Webショート動画で進化する「細かすぎて伝わらない」の世界 知らないのに分かってしまう“男女のやりとり”を描く気鋭3組がすごかった(1/2 ページ)
クセになる世界観。
TikTokのユーザー数が10億人を突破し、2021年7月にはYouTubeが「YouTube Shorts」を導入するなど、Web動画の中でも一大ジャンルになりつつある「ショート動画」。今やその形式を生かし、自らのネタを発信するお笑い芸人も少なくありません。
そんなショート動画の世界で進化するネタの中でも特に輝きを放つ「細かすぎて伝わらないモノマネ」の世界を、ライターが紹介します。
Web動画で楽しめる「細かすぎて伝わらないモノマネ」
TikTokやYouTubeを眺めていると、こんな文章が目に入ることはありませんか? 「学年に1人いるセンスのいいショートカットのお母さん」「今日マッチングアプリで知り合った人たち」「バイトの子を狙っているイタリアン居酒屋の店長」……。「あ〜なんか想像つく」と感じて動画を開くと、そこには「細かすぎて伝わらないモノマネ」系の動画の数々が広がっています。
「細かすぎて伝わらないモノマネ」、通称「細かすぎて」は、文字通り細かすぎて伝わりにくい、それどころか該当する人物を見たことすらないけど「なんかわかる(知らんけど)」と思ってしまう、共感とシュールな笑いを呼び起こす短いモノマネジャンルです。
フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」内の人気コーナーに端を発し、いまやWeb動画の世界でも一大ジャンルになっているこの「細かすぎて」。本家同様、スナック感覚で見られる一方で、Web動画はシリーズ化していることも少なくなく、その解像度の高さと構成の細かさ、そして着眼点の面白さにハマり、気づいたら数時間が経過していた……なんてことも。
そんな細かすぎて伝わらないアレコレをWeb動画スタイルを最大限に生かして発信する、筆者おすすめのお笑い芸人3組をネタ動画と共に紹介します。
男女の生々しさに思わずヘドバンする「エレガント人生」
「エレガント人生」は中込悠さん、山井祥子さんの2人からなる吉本興業所属のコンビ。男女コンビという特性を生かして男女の生々しいアレコレを描いたコントを展開するだけでなく、「あ〜こんな人(知らんけど)百万回見たわ」と思わせてくれる人気キャラクターも多く生み出しています。さりげなくキャラクター同士の関係性を匂わせたシリーズもあり、視聴者間で考察が盛り上がるのも楽しいポイントです。
10分後に体の関係を持つ男女の会話
開始20秒で羞恥心でヘドバンしたくなるような生々しさを感じる「10分後に体の関係を持つ男女の会話」。お酒が入ったゆえの信じられないほどの眠気や、脳から繰り出される無意味な会話で間を持たせようするソワソワ感。これらと微妙に葛藤しながら繰り広げられる独特な雰囲気を画面越しに味わえば、思い出したくない記憶のドアが開き、「もうやだぁ……」と顔をおおってしまうこと間違いなしです。
そんな少し苦しさもあるやりとりですが、この絶妙な空気感が癖になってしまうのも事実。ぜひ己の記憶と羞恥心を噛み締めながら楽しむことをおすすめします。
麻布の一軒家で暮らすショートカットのおばあちゃん
エレガント人生が生み出した人気キャラクターの「ショートカットのおばあちゃん」と「アンナ」が登場する「麻布の一軒家で暮らすショートカットのおばあちゃん」。オシャレで品のよいお茶目なおばあちゃんと、英語発音を残した日本語で話す美少女アンナのやり取りがなんだかすてきで、そしてあまりにも「想像通り」すぎて笑ってしまいます。
実は、アンナやおばあちゃんが属する「とあるセンスのよい一家」は、さまざまな人物が登場する人気シリーズ。一家の相関図を考察しようと見ていくうちに「こういう人、近所にいたわ……!」「友達の家のお母さんだ」と片隅にあった幼いころの記憶が刺激され、激しいノスタルジーに身震いすることもあるのではないでしょうか。エレガント人生の細かすぎる着眼点と発想力の豊かさを十二分に味わえる動画です。
遠巻きに見ていたい人物の解像度の高さが異常「スクールゾーン」
「スクールゾーン」は、橋本稜さん、俵山峻さんの2人からなる男性コンビで、「エレガント人生」と同じく吉本興業に所属しています。
