映画「シン・仮面ライダー」レビュー ライダーに変身したくない本郷猛と、エヴァに乗りたくない碇シンジ
3年連続で庵野作品を見られる幸せをかみ締める。【ネタバレ注意】
3月17日、庵野秀明監督最新作「シン・仮面ライダー」の劇場公開がはじまった。特撮の名作をリブートする「シン」シリーズ第3弾となるが、「シン・ゴジラ」(2016年)や「シン・ウルトラマン」(2022年)とは全く違う作風となっている。今作は登場人物たちの内面に徹底してフォーカスした物語なので、同監督のアニメ『エヴァンゲリオン』シリーズに近いのではないか……? そんな視点で「シン・仮面ライダー」をレビューする。
※この記事では映画「シン・仮面ライダー」のネタバレが含まれますので、ご注意ください。
庵野版・仮面ライダーはよく悩み、よく泣く
池松壮亮演じる仮面ライダーこと本郷猛は、強くて臆病なヒーローだ。彼は、敵であるSHOCKERのメンバーが「人間」だからこそクヨクヨ悩む。SHOCKERたちの息の根を止めることは、突き詰めれば殺人に他ならない。それを平気でやってしまう自分が怖い。彼は、敵が怖いなんてことは一切言わない。人間離れした力を持つ自分自身を一番恐れているのだ。
庵野監督の「シン・仮面ライダー」は、1971年テレビ放送の「仮面ライダー」と石ノ森章太郎の同名漫画のリブート作品。今作に登場する秘密結社・SHOCKERは、「人類の持続可能な幸福」の実現をうたい、一般市民を洗脳して隷属させるなどの非合法的手段を用いる集団だ。SHOCKERに捕らえられた青年・本郷猛は、近未来のバイオテクノロジーでバッタの能力を身体に埋め込まれた生物兵器となる。彼も洗脳されてSHOCKERのメンバーとなるはずだったが、その寸前、メンバーの一人である緑川ルリ子(浜辺美波)の手引きでアジトから脱出する。
石ノ森漫画版でも本郷は殺人を犯す罪悪感に苛まれるが、「シン・仮面ライダー」ではそれがより深刻に描かれる。予告編通り、人間離れしたミュータント的な顔つきのSHOCKERメンバーは少ない。たいていは仮面を付けていて、仮面を外せば人間の顔のまま。それに、ぶん殴られれば普通の人間と同じように赤い血が噴き出す。本郷は戦闘が終わってわれにかえると、手にべっとりついた血と、仮面の力によって増幅した自らの闘争本能にぼうぜんとする。
印象的なのは、本郷が鏡の前で自分の変わり果てた姿におびえるシーンだ。石ノ森漫画版では「おれは戦わねばならない! 戦い続けなければいけない!」と自分を鼓舞するが、「シン・仮面ライダー」では違う。本郷の脳裏に、かつて目の前で父を殺された耐え難い暴力の記憶がよみがえる。そして、自らも殺人を犯してしまう状況について「思ったよりもつらい」と正直に話し、再びライダーに変身することをためらう。
それに、今作の本郷はよく泣く。仮面をつけたままなので表情は見えない。だけど震える肩や荒い息遣いから、深い悲しみがズシンと伝わってくる。
「シン・仮面ライダー」はエヴァ要素「全部乗せ」な作品
そんな本郷にとって救いになるのが、一緒に戦う仲間の存在だ。本郷とともにSHOCKERを抜けた緑川ルリ子は、庵野監督の「エヴァンゲリオン」シリーズをほうふつとさせる「戦うヒロイン」として活躍する。例えるなら、エヴァに乗りたがらない碇シンジを奮起させる綾波レイのよう。
ルリ子もレイも、他人を優しく励ますような性格ではない。自らの目的のために合理的に行動し、必要とあらば一人でさっさと戦場に行く。どちらかというと言葉ではなく、背中で語るタイプだ。繊細な本郷やシンジはそんな仲間のあとを追って行動し、過去に経験した絶望と、厳しい戦いを強いられる運命を乗り越えていく。
この点、「シン・仮面ライダー」は「エヴァ」に近い作風になっている。「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」は、心情を描く回想シーンを一切出さず、日本に襲来した怪獣への対処を客観的に描写していた。一方「シン・仮面ライダー」は、「エヴァ」と同じく各キャラクターが抱える闇を少しずつ明らかにするストーリーだ。
さらには「人類補完計画」のような試みを進めるキャラクターまで登場する。ルリ子の兄でSHOCKER幹部の緑川イチロー(森山未來)は、全人類の魂を強制的に抜き、バラバラだった人間の心を一つにして孤独を埋めあおうと考える。イチローもまた、大切な人を失って心を病んでいた。本郷に限らず誰しもが救われたいと願っている。
人間はどうすれば暗い過去と決別して、前を向いて進めるようになるのか? この問いについて庵野監督は何度も何度も映画で描こうとする。彼にとって永遠の課題なのだろう。現時点での庵野監督の答えを、ぜひ劇場で見て確かめてほしい。
振り返れば、2021年の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」公開以降は、庵野作品が毎年見られる夢のような3年間だった。その締めくくりとなるのが「シン・仮面ライダー」。堂々たる出来栄えに、圧倒されること間違いなしだ。なお、今回も庵野作品らしく最初から最後まで情報の洪水なので、2度も3度も見に行くことをお勧めする。
(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
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よさそうだ。
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