが染み付いて処理が大変」「ルールを明記したうえで、清掃費などを請求するべき」といった声も寄せられています。

 編集部は女将を取材し、当時の状況や今後の対応作など、詳しい話を聞きました。


―― Twitterでの投稿に踏み切った理由をお聞かせください

西屋旅館 当館が完全禁煙に踏み切ってから2年半ほどがたちましたが、年に数回、こうして客室でタバコを吸ってしまうかたがいらっしゃり、困っておりました。今回はお客様が部屋を出てすぐ片付けに入った段階で、タバコのにおいや、うっすらと残る煙など、昔の新幹線の喫煙車両のような喫煙の痕跡があったため、まだご出発でなかったお客様に直接「当館は全館禁煙なのですが」と注意を伝えました。

 ところがお客様は「すみません」のひと言だけであっさり帰ってしまわれ、そのあまりに開き直った様子に強い悲しさと憤りを覚え、虚空に向かってでも訴えねばなるまいとツイートした次第です。

―― ツイートに「散々タバコを吸って」とありましたが、かなり強いにおいが残っていたのでしょうか? 吸い殻などは残っていましたか

西屋旅館 吸い殻はありませんでしたが、明らかに空気が喫煙室のそれでした。長年一緒に働いているほかのスタッフも「これはやばい」と顔をしかめるくらいでしたから、直前まで喫煙されていたとおよそ推測できました。

―― 客室での喫煙は年に数回あるとのことですが、過去にはどのようなケースがありましたか

西屋旅館 焦げた葉が落ちていたこともありますし、部屋に残された空き缶に吸い殻がねじ込まれていたこともあります。また最近は電子タバコを吸われるケースも散見されるようになってきました。独特のにおいが残るため当館は電子タバコも禁じていますが、こちらは気付くのがなかなか難しく、手をこまねいています。

―― 今後何か対策を取られる予定はありますか

西屋旅館 当館のサイトにはすでに大きく禁煙であることと、その理由を記載してありますが、Twitterで多くのかたがご指摘くださった「クリーニング代弁償」「損害賠償」について、一切の文言がありませんでした。ずっと我慢をしておりました。しかし今回を機に、「喫煙の痕跡を認めた場合は相応の追加料金をいただく」旨を、詳しいかたと相談しつつ新たに掲載するよう検討を始めております。

―― Twitterでの反響について、感じたことをお聞かせください

西屋旅館 「わびなされ!!」とツイートしたときは、ひどく気持ちも落ち込んで、その後の仕事が手につかなくなるほどガタガタでした。しかし思いがけず拡散されることとなり、見ず知らずの多くのかたから共感するお言葉や、こうしたほうがいいという力強いアドバイスをいただき、とても励まされました。

 また同業者のかたや、レンタカー業などに携わっていらっしゃるかたからも、同じ被害に遭って大変を思いをしたというエピソードをいただいて驚きました。それでも、こういう出来事が実は現場では日々起きている事実を、少しでも周知できて良かったと思います。

 同時に、マナーをきちんと守っている喫煙者の皆さんがいかに肩身の狭い思いをしているのかも知ることとなり、複雑な気持ちにもなりました。旅館業は基本的に宿泊予約が成立したお客様を拒むことはできません。館内での過ごし方はあくまでお客様の良心次第です。なぜうまくすみ分けができないのか、何か良い解決方法はないのかと思い悩んでもいます。

協力・画像提供:西屋旅館(@Nishiyaryokan

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