特筆すべきは、2人の演技力の高さ。「はたから見たら面白いけど、絶対に友達になりたくねえ……」と思わせてくれる人物を、雰囲気から巧みに作り上げます。あまりの演技力の高さにコントだということを忘れるほどに引き込まれ、視聴後にはまるで短編映画を見たような満足感と、「何を見せられていたのか」という心地よい疲労感が残ります。
韓国人店員と韓流好き女子シリーズ
スクールゾーンの中でも人気なのが、韓流好き女子の「とよこ」とイケメン韓国人店員「ドンジュ」の駆け引き(一方的)を描いたシリーズ。俵山さん演じるとよこの強烈すぎるキャラクターと、橋本さん演じるドンジュの絶妙なツンデレが織りなすドラマは、一度見たら忘れることができません。
最初はその強烈さゆえに「こんな人いる〜?」と突っ込みたくなりますが、細かいしぐさや計算されつくした雑な会話が妙にリアルで、段々と実在する2人の会話を覗き見をしているような気分になります。
とよこはサバサバしている性格だと自称する「ワタサバ系」。恋に狂ったとよこの暴走っぷりは、なんとなく見覚えがあるような感じがして羞恥心をえぐられます。筆者は、韓国人店員ドンジュが、突然大声で厨房にオーダーをするところが毎回ツボです。
虫を追いかけて庭先に迷い込んだ少年と話す文豪の愛人
文豪の愛人シリーズは本家「細かすぎて伝わらないモノマネ」でも披露されたことがあるため、見たことがある方もいるのではないでしょうか。もうタイトルからして色々なドラマが想像できてしまい、刺さる人には大いに刺さるでしょう。
文豪の愛人なんてドラマや映画の中でしか見たことないはずなのに、「わかる〜!」となるのが不思議なこのシリーズ。なんてことない会話を情緒たっぷりに話すその姿に、儚い色気とその先に待ち受ける未来を感じ、呼吸するのも忘れて見入ってしまいます。でも、何を見せられているんだろう……?
あるあるシチュから展開される「ねーよ!」が笑える「ニッキューナナ」
「ニッキューナナ」はマセキ芸能社所属の峯シンジさん、こっちゃん選手さんの2人からなる男女コンビ。
あらゆる部分から「絶対に地上波では見れないな」という雰囲気が漂いつつも、笑える下ネタコントを得意としています。タイトルを一見すると少しセクシーな雰囲気の「細かすぎて」系かと思いますが、進んでいくにつれて「あるあr……ねーよ!」とツッコミ必至の展開で、とにかく頭空っぽにして笑えます。
「もうめちゃくちゃにして」って言う上司
サムネイルとタイトルを見て「あ〜ハイハイエロ漫画とかでよくあるシチュだ」とにやりとしてしまう「もうめちゃくちゃしてって言う上司」。しかし、開始後すぐに別の意味で「おまっ……本当にもうめちゃくちゃにしてくれ!」と言いたくなる展開に笑ってしまいます。こっちゃん選手さんのあまりの「めちゃくちゃにして感」に別の意味で目を塞ぎたくなるこのネタ。胃がキリキリする展開ですが最後は色んな意味でスッキリするので、安心して、そして決してネタバレを踏むことなく、今すぐ見てください。
時を止める能力を自力で解除してきた女
もうタイトルの時点で優勝している「時を止める能力を自力で解除してきた女」。AVでは定番の「時間停止モノ」から着想を得たコントですが、残念ながら何一つそういった展開はありません。こっちゃん選手さんが時間停止される度に本気で解除してくる様子はまさに「発想の勝利」。峯さんの反応も含めて笑えます。予測可能かつ回避不可能なオチを、ぜひ最後まで堪能してください。
すきま時間にハマれる「小さくて深い沼」
TikTokをはじめ、YouTubeショートやInstagramのリールなど、ショート動画と相性がいい「細かすぎて」。さまざまな媒体で見ることができるため、ちょっとしたすきま時間にサクッと視聴するのにぴったりです。
今回紹介した他にもクオリティの高いモノマネが数多く投稿されているので、気になった方はぜひ、ドラマや映画では見ることのできない、リアルを超えたリアルなやりとりの「沼」に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
